島の時間を区切る船

今日は日曜日ということもあり、そらあみづくり体験講座への参加者が多い1日だった。午前中は島外からきた観光客、午後は島内に住む住民といった参加者の顔ぶれだった。午前と午後、なぜこのような人の流れになったのかと考える。

 

島の時間軸を区切る存在は船(定期便)である。船は基本的に毎日同じ時間に三宅島にやってくる。朝の5時と昼の2時。人はもちろん、郵便物や、食べ物など、この時間に船から島へ到着する。また、逆に島から船に乗り、海のむこうへ旅立っていく。島にやってくる人は、朝の5時に島に到着する人がほとんどで、日帰りもしくは数日過ごし、昼の2時の船で島を出る。

 

なので、今日の参加者は、午前中は観光客、午後は島民という人の流れになったのだ。特に帰りの観光客の多い日曜日の昼2時の便が出ると、島はすっかり静かになる印象だ。なんとなくだが、外向きの顔をした三宅島から、普段の三宅島の顔に戻る瞬間のようでもある。

 

海のむこうからやってくるものと海のむこうへ旅立つもの、人とものが島を出入りする時間が決まっているため、日々、桟橋は出会いと別れの舞台となる。島に暮らす人も、島に来る人も皆この時間を意識して島で過ごしている。

 

しかし、しばしば、その時間と場所の変更がある。それが面白い。海という人にはコントロールできないものに囲まれた島であり、そこを行き交う船だからこその出来事である。

 

太平洋に浮かぶ三宅島は外洋のうねりの影響を強く受けるため、船が到着する港がよく変更される。波や風の向きによって、島の南西に位置する錆が浜港、島の北西に位置する伊ヶ谷港、島の東に位置する三池港、この3つの港のどれかになる。基本は錆が浜港になるが、そうでない場合は島内放送が入る。「キーン♪コーン♪カーン♪コーン♪」「こちらは三宅村役場です。東海汽船からのお知らせです。本日の東京行きの定期便は海上不良のため◯◯港に条件付きで着岸します。乗船予定の方は◯◯時までに乗船手続きをお済ませください」といった感じだ。

 

漁師さんはもちろん、島のパン屋さんまで天気図などから、天気を読み、「明日はサビ(錆が浜)だな」とか「台風のうねりが沖縄の方から来てるし、伊ヶ谷じゃないかな」といった予想を立てている。天気予報士がたくさんいるのだ。これもまた島の文化である。

 

自分が育った、人工物に囲まれ自然から切り離された千葉の埋め立て地では、そんな人達に出会うことはなかった。海の波にせよ、風にせよ、火山の噴火にせよ、自然という人にはコントロールすることのできないものに、日々、目を向けて、経験と情報と知識と身体感覚とを駆使して、自ら未来の状況を予想し行動する。自分には島の人達がたくましく見える。これから起きる地球の出来事を読み取ることができるからだ。

 

それは、文字を理解していないと本が読めないのと同じようなものだ。この星に生きるなら、この星を読めるようにならないと、その変化や予兆に気がつくことはできない。都市生活というものはそれに逆行しているように思える。自分も含め、生物としての軟弱さに驚く。そういった意味で、三宅島の人にとっては当たり前のことだが、感度の鈍った都市生活者にとっては、三宅島滞在は生物としての感性を磨く良いトレーニングの場とも思える。

 

三宅島に着いてから思考と身体感覚のバランスの大切さを再認識している。

 

まだずいぶん遠くだが、台風が近づいてきている。さてさて、数日先の着岸は、どこの港になるかな。南西からのうねりが強くなるはず。そう考えると伊ヶ谷港になるかな。

最近、島の漁師に間違われるようになりました。笑。

観光客のみなさんが編みます。もちろん網を編むのは初体験

地元ベテラン網漁師のクニさんは絶大な人気があります

三宅島大学マネージャーの猪股さんも教えてあげてます

覚えた人からまだの人へ、自然と技術は伝わっていきます。

出港時間が近づいてきました。クニさんに別れの挨拶。お礼の気持ちを伝える大阪からの観光客2人

観光客の皆さんは船へ。普段の島にもどる時間。我々はひきつづき編みます

お昼休憩。少し網を上げてみました。

午後は島の皆さんと編みました

島に住んでいても、もちろんはじめて編む人がほとんどです。

北東から急に冷たい風が吹きはじめました。暗雲が近づいてきたので少し早く切り上げました。お昼の青空バックと、夕方の暗雲バックと、網の見え方がずいぶん違います。