くすかき筋の目覚め

太宰府滞在10日目。くすかき5日前。今日は3月最終日。一昨日に会期中に葉っぱを溜めていく柵を設置した。柵を設置するということは、境内に「くすかき」の場を広げるということである。言わば、店構えをしたようなものである。ということはお宮に向けて「今日から樟の葉を掻きます」と宣言したようなものである。故に事実上、柵設置は掻きはじめを意味する。会期のスタートまであと5日あるが、葉っぱはどんどん落ちて来ている。ほったらかしになどできる訳がない。

 

朝8時半、朝拝に出席しそのまま、樟の葉を掻きはじめた。1年ぶりの身体感覚を確認。松葉ほうきを持って落ち葉を掻くのは、自分にとって1年のこの季節だけの行いである。なので、久々の動きに身体はまだ追いついていない。最初は何故か少し緊張した。

 

葉っぱを掻く音。手に伝わる振動。そうそうこの感じである。しばらくすると、徐々に身体に眠る1年ぶりの記憶が目覚めはじめた。身体の動きを確かめながらしばらく樟の葉を掻いていた。1年ぶりで身体が鈍っているということもあり、夢中になって掻くと実はけっこうな運動になり疲労感が溜まる。しかも、葉を集めた後、篩(ふるい)にかけて、枝などと葉を分別し集積させていくため、この篩の運動がまた身体にこたえる。葉っぱの量が少なければ、なんてことはないのだが、この3日ほどで太宰府中の桜が満開になった気温の変化は、樟の芽吹きも活性化させ、しかも昨日一昨日の雨の影響もあり、かなりの量の葉が落ちていた。

 

何が辛いって、何度も篩にかけても永遠と終わりが見えて来ない葉っぱの量と向き合いながら身体が疲弊していくところである。結局、9時前にやりはじめて、一度休憩を挟んで、終わったのが12時過ぎ、なんど3時間弱もかかったのである。午前中いっぱいかかったことになる。さすがに疲れた。

 

そして午後は、鬼すべ堂に上がって、昨日の夕方に運んだ水蒸気蒸留装置を仮組みし、窯を作って火入れをした。これもまた重労働なのであった。

 

くすかきは基本的に晴耕雨読。晴れた日は身体を使う。明日は筋肉痛間違いなし。だが毎年辛いのは1番最初で、この時期を過ぎると身体は慣れる。そしてくすかきを終える頃には、腕や肩や腰やふくらはぎに若干の筋肉が付く。自分らはそれを「くすかき筋」と呼んでいる。

 

本日、くすかき筋が目覚めました。

朝拝に流れる朝の凛とした空気

 

8時半にも関わらず一般の参列者の方もこんなに来られていました

 

3日分。1日の落ちる量が決まっているわけではない。急に温かくなって雨が降ったからである

 

掻きはじめにして、こんなに!今日、葉を掻くインフォメーションはしてなかったにも関わらず、偶然にも今年で3年目の参加になる春から小学一年生の幹太くんが、お母さんと弟と登場してびっくり!たまたま別の用事でお宮に来ていたらしい。しかし、くすかきに対して、なんて引きの強い方々なのだろうか!

 

水蒸気蒸留装置を仮組み。本日は窯を制作し、火入れまで

 

この装置で樟の葉から樟脳を抽出します。