自力と地力

太宰府滞在8日目。くすかき7日前。朝からまるまる1日雨。今日の予定は、土曜日なのでくすかきの仲間が集い、葉っぱを入れる網袋をつくり、男手が揃ったら、これから約1ヶ月間葉っぱを溜める柵の設置をし、夜はちょうどくすかき開始一週間前ということと滞在先レジデンスである山かげ亭の桜が満開というタイミングが重なったのでお花見決起会を行うことにしていたのだが、この雨では柵設置と外でのお花見は難しそうだな、、、と朝の時点で半ば諦めていた。

 

しかし、なんと心強い男達だろうか!

 

五十嵐「柵設置、、、今日は難しそうですね」

市郎さん「自分は行けますよ」

井原さん「合羽持って来たから全然大丈夫ですよ」

宮原さん「自分はそのつもりで来たんで」

 

雨に尻込みしていたのはむしろ自分の方であった。本当に良い人との出会いに自分は恵まれているのだなと改めて感謝した。実作業としては少し離れた柵の保管場所からリアカーに積んで運び、境内でに設置するといったものだが、柵1つが高さ約1m×幅約4mもあり、それを8個使用するのでけっこうな作業量である。リアカーとはいえ一度で全部は運べないので、柵を4つずつ積んで2往復した。

 

でも、ありがたいことに4人で作業ができたおかげで1時間半程度で設置を終えることができた。最悪、天気の良い日に自分でやるつもりだったのだが、実際やってみると最低3人〜4人は人手を必要とすることを実感。去年は市郎さんと2人で運んだ。今年は井原さんと宮原さんも加わって4人。去年の倍だ。では来年は8人を目指したい。そうしたらリアカーを2台借りて、一度で8個運べる。そんな未来を夢見た。

 

夕方にかけて続々と人がやってきてくれ、お花見決起会には大人子どもを含め30人ほどの人が集い。本当に楽しい夜になった。家族参加が多いので、美味しい食事は奥様方が中心となって作ってくださった。旦那さんを中心とする男性陣が外で肉体作業をし、奥さんを中心とする女性陣が家でご飯を作ってくれ、子供達は自分たちで楽しそうに遊んでいる。良い雰囲気だ。博多で772年続くお祭りである博多祇園山笠の詰め所の雰囲気と重なって見えた。山笠に比べたら、くすかきには約束事などほとんどないが、集まっている人のバランスに共通点を感じた。

 

「いよいよ“くすかき”開始まであと一週間!今年も良いくすかきにしましょう!かんぱーい!」

 

さらには、今年1月7日に参加した太宰府天満宮のお祭り「鬼すべ神事」で出会った、本当に太宰府の地元で育った友人2人も駆けつけて来てくれ、嬉しい再会。そして、みんなに紹介。お父さん方を中心とした男衆とすぐに意気投合し、みなさん来年の鬼すべ神事に参加する約束を交わしていた(笑)

 

1人のお父さん「鬼すべの挨拶の時、いがちゃんの紹介で参加させてもらっていますって、ちゃんと言うからさ(笑)」

 

別のお父さん「くすかきをきっかけに、それまで観光地として通り過ぎていた太宰府にぐっと入れて、太宰府が好きになったよ」

 

また別のお父さん「やっぱくすかきは、仕事や普段の喧噪から離れて、ゆっくりとした時間に触れられるのがいい。毎年ほうきでああして落ち葉を掻いていると、本当の時間ってこっちなんだよな。千年とか長い時間の中に自分はちゃんと生きているんだなって思えるんだよね。仕事とか社会で流れている時間ってやっぱおかしいよ」

 

地元太宰府の友人「やっぱ、はじまる前にこういうのできるの良いよね。来て良かったわー」

 

夜な夜な話は盛り上がるのであった。他にも良い話をたくさん交わすことができた。

 

これまでのくすかきの仲間に今年は新たに、本当に太宰府を地元とする仲間が加わり、くすかききっかけで出会った人が新たなつながりとなって発展していっている。くすかきという「場」が太宰府の人と外からやってくる人が出会い、互いを知る交流の舞台として機能している。

 

こういった時に、地道に5年続けてきてプロジェクトに自力と地力がついてきたと実感するのであった。目指す未来はもっと先にあるが、一歩ずつ確実にみんなと共に歩んでいきたい。

 

お仕事を終えた地元のお寿司屋さんの大将が日本酒一升瓶を差し入れに持ってきてくれた。「いがちゃん!おかえりー!うまい酒持ってきたけん。飲もうや!」一緒に飲み切ったので、もう一本持ってきてくれた。たいがい楽しかったのだろう。本当に楽しい時間は覚えていないものである(笑)

網袋を編む

 

雨の中、柵設置を終えた男衆と桜

 

網袋も伸びて、人も増えて