0から1が立ち上がる時

沙弥島滞在11日目。今日は作品設置場所となる沙弥島海水浴場で、漁網をつり上げるための支柱工事に関する関係者打合せと、今日までに編まれた漁網の分量と編んだ人の名前のリストアップを行った。

 

リストアップして分かったことは、今日までにそらあみワークショップに参加した人は約80人。その内約60人が漁師さんである。予定している漁網の全体サイズは高さ5m、幅60m。基本的に1人が幅60㎝×長さ5mの反物で編んでいるので、まだ5mまで編み上がっていないものもたくさんある。それらを加味して、目分量でざっくり計算すると、全体の約半分くらいの面積が編みあがったことになる。

 

ん?全体の半分?

 

ふと、こっちに来てから制作した“そらあみ制作カレンダー”に目をやる。

 

えーっと、1月27日に現地入りして、各島々の自治会長さんや漁協の組合長さんにご挨拶とスケジュール調整を4〜5日行い、ワークショップを開始したのは2月2日で、今日は2月6日。

 

なんとまだ4日しかワークショップを行っていないのに、5m×30mくらいは編み上がったということ?たった4日で?信じられん。そしてたった4日で80人の人と出会い、漁網を編んできたのか。1日の出来事密度が高すぎる。

 

しかし冷静に振り返ると、この4日間は確かに怒濤の日々であった。とはいえ、ありがたいことに、編み進み具合でいうと順調すぎて怖いくらいである。

 

これはたくさんの方の協力があってからこそできることである。芸術祭実行委員、事務局、アートフロントギャラリー、坂出市役所、地元自治会、地元漁協、みなさんが全面的に協力してくださっているからこんなにすごいことになっているのである。各地で単身プロジェクトを行ってきた経験のある自分にはよく分かる。これだけの人を集め動かすのは用意ではない。

 

では、こんな流れができた最も大きな要因はなんだろうか?

 

それは坂出市にとって、この地域の人にとって、初めての芸術祭だからなのだろう。市役所の人も初めてだし、受け入れる地域の人にとっても初めて、なので、作家が滞在して制作することも、一緒に参加して1つのモノをつくることも、全てが新鮮なのである。

 

何かがはじまる時の、どこかに向かおうとする時の、新鮮な気持ほどエネルギーをもったものはない。今、坂出市にはそのエネルギーがアートをきっかけにして起こりはじめている。そのエネルギーに惹かれて、たくさんの方が芸術祭を見にやってくるのだろう。

 

まず一番に自分たちで楽しみ、盛り上がることが大切である。それを見に、そのエネルギーに触れに、たくさんの人がやってくるのである。

 

今、坂出市で、芸術祭初年度の新鮮な盛り上がりを肌で感じている。

 

どう考えても全てがファーストコンタクトで、0から1が立ち上がる初年度が一番面白いのである。そこにはもちろん緊張感もある。だからこそ土地と人への入り方が大切で、それが次回であり、未来につながっていくのである。自分は今まさに面白い現場にいる。

そらあみ設置場所である沙弥島海水浴場から見える夕日

まだこっちに来てから11日。編みはじめてから4日目。