くすかき19日目。くすのかきあげ。

くすかき19日目。くすかき最終日。早朝6時半の境内に40名の掻き手が集い、朝の美しい光と静寂の中、平成28年「くすのかきあげ」を無事に奉納することができました。

 

朝5時に天神広場集合。まだ暗い中、皆で落ち葉を移動させる。6時半に掻き手全員が集合し、各当番長と流れの発表し、組み分け。7時〈くすのかきあげ〉開始。9時〈くすかき報告祭〉催行。天神広場で記念撮影をして、女性陣は山かげ亭にて直会準備。男性陣は落葉と柵の撤去。12時半〈直会〉開始。15時各賞の発表。16時平成28年記録映像鑑賞。17時中締め。その後、深夜まで直会は大盛況。大人28名、子供約20名、総勢約50名が集いました。

 

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今年の〈くすかき〉は、適度な緊張をもたらす負荷によって、さまざまな成長を感じた年となった。そこで、〈緊張と成長〉というテーマで3つの出来事から振り返る。

 

1つ目の出来事は、〈くすかきという場の成長〉についての話。今年、会期中に「熊本地震」が発生した。太宰府は震度3〜4といったところで、揺れはしたが普段通りの生活を送ることができた。

 

毎年、くすかきを一緒につくっている仲間の一人に自衛隊員の方がいる。その方は今、熊本の南阿蘇の震災現場に入っている。昨夜、本人から電話があった。

 

「今年は参加できなくてすいません」

「いえ。むしろ、たいへんな状況の中、お電話ありがとうございます」

「今年のくすかきはどうでしたか?」

「はい。葉っぱが落ちるのが早かったですけど、あとは良い雰囲気で、くすかきできました」

「やっぱり、みんなと会えないと寂しいですね」

「そうですよね。みんなには熊本地震の現場に入っていて参加できないと伝えました。そしたらみんな同じように、会えないのはさみしいって言ってましたよ」

「そうですか…。来年こそはみんなに会いたいなぁ」

「熊本はどんな様子ですか?」

「自分は今、あの一番ひどいことになっとる土砂崩れ現場におります。2名の遺体を運び出し、今も他の2名の捜索を続けています。27000人体制でやっとるのですが、全国の駐屯地から応援の部隊が来てくれているので、自分ら地元は、なかなか休むわけにもいかず、皆だいぶ疲れが溜まってきております」

「…そうですか。精神的にも肉体的にも…そういった状況にあるのですね。そんな時に、ほんと電話ありがとうございます」

「いえ。自分はこうして声が聞けて、くすかきの話を聞けるだけで、ずいぶん気持ち的に助かります」

 

壮絶な現場からの電話だった。ここ太宰府のある福岡は熊本と隣接している。自分は熊本にも多くの友人がいる。地震発生当初、一瞬、〈くすかき中止〉ということも頭をよぎったが、5年前の東日本大震災の時に決めたことがある。それは、大きな自然災害がどこかで発生したとしても太宰府が開催できる現場状況であれば、粛粛と〈くすかき〉を行うということ。樟があり、落葉をし、それに向き合う毎年の姿を伝える。ブレずにやることこそ、友人たちへのエールだと考えている。

 

熊本地震という〈緊張〉に対して、千年生きる樟の木のようにブレずに、粛粛とつづけることこそ、〈くすかきという場の成長〉であり、そこに関わる仲間と遠くの友人への応援につながると信じている。

 

 

 

2つ目の出来事は、〈くすかきに関わる人の成長〉についての話。この春、小学6年生になった3人のアイデアで太宰府小学校にくすかきを紹介するプレゼンをしにいった。彼らは「一緒にくすかきをする仲間を増やしたい。それには、まずは知ってもらいたい」という想いから、自らの意志で校長先生に直接交渉に挑んだ。そして、太宰府小の教育目的である「自分で考え行動できる、太宰府が大好きな子供の育成」とまさに重なるということから、30分間全校生徒に向けての校内TV生放送許可を得てきたのだ。放送時には自分もゲストとして呼んでもらい、普段くすかきの現場では見られない、先生やカメラのむこうの全校生徒の前で緊張する彼らの真剣な表情を見ることができた。さらに、自分なりに感じているくすかきの魅力を、自分の言葉でみんなに発信するという貴重な機会に立ち会うことができた。

 

「約一ヶ月間樟の葉を集めて、昔に存在した樟の木を想像する風景を最終日につくる行事です。」

「日々のくすかきでは、くすかきカードに葉っぱの形をした判子を集める楽しみがあります。」

「くすのこうたきでは、薪割りをしたり、焼き芋をしたりして楽しいです。」

「早起きすると、健康に良いし、もっと早起きして、はじまる前にみんなと遊ぶのが楽しいです。」

「他の小学校に友だちができました。」

「樟の葉っぱにいろんな種類があることを知りました。」

「くすかきの休憩時間にみんなと独楽(こま)をしたり、正月をしたりするのが楽しいです。」

 

自分で考え行動する誇らしい仲間の姿であった。「誰かに伝えたい」その純粋な想いが、参加者から当事者へ、受け手から発信者へ変わっていった。それは非常に大きな意識の芽生えである。

 

太宰府小学校プレゼンという〈緊張〉に対して、自分で考え発信するという〈くすかきに関わる人の成長〉に立ち会えた年となった。

 

 

 

3つ目の出来事は、〈くすのかきあげの成長〉の話。〈くすのかきあげ〉は、かつて存在した千年樟を描き出す一年に一度だけの朝であると同時に、落葉の総量や掻く技術、信頼関係や呼吸の合わせ、全体の集中力など今年のくすかきの集大成が現れる日。そこに今年は新たな要素として「礼」と「掻き出し」を取り入れた。「礼」というのは、具体的には柵の中に入る時と、柵から出る時。そして、千年樟跡に向き合う時に、一度しっかりと立ち止まって一礼するということ。だがその場所は、何も事情を知らない人から見たら、ただ落ち葉が敷き詰められた空間でしかない。しかし、我々掻き手はそこには存在しない樟という見えない存在に向かって一礼をする。その瞬間、空間と人とのあいだに、ある種の緊張関係が生まれ、第三者に何かの存在を感じてもらうきっかけとなった。

 

もう一つの新たな要素「掻き出し」は、〈くすのかきあげ〉のはじまりに、広く敷き詰められた樟の落ち葉の中心(千年樟が存在した場所)を松葉ほうきで掻き、その存在を一番最初に形にする所作。その行為の意味するものは、存在しないものを、そこにあることとする。いわば、0(ゼロ)から1(イチ)を立ち上げる芸術としての特性を備えた緊張感のある身体表現であった。

 

「礼」にせよ「掻き出し」にせよ、その共通点は、見えないものとの緊張関係を創り出す行為性にある。神社という、見えない神様の存在を感じ、そのことについて考える場所だからこそ、緊張感を持って空間と向き合うことにより、かつて存在した見えない樟の木の存在を、こうして、さらに強く感じられるようになった。

 

見えないものと向き合う〈緊張〉を通して、〈くすのかきあげの成長〉を実感した年となった。

 

 

 

3つの出来事は、それぞれに適度な緊張をもって、成長へとつながる象徴的な出来事であった。当然、ここで紹介されていない〈緊張と成長〉が、くすかきに関わる一人一人にあった。成長の度合いは、その関わり方の深さや想いによって変わってくる。

 

だがそれは、人が自然と向き合い、人が人と向き合い、人が場と向き合い、それらのあいだに確実に存在する何か目に見えない大切なものを感じ、それらを表現し伝えることにより、はじめて生まれることなのである。

 

今年という年も、今日という日も、生きているあいだに最初で最期。今年の樟の杜に集った人と、そこに想いを馳せた人によって、平成二十八年、今年も見事な千年樟が描き出されました。今年も良いくすかきでした!また来年、樟の葉が落ち若葉が芽吹く頃、太宰府天満宮の樟の杜で会いましょう!!!お疲れ様でした!!!

 

PS.なにより、新緑の樟の杜での早寝早起き生活は心身ともに清められ、一年で一番健康的な1ヶ月なのでした。今年は、このあと、どれくらい早起き生活続くかな?(笑)

 

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第七回「くすかき-太宰府天満宮-」

[会期]平成二十八年 四月二日[土]〜二十三日[土]

[会場]太宰府天満宮 境内

[行事]松葉ほうきつくり:会期初日 四月二日 開催

日々のくすかき:期間中 早朝六時半より 夕方十六時半より 開催

くすのこうたき:期間中 毎週土日 開催

くすのかきあげ:会期最終日 四月二十三日 開催

[参加人数]七百十九 名

[奉加帳賛同者]百十二 名

 

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くすのかきあげ各当番長

[掻き出し]五十嵐靖晃

[水当番]井原功介 陽山英樹

[新芽当番](当番長)天賀來星

松大路信昌 杉本八海 米湊咲希 米湊瑛治 杉本九龍 天賀陽爽 松大路昌暉 江藤幹太)

[根っこ当番]飯高左智江 天賀友加利 江藤応樹 米湊五郎 大里武史

[幹当番]根っこ当番と同じ

[目立て当番]佐藤信二 飯高左智江 天賀友加利 松大路信昌 天賀來星 杉本八海

[舟当番]米湊咲希

[ほうき当番]井原功介 陽山英樹

[太鼓当番]五十嵐靖晃

 

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[特別協力]太宰府天満宮

[協力]中川政七商店/福田屋染物店/株式会社ムーンスター/

油機エンジニアリング株式会社/ありがとう農園

[プロジェクトスタッフ]飯高左智江

[写真]前田景

[映像]仲信達也

[デジタルアーカイブ]須之内元洋

[デザイン]河村美季

[SpecialThanks]猪股春香/米津いつか/百花堂

[松葉ほうきつくり]原口葵

 

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最後に、静岡から参加してくれている、この春、大学を卒業した友人からのメールを一部紹介します。

 

 

こんにちは。

くすかきでお世話になった◯◯です。

昨日の夜、無事に自宅に戻りました。

 

改めて、20日からの5日間本当にありがとうございました。

今年は、去年よりもあっという間に過ぎていった5日間だったと感じます。

 

まだ参加して2年目ですが、「くすかき」はわたしにとって欠かすことのできない行事のひとつになりました。

くすかきを通して太宰府との縁が深くなり、太宰府のみなさんやそのほか素敵な方々とも出会うことができ、様々な「初めて」を経験して成長できる、本当に大切な場だなあと実感しています。

また来年、くすかきをしに行くために、この1年がんばろう。帰りの新幹線で、そう思いました。

 

くすかきに参加できるわたしは本当に幸せ者です。本当にありがとうこざいます。

◯◯さんにもたいへんお世話になりました。ありがとうございますとお伝えください。

 

また来年、樟の若葉が芽吹く頃、必ず太宰府に行きます。そのときにはどうぞよろしくお願いいたします。

 

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年齢や性別に関係なく、くすかきが関わる人にとって成長の舞台となっていると実感できるメールでした。それは自分自身にも言えます。来年また成長した自分を見てもらいに、そして、これまでの自分と今の自分、そして、これから自分を確認するために、みんなに会いに、樟の葉が落ち若葉が芽吹く頃に、太宰府天満宮の樟の杜に向かいます。

 

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早朝5時境内集合。3週間集めた落ち葉を移動させます。

 

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かつて千年樟が実在した場所に落ち葉を広げます。

 

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千年樟があった場所を「掻き出し」したあと。今度は、葉っぱを落とします。

 

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葉っぱが落ちたあと、葉が土に還り栄養となり、こんどは根っこを形づくります。

 

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平成二十八年の千年樟の根張り。毎年違うのが面白い。今年は奥の方がコブが多く手前は細かい根張りとなりました。

 

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根っこがこんどは幹へと形を変えていきます。

 

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幹へと形を変えたあとは、目立てをして縞模様を入れ、葉っぱが落ちてくる場所をつくります。波の音をイメージして目立てをし、その波の音に乗るように、大樟香舟がまわりを一周し、今年の香りを楽しみます。

 

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そして最期に、香りを天に届けます。

 

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見事に幹の上に香りが乗り、天へと届けることができました。

 

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そこにはない樟の存在をより身近に感じる年になりました。

 

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平成二十八年くすのかきあげ無事に奉納することができました。

 

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くすかき報告祭がはじまる前、御本殿横で待機中。このあと全員で御本殿に上がって、今年のくすかきとその香りを天神様にご報告させていただきました。