煙突の煙りの向き

沙弥島滞在33日目。今日は1日、レジデンスである沙弥島の海の家にて事務作業を行った。

 

最近、煙突の煙りの向きが気になる。なので煙突の煙りばかりを見ている。滞在先である、ここ沙弥島のすぐ横には番の州工業地帯という巨大な工業地帯がある。1978年、今から35年ほど前に沙弥島と瀬居島をつないでいた州を埋め立てて、そこに番の州工業地帯ができた。そこから天を突き刺すように、赤と白の縞模様をした煙突が立っている。その煙突は、自分が見ている限り、ほぼ24時間フル稼動で煙りを吐き続けている。

 

煙突の煙りの向きが見たい理由は、風の向きと強さを見たいからである。風が強いと煙りは真横に延びる。風がないと煙りは真っすぐ上に延びる。そして風向きによって、煙りの向きが変わる。このことは船舶免許を取る時にも教官からの話で聞いたことがあった。とはいえ、これまで船を操縦していて、煙突の煙りに遭遇する機会などほとんどなかった。そんなにこっちの都合の良いように煙突は煙りを吐いてくれない。

 

ところが、番の州工業地帯の煙突は、毎日見ていて飽きることはない。目に見えない“風”の存在を可視化し続けているからである。

 

では、なぜ風が気になるかというと、“そらあみ”を展示する場所は、沙弥島の西の浜と呼ばれる海水浴場であり、そこは西風を強く受ける場所である。そして、この春の時期は風が強い。風を通す網とはいえ、高さ5m×横幅60mとなると、風を受けた場合、大変な力がかかることとなる。

 

もちろん建築家の方が強度計算などをしてくださっているのだが、心配の種が尽きることはない。

 

網づくりは、今週末の櫃石島で全ての網が完成する予定である。そしてこれからは作品の設置の段階に入る。気持よく見せたいと思うが、安全がまずは第一である。突風が吹いて倒れたとか、怪我人が出たとかとなったら、洒落にならない。でも、相手は風という自然そのものである。これからの自分には、風を見る力であり、風を読む力が必要である。