10日目。ワークショップ参加者13人。平日にこれだけの方が来てくれることには、やはり驚かされる。
今日は新しい糸の巻き方を学んだ。その名も「ツブラ巻」。
《そらあみ》で使用する糸は、元々白い糸を現地で染色して使用するため「綛(かせ)」という状態で送ってもらう。糸がグルグルと大きな輪っか状に巻かれている状態をそう呼ぶ。
その染色を終えた綛を、こんどは糸玉にする。その糸玉から引っ張った糸を網針(あみばり・あばり)に巻き付けて、糸の仕込みを終えた網針を使って網を編んでいくのである。
この糸玉づくりは、これまで《そらあみ》ワークショップの入口の1つとして機能してきた。親子やカップルなど2人組で行うことが多く、中には「この糸玉つくり懐かしい感じ、セーターを編むのが好きなお婆ちゃんの手伝いで昔よくやってたわぁ」なんて言葉が飛び出したりした。
その糸玉の新しい巻き方が「ツブラ巻」である。網針に糸を巻くとコロコロと転がっていく糸玉に対して、ツブラ巻のものは、出来上がった糸玉の真ん中から糸を引っ張ると、スルスルと気持ちよく出てくる。
ツブラ巻の糸の巻き方は言葉にして説明するのが難しいので、ここには書かないが、その語源が面白かった。
五十嵐:「ツブラってなんでツブラって呼ぶんですか?」
おじちゃん:「そりゃあんた、あれ知らんのか?赤ちゃんのゆりかご」
五十嵐:「赤ちゃんのゆりかご?」
おじちゃん:「ようするにツブラってのは藁で編まれた赤ちゃんのゆりかごのことや。昔は畑仕事する時なんかは、目の届くとこに赤ちゃんを置いとくためにツブラの中に入れてな。出て来んように紐で縛ったりしてなぁ。その形に似とるからツブラってゆっとる」
五十嵐:「なるほど。昔の赤ちゃんのゆりかごのツブラによく似てるからツブラ巻か。仕事場のそばに置いたってことは、ツブラに入れた赤ちゃんが泣いたらすぐにあやしに行ったもんですか?」
おばちゃん:「んなこたぁないよ。泣いたら泣かしとって疲れて諦めて寝るんや。今みたいに過保護でないよ。ほったらかしや。それに昔はパンパースなんてないやろ。だから、おしっことかもそのままやった。そんで衛生面とか良くないってんで無くなっていったんやろね」
五十嵐:「おじちゃんもツブラ育ちですかね?」
おじちゃん:「おそらく最後の世代やと思う。覚えとらんけどな。赤ちゃんやったから(笑)」
暮らしと糸と編むことがすぐそばにあったということを実感するエピソードに糸巻きをきっかけに出会った日となった。
ツブラ巻き。この上に赤ちゃんがいる姿を想像してみる。
網にまつわる氷見のものがたりは、こんな雰囲気での対話の中から出てきます。