朝5時すぎの島の日常

沙弥島滞在50日目。朝5時、風の音が気になって目が覚め、網が風を受けて壊れたりしていないか心配になり、作品が設置してある浜へと急いで向かった。風を受けてめいっぱい張った状態ではあったが、作品は無事だった。これから約一ヶ月間、この「そらあみ」という作品は風と向き合うこととなる。強風時は下ろさなければならない。毎日、風を気にする一ヶ月間が始まったとも言える。

 

ここ沙弥島の漁師さん達が、「うちらが一番、風と、そらあみに近いから、ちゃんと見といてやる。吹くときは下ろしてやるからな」と、その一番大変な仕事を引き受けてくれた。本当にありがたいことである。そらあみを自分のものとして大事に感じてくれているのが分かる。良い関係を築くことができて本当によかった。でないと、今回のそらあみの一ヶ月間の展示は成立しなかっただろう。

 

そのあとも少しの時間、風を受けてヨットの帆のように膨れ上がった「そらあみ」を眺めていた。すると、網の前を、強風の中、前傾姿勢で花束を抱えて通り過ぎていく人がいた。よく見ると、それは一緒に網を編んで、最後の設営まで付き合ってくれた沙弥島の溝渕さんだった。行き先は同じ西の浜の端にあるお墓である。きっと毎朝、こうして、お墓参りをされているのだろう。五色の網の色の前を、白、紫、黄色の菊の花を持った溝渕さんが歩く姿が強く印象に残った。

 

この日常の中に、そらあみはこれから約一ヶ月存在することになるのだ。土地の風景として立ち上がるということは、この島の日常に支えられているということを忘れてはならない。そのことを象徴するような朝5時すぎの出来事であった。