漁師が編んだセーター

そらあみ17日目。今日は11人で編んだ。昨日に引き続き反物状に細長く編み上がった網の隣同士をつないで大きな1枚の網に仕上げていった。10目であるはずの場所が9目だったり11目だったりと、途中何度も直しながら少しずつ丁寧に進めた。

 

おいちゃん「ほれ。やっぱ、この辺りは最初の頃やから、分からんかったし失敗も多いな(笑)」。網の上の方より下の方が慣れてきて上手に編めている。それはそのまま上達の軌跡でもある。17日前の自分の手跡が残っているのである。歪な網目もなんだか愛おしい。一枚目の半分ほどがつながり、見え方もガラッと変わり、すっかり網らしい格好になった。

 

話は昨日のことにもどる。昨日の夕方、おじいちゃんが漁師だったという釣賀さんが、セーターを持ってきてくれた。漁師のじいちゃんが編んだセーターを持って来てくれたのである。じいちゃんはもう他界して、形見でもあるセーターを持ってきてくれた。漁師が編んだセーターを見たのは初めてだった。息子や孫のために編んだものだそうだ。とても美しいつくりだった。網はテキスタイルの原点なのだという話を聞いたことがある。網の目をどんどん縮めていけばやがて面になる。その様子がセーターは分かりやすい。

 

手編みのセーターと聞くと、どうしても女性がつくるイメージが沸いてしまうが、網仕事が得意なかつての漁師さんは、“ないものはつくる”という発想で、自分たちが着るセーターも編んでいたのだろう。釣賀さんの話では、脇の下から裾にかけて普通のセーターならつなぎ目があるらしのだが、じいちゃんの編んだセーターにはそのつなぎ目がないらしい。それも漁師が網を基準にして編んだ特徴なのだろうか。シンプルで丁寧に編まれたそれは、服であるのに網であって、なんとも言えない温もりを感じた。

 

このセーターの件もしかり、氷見で《そらあみ》をしていて思うことなのだが、漁師以外の人の網との距離感が近いのを感じる。もちろん《そらあみ》に来てくれるくらいだから、何かしら網に興味があるのだろうが、なんというか、まだちゃんと暮らしの中に網がある感じがするのだ。

 

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漁師のおじいちゃんが編んだセーター。繊細で美しい仕上がりでした。そして触れると、しっかりとしていて、温もりを感じて、思わず着たくなった。強くてあったかい、まさに漁師のようなセーター。こんな感じのじいちゃんだったんだろうな。

 

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網がつながると風景が変わっていきます。

 

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網がつながると表情も変わっていきます。

 

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編みはどんどんつながっていきます。

 

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しゃべっている時は調子良く編めてる時。黙っている時は間違いを直して解いている時(笑)

 

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すっかり場の見え方が変わりました。

 

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1枚目の半分くらいはつながりました。