サンパウロ生活は日が暮れると自然と緊張感が芽生える

サンパウロ3日目。午前中はレジデンスにてスーツケースの荷物や道具の整理を行った。午後から移動し、PIPA会長の井上さんと食事会だった。

 

井上さんは日系ブラジル人。日本からブラジルへ渡り、何もないところからはじまり、今は会社や学校で使う事務机などをつくる会社を経営し、PIPAの会長も務めている。ブラジルに来て約40年。ブラジルに渡った当初、現地で差別を受けていた話など、これまでの壮絶な人生の話を聞かせてもらった。

 

一番勉強になったのが、一緒にブラジルに渡った4人の仲間の内、3人は既に殺されたという話だった。理由は、強盗に襲われたり、クビにした従業員の旦那に恨みをかったり、自分が育った現代日本では考えづらいものばかりだった。

 

井上さんから見ると、今の平和ボケしている日本は世界的視点では「なめられている」と言っていた。ここブラジルでは、いつ何時、何かに巻き込まれて殺されるか分からない。殺されたら終わり。運悪く強盗に遭遇して、自分で自分を守れなかっただけ。

 

ナイフやピストルを突然、突きつけられた時に渡すお金を用意しておかなければならない。その際、差し出す時にポケットに手を入れてはいけない。相手はナイフを取り出すと思って引き金を引く。その覚悟と準備をしておかなければならない。と教えてもらった。

 

日が暮れて、辺りが薄暗くなってくると自然と芽生える緊張感は、落とした財布の中身が一切無くならず、そのまま戻って来るような平和な日本に育った自分には、逆に新鮮で、襲われた時、やるのか、やられるのか、その時どうやって逃げるのか、自分の身を守るということについて考えるようになる。その瞬間から生き延びるために。

 

そして、広くは、自分の国を守るということとはどういうことなのか、日本にいる時には考えられない世界基準の日常的感覚をベースとした国防についても考え直さざるを得ない。

 

殺されたら終わり。。。とにかく生きている緊張感が違いすぎる。危ないから外国には行かない方がいい。それはそれで何も間違ってはいない。しかし、世界と日本について考えるならば、日本にいるだけでは、テレビやインターネットなどだけで得た情報だけでは、やはり知ってはいても実感は得づらい。今の我々日本人は、あまりに世界に対する想像力が足りていないのだろう。誰かが見てきた、さらに編集された断片しか見えていないのだから。

 

日本にいたらどうしても、日本を基準とした肌感覚や一般常識でしか、ものごとを判断できない。日本の常識は世界の非常識で、世界の常識は日本の非常識だったりする。この地球という星で生きるのであれば、あくまで関係性の中にあるということを忘れてはいけない。知らないでふらふら出ていったら、下手したら死んでしまうのだから、、、知らなかったから、そうは思ってなかった、、、では済まされない。故に、どちらが正解ということでもないが、関係性を知らずに判断するということは、それこそあまりに危険なのだ。

 

弱いものを守ることが、他の動物とは違う人間らしい社会だと学び、そう思っているが、そのためにはまず自分が強くなければならない。気がついたら、知らず知らずのうちにいつのまにか弱者になっている自分がいる。だれもがそうなる可能性はある。今の自分は強いのか?世界と比べてどうなのか?これまでの日本人と比べてどうなのか?本当の強さとは何なのか?

 

社会や制度や国に守られて、自身の弱さを忘れていないか?強くなるために努力をしているか?もちろん強さは力だけではない。その生きる意志や姿勢でもある。本当に強い者とは、自分の運命から逃げず真っ向から立ち向かう勇気のある者。本当に弱い者は、自身の中に生じる未来や他者といった“わからないもの”を恐怖として捉え、それに呑まれてしまう者。

 

そう考えると、この世には、強い者も弱い者もおらず、皆が強くも弱くもなりうるといこと。

 

かつて、自分の生であり運命と向き合い、この世界を強く生きた人たちのように、強くこの世界を生きたい。

 

自分と向き合うことは世界と向き合うこと。世界と向き合うことは自分と向き合うこと。

 

人は必ず死ぬ。どう生きるか、、、どう自分という世界と、世界という自分と向き合うか、、、弱い自分と向き合い、虚勢をはるのではなく、素直に立ち向かうか、、、それ以外ない。

 

強く生きるためにブラジルで世界と向き合い、自分の弱さに向き合いに来たとも言える。

 

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滞在先の門。出かける時も家にいる時も、必ず南京錠をつける。守られているようにも、檻に閉じ込められているようにも思える。だがこれがない家はない。

 

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このレジデンススペースは、普段はPIPAの親の会が集う場所。子供をPIPAに預けている8〜13時のあいだここにいて、お祭りに向けて食べ物を作って準備をしたり、話し合いをしたり、バザーをしたり、コミュニティースペースとして利用されている。自分はここに約1ヶ月滞在させてもらう。

 

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中はいくつもの部屋がある。

 

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バスルームはこんな感じです。

 

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ここが自分の部屋。ベッドとデスクのみのシンプルな部屋です。

 

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キッチンとダイニングスペース。遠くから通っている親子はここで朝食を準備して食べたりもします。

 

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玄関入ってすぐの部屋はバザーの部屋。