網で落葉を穫る?

10時にワークショップ開始。今日は土曜日ということもあり、浅草を訪れる人の流れは、日が暮れるまで途絶えることはなかった。浅草寺のすぐ横にある浅草神社は一般参加者のドロップインとアウトを繰り返す“そらあみ”のようなワークショップには適した環境にある。境内で網を編んでいると、お宮を囲う木々の間から仲見世通りの正面にある浅草寺にタッチ&ゴーするように、大量の観光客が途切れることなく移動し続けているのが見える。その横にある、ここ浅草神社は絶えずパラパラと人がやってくる。不思議そうに眺めて通り過ぎて行く人。「これは何ですか?」と質問する人。「私も編んで良いですか?」という人。そんな人がちょうど良いバランスで訪れる。この場所にして正解である。

 

観光名所である浅草という土地柄なのか、外国人の方も多い。今日は日本人の他に、ドバイ人とインド人が参加してくれた。インド人の方の話が面白かった。まず最初に「これはいくらだ?」と早口言葉のような独特の英語で値段を聞かれた。売るつもりなどまったくない自分としては、最初は質問の意味が分からず動揺したが、どうやら、丸くまとめた編み紐を売るための実演販売だと思われたらしい。「違う違う」と言って、カタコトの英語で浅草の歴史の説明をした。それでも話は伝わっていなかったらしく、「魚を穫るのか?」と聞かれ、本殿に掛けてある布に大きく描かれた三編み紋を指差し、「あれが!これ!」とジェスチャーすると、不納得そうだったが一応理解してもらえたようであった。

 

そして更に話は盛り上がり、インドの網の話になった。そのインド人の村でも網を使っているという。ところが、その村には海はなく、魚は獲っていない。そのかわりに落葉を穫っているという。網で落葉を穫る?そんな話聞いたことがない。インド人曰く、木の下に網を張り落葉を回収し、それを畑に蒔くという。こやしにするのだろう。魚を獲らないで落葉を穫る網がインドにはあるらしい。ちなみにこの“そらあみ”の網は魚も落葉もとらない。インド人にはどのように見えたのだろう。とはいえ、インドにも間違いなく網があることが分かった。

 

その後も、流石は天気の良い休日、横浜など過去にプロジェクトを行った時に参加してくれ、その時、知り合った方がたくさん来てくれ、久々の再会をしつつ皆で網を編み、それぞれを近況報告。何に一番驚くって、子供達の成長である。身長はもちろん、皆立派に育っており、当時内気だった性格すら当人は忘れているかのような成長ぶりである。プロジェクトを介して出会った人との再会はこういった良さがある。子供の成長や変化を時折確認できるのだ。お盆や正月にだけ会う、親戚のおじさんになった気分になる。そう考えると、自分はどこの現場でも家族のような場づくりをしてきたように思う。というか、なぜかそうなってしまうのだ。おそらくそれは自分の習性だろう。浅草でも良い家庭を築きたいものである。国際的な家族構成になったりして、、、。

 

しかしながら、これだけ参加者が多いのは、舞鶴、釜石、三宅島と過去3回“そらあみ”をワークショップ形式で行ったがはじめての経験である。説明をしても、すぐに離れてしまうと正直がっかりする。拘束する権利もないし、仕方のないことなのだが、懸命に説明する分、それなりにすり減る。そして、説明している間は網を編む作業は自ずとストップする。そうは言っても、参加はしてもらいたいし、一緒に編む仲間も必要である。たまたま出会ったその人が、その仲間になるかもしれない。この先、編む説明と編み進めることとのバランスをどうとるかが、この現場でのポイントとなるであろう。

横浜から2人と金沢から1人

地元浅草小学校4年2組のひかるくんに編み方を伝えています。こんどは友達と来ると言ってくれました!

たまたま浅草観光に来ていた2人組。かなり長い時間一緒に編んでくれました

編む人。説明する人。眺める人。

それぞれに協力して編んでいます

ドバイの方と横浜の方。覚えた人が自然と編み方を伝えます