落ち葉はあくまで落ち葉である

太宰府滞在13日目。くすかき2日前。昨日、雨が恋しいとこの日記に書いたのだが、夕方、風が吹いたと思ったら、突然雨が降りだし正直困った。降るなら朝からちゃんと降ってほしい、それが本音である。

 

今年は温かいとさんざんっぱら言っていたのだが、ここに来て、ちゃんと寒い。いや、かなり寒い。そう、この寒さが毎年のこの時期の太宰府の寒さである。

 

午前中は天神広場にて、昨日から今朝にかけてまた沢山落ちた樟の葉を掻いて葉や枝を分別し掻き山に加え、午後は鬼すべ堂にて、水蒸気蒸留装置の稼動実験を行った。樟の葉から樟脳を抽出するための装置なのだが、毎年どれくらいの樟脳が収穫できるのか分からない。葉っぱをバラバラに砕き、蒸留装置に入れ、窯に薪を積んで火を入れ、冷却装置に水を溜め、排水のルートを確保する。それら一連の稼動実験である。

 

一段落すると、電話が鳴った。先日、宮家の方と宮司様が会われる時に“くすかき”の「樟香舟」と「芳樟袋」を太宰府のお土産の1つとして持って行ってくれた神職の方からだった。

 

樟の葉の香りは、愛子様も楽しんでくださり、「樟の葉から樟脳を取り出すワークショップをしてみるのも面白いですね」とおっしゃってましたよと、嬉しい報告をいただけた。

 

自分にとって何よりも嬉しいのは、太宰府みやげとして宮司様から樟の葉の香りが届けられたことである。五年という月日をかけて、くすかきを継続してきた結果として、樟の葉の価値に変化が起きたことを分かりやすく実感できる出来事であった。

 

アートには、新たな価値であり、ものの見方の多様性を生み出すという役割がある。時間をかけてその仕事が成立しつつあることに、これまで信じて続けてきたことに間違いはなかったのだと思えた。共に歩む仲間たちと、広く理解を見いだしてくれるお宮の方々に感謝したい。

 

更に今年から、数量限定で案内所の太宰府みやげで「芳樟袋」が販売され、その収益をくすかきの運営資金として使用させていただけることになった。これもまた大きな一歩である。

 

それでも、くすかきで向き合える落ち葉は全体のほんの一部でしかなく、落ち葉の多くは、まだまだ当然厄介者として扱われている。いきなり全部とはいかない。まずはものの見方を変えることからはじまる。そのはじまりは徐々に広がりつつある。

 

落ち葉はあくまで落ち葉である。面白がれるかどうかは自分次第である。生きる世界そのものも同じである。

今朝もこんなに落葉してました。

 

新芽を包む表皮がたくさん落ちてきています。

 

掻き山も徐々に大きくなってきています。

 

雨の中、水蒸気蒸留装置の稼動実験中。今年はたくさん収穫できるといいのだが、、、。