多度津の金子商店

沙弥島滞在40日目。今日は、そらあみの作品設置をする時に必要となる11個の滑車と230mのロープを買いに多度津の金子商店へ行ってきた。

 

多度津は坂出市から西へ、車で30分ほど行った所にある。地名で言うと東から西へ、坂出→宇多津→丸亀→多度津といった順である。なぜそんな離れた場所にある金子商店まで買い出しに行くかというと、網づくりに参加してくれた5つの島の漁師さん達に、良い船具屋、もしくは漁業資材屋がないかと相談すると、皆「多度津の金子商店」と言うからであった。

 

どうやら、塩飽諸島の漁師さん達の多くは「多度津の金子商店」を昔から使っているらしい。これは行ってみるしかない。といった具合である。

 

店舗は海沿いに走る国道沿いにあるのだが、目的を持って来なければ決して入ることはないであろう目立たない外観をしている。いわゆるプロが使う店である。サンプルの滑車を手に持って少し緊張しながら、扉を開けると、大量の漁業資材が置かれた空間にいたのは、以外にも3人のかわいらしい女性だった。

 

滑車やロープの話をすると、テキパキと対応してくださり、その立ち振る舞いから、仕事がよくできるというのが伝わってきた。時折、電話が鳴る。おそらく相手は漁師さんだろう。女性の方は「はい。◯◯さんの三反、ちゃんとできてますよ」と、わがままな子供を少しなだめるかのように、やさしく丁寧に対応していた。これは漁師さん達に信頼されているな。きっと、塩飽諸島の漁師さん達を上手いこと転がしているんだろうな。などと妄想した。自分もこの海で漁師をしていたら、ここ金子商店を使うに違いない。

 

女性の方「それで、何に使うんですか?」

五十嵐「瀬戸内芸術祭の作品で網を編んでいて、、、。」と説明。

女性の方「ああ!瀬戸内芸術祭ね。知ってる。すごいのよね。それで網なの?」

五十嵐「はい。島の漁師さん達と網を編んで、こんな感じで展示するんですけど(イメージ図を見せる)、その時、滑車が必要で」といって、以前にホームセンターで買ったサンプルを見せた。

女性の方「首が回るやつがいいのね?じゃあこれかな」

 

と、大量の種類の金具の中から1つ取って見せてくれた。

 

五十嵐「はい。これで大丈夫です。ちなみに、これってどれくらいの荷重に耐えられますか?」

女性の方「(資料を広げ)ええと、170㎏ね」

五十嵐「え?!そんなにいけちゃうんですか?この自分の持ってきたサンプルは75㎏なんですけど」

女性の方「プロの漁師さんが使うやつだからね」

 

さすがプロの使う店である。これで滑車は問題ない。

 

あとはロープ。60mの網の裾を通すので、まずは60mが必要で、あとは網を上げ下げするのに、5mの支柱の先の滑車を通し輪っかにするので、行って来いで結ぶ長さも考えると、1本の支柱に15mが必要。それが11本あるから、合計で165m。それらを全部足すと、約230mが必要となる。ロープはたいてい200m巻で売っているので、それを1つと、30mのものを切り売りしてもらった。

 

五十嵐「このロープ、沙弥島の人につないでもらおうと思っていて」

女性の方「ああ。高尾さん達ね。あの人達ならすぐにやってくれるわよ」

五十嵐「え!やっぱり知ってるんですね」

女性の方「昔からのお得意さんよ。笑」

 

すごいネットワークである。きっとこの辺りの島、全ての漁師さんを把握しているに違いない。

 

五十嵐「あ!そう言えば、いろんな島の漁師さんが、“金子のおっさん”によろしくな!と言ってました。でも、今日は女性3人でビックリしました」

女性の方「ああ、その“金子のおっさん”今日はいないの。笑」

 

あの言い回しからすると、おそらく、旦那さんか、お父さんになるのだろう。

 

プロの漁師が使う店は、仕事が早く、置いてある資材も、そこにいる人も魅力的であった。漁師の心をつかむ人と物がある店。それが多度津の金子商店であった。

プロの漁師が愛用する店の看板

資材倉庫の中で30mを計測中

大量の金具。全部種類が違います。