受け継がれる背中

くすかき8日目。今日は、朝と夕方に“日々のくすかき”、日中は“くすのこうたき”、こうたきと夕方のくすかきの間に“くすかき定例会”と、くすかきフルコースの一日だった。朝のくすかきには8人、くすのこうたきには13人、夕方のくすかきには18人と多くの方が参加してくれた。週末しか参加できない方も多いので、今日もまた、たくさんの方と一年ぶりの再会をすることになった。人に会うと力が湧いてくる。そう実感した。

 

今日、朝から一日参加してくださったのが宮原さん一家。宮原さん一家と言えば薪割りである。去年2012年のくすかき日記「親父の背中」にも書いたが、今年も“くすのこうたき(水蒸気蒸留)”で使用する薪の薪割りを楽しみにしてくれていた。

 

息子の遼介くんは、今年こそ上手に薪割りをして、毎年見事に薪割りするお父さんの背中、親父の背中に近づこうと、この日を待ちわびてくれていた。だがなんと、直前に体育の授業のバスケットボールで小指を骨折してしまったとのこと。本人は、小指を使わなくても大丈夫だと言っていたが、やはり小指なしで斧を握っても、なかなか力を入れるのは難しい。

 

結果、去年に引き続き見事に薪を割る“親父の背中”との距離を縮めることは叶わなかった。目の前で気持良く薪を割る父の背中を眺める時間は、きっと残念だったに違いない。来年また挑戦あるのみである。彼が心身共に成長し、お父さんのように薪を割る頼もしい姿を見るのが自分の楽しみでもある。また来年の楽しみが1つ増えた。

 

妹の“ひなちゃん”は来年から小学生。まだ小さいが、最近友人達の間であやとりが流行っているらしく、間をみつけては、いろいろなあやとり技を見せてくれる。感動したのが、あやとりでつくった“ほうき”である。あやとりでほうきがつくれるとは!そして、くすかきの現場でつくると、それは松葉ほうきとなる。あやとりでつくった松葉ほうきで、すこしだけ“くすかき”してみたりする。小さな手の中で、1本の糸からつくり出される松葉ほうきは可愛らしく、五十嵐に見せにきてくれるその気持が、なんともうれしい。

 

そして今日は、くすのこうたきと夕方のくすかきの間に、第1回くすかき定例会を行った。目的は、対話を通して、くすかきを参加者と共有していくためである。今回の内容は「くすかきがはじまったきっかけ」と「今後どのようにくすかきを続けていくか」といったものであった。初めての試みであったが、まずゆっくりみんなと話をする時間がつくれたということが良かった。

 

自分が考えていることと、関わっている人たちの想いというものの共有ができるからだ。くすかきを続けるにあたって、いろいろな意見が出たが、まとめると、①連絡手段の確保と情報共有②掻き手としての募集と登録③年間に何度か顔を会わせて定例会を行う。といったものであった。あと、今のように、ふらっと来て参加して好きな時間に帰れる、今のこの雰囲気も大事にしてほしいという意見もあった。

 

樟の落葉を通して季節の移り変わりを感じ、再会を通して子供達の成長に立ち会い、千年後の未来へ“目には見えないけれど大切なもの”をつなげていく。そのための対話が“くすかき定例会”をという場からはじまった。季節の風物詩からいずれ季節の祭へ、くすかきの物語は4年目にしてまだはじまったばかりである。新芽に押されて樟の葉が入れ代わるように、薪を割る人の背中も代わっていく。千年という時間も一年一年の積み重ねなのである。

 

そういえば、樟の葉も落葉して地面に落ちると、その9割は背中を見せている。受け継がれる背中は樟の葉も人も良く似ている。

 

ちなみに、毎年心配している樟脳の初物はちゃんと採れました!全国の“くすかき奉加帳”参加者のみなさま、今年も樟の香り届けられそうです。お楽しみに!もちろん随時くすかき奉加帳参加者は、くすかきホームページで募集しております!よろしくお願いします!

遼介くんと一年ぶりの再会。ほうきは持てるが、骨折した指では斧を振るのは難しい。

今年の初物の樟脳です!

薪割りや水蒸気蒸留の横では、芳樟づくりが行われています。

親父の背中2013

夕方のくすかきの風景

小さな手の中で松葉ほうきができました。