Autista(自閉症)とArtista(アーティスト)は1字違い

サンパウロ5日目。曇り。肌寒い朝。7:30PIPAへ。今日から本格的にPIPAでの仕事であり交流がはじまる。

 

7:40スタッフミーテングに参加。約20人の心理学者、理学療法士、言語療法士、看護師、体育指導員が施設長のヒカルドを中心に朝のミーティングを行う。当然、ポルトガル語なので理解はできない。それでもそこにいること。ともに過ごすことが大事だし、言葉は分からないが、その振る舞いや、言い方など、言語以外の情報から一人一人のことを少しずつ把握していくこともできる。話し手の方を見ながら、目が合うと軽くうなずいてみたりする。相手も「こいつ言葉が分からないんだろうな」と思いながらも、真剣に聞いているとちゃんと話をしてくれる。ポルトガル語に耳を慣らすには良い機会である。あと、これはブラジルの常識なのか、PIPAの常識なのか分からないが朝のミーティングにポンデケージョやクッキー、ジュースやコーヒーが出てきて、それを食べながら行う。日本では朝のミーティングでこんな雰囲気はないような気がする。

 

8:00になると、親に連れられて子供たちがPIPAにやってくる。玄関に先生が1人立って、子供と正面に一対一で向き合い「ボンジーア(おはようございます)」と朝の挨拶。子供は恥ずかしいのか、言葉が理解できないのか、もごもごしている。先生が「ボン?」と聞く。すると子供は「ジーア」と答える。慣れている子供は「ボンジーア」と小さな声で返事をする人もいる。そんな朝の挨拶を一人一人してから、建物の敷地内へと子供たちは入っていく。玄関先は親同士の会話、親と他の先生との会話で賑わっている。週末過ごした家での様子、買い物に行くなどPIPAからの宿題ができたかどうかといったの情報交換をしている。

 

各教室で着替えを済ますと、病院の裏の駐車場広場まで5分ほど歩いて移動し、PIPA恒例のランニングがはじまる。PIPAが取り入れている生活療法の基本で、走って心身を安定させる治療法である。雨の日と朝のミーティングが長い金曜日以外は走るそうだ。自分は一緒に走るのは今回が初めて。広場に着くと軽く準備体操をしてから約30分走る。広場に三角コーンを十数メートル四方で置いて、33人の子供と20人の先生が一緒にグルグルと走る。左回り。子供たちの年齢も5歳から18歳くらいまでいるので、走力にも差がある。だがそれ以上に、いろんな人がいる。泣いてる人、奇声をあげて叫んでる人、座る人、突然止まる人、ゆっくり走る人、早く走る人、ドタバタ走る人。走り方?というかそこにいる姿は人それぞれ。最初は少し戸惑ったが、まぁこういうものかな、、、と受け止めてみる。先生にお尻を押されながらとか、泣きながらとか、にこにこしながらとか、無表情とか、いろんな感情が入り混じりながらも走っている姿は、どこか皆愛らしい。

 

しばらく自分も一緒に走っていると、かつて自分も走って精神のバランスが良くなっていたのを思い出した。小学生の頃もそうだが、特に中学生の頃、やたら走るのが気持ち良くて、わざわざ早く起きて走っていた。走る意味など特になかったのだ。ただ走りたかった。走るとスッキリしてなんか調子が良かったのだ。あれはもしかしたら、無意識のうちに体が走って精神バランスを整えることを求めていたからなのかもしれない。

 

そもそも、自分には自閉症の傾向がある。これはTURNに関わって、国内のLa Manoという施設と交流した時に、そこのスタッフに言われて気がついたことだったのだが、例えば、食事の時に一種類ずつ食べていく傾向がある。学校に通っていた頃は三角食べをしなさいと先生に言われて気をつけていたのだが、行かなくなると戻ってしまった。他には、縦横きっちりモノを並べないと気になってしまう。少しずれた机の角度を直したり、机の上の道具や書類、引き出しの中のスプーンやフォークなんかを、ついつい並べてしまう。レジデンス先の畳の部屋なんかはA4書類が一定方向に無意識のうちに並べられていたりする。自分は単なる「癖」だと思っていたが、これも1つの自閉症の傾向なのだそうだ。ブラジルでPIPA施設長のヒカルドと食事をした時にも、やはりその指摘があった。ちなみにヒカルドは、少しでも汚れが服に付くと、それが取れるまで気になって仕方なく、他のことが手につかない。それが自分の自閉症の傾向だと言っていた。まぁだれでも、そういった癖や気になってしまうことがある。そう思えば、だれもが皆の中に自閉症の傾向はあると言える。

 

そして、ヒカルドに質問をした。

 

五十嵐「自閉症ってポルトガル語でなんて言うの?」

ヒカルド「アウティスタ」

五十嵐「あれ?その音、アーティストに似てるね」

ヒカルド「アーティストはポルトガル語でアルティスタ」

五十嵐「おお!アウティスタとアルティスタ。すごく似てる!!!なにそれ?スペルは?」

ヒカルド「アウティスタはAutista(自閉症)。アルティスタはArtista(アーティスト)。UとRの一字違いだね」

五十嵐「それは面白いね〜。ヒカルドそれ知ってた?」

ヒカルド「知らなかったよ。そんなこと考えたこともないよ。ポルトガル語で2つは別の意味ね。よくそんなこと気がついたね(笑)」

五十嵐「でも自閉症とアーティストが一字違いって、、、なにかあるよね。似たようなもんだってことか(笑)」

 

Autista(自閉症)とArtista(アーティスト)。2つは1字しか違わない。

 

Artista(アーティスト)の自分は、Autista(自閉症)のみんなと一緒に走っていてどこか懐かしく安心していた。似たもの同士だからだということをポルトガル語が教えてくれた。

 

その後、ホッピングなど他の授業方法や子供達の特徴や能力差をリサーチ。13:00になると、子供達を迎えに来た親たちに受け渡す様子を見学。午後からは、谷口木工に組台の玉のサイズを発注するため、実際に組む紐の長さと本数を経尺(25mの糸を240本経尺)作業を行った。

 

IMG_3360_s

Autista(自閉症)とArtista(アーティスト)が走る。

 

IMG_3365_s

五十嵐用に用意してくれた教室で糸を並べて日本から持ってきた数を確認。

 

IMG_3368_s

授業風景。ホッピングもやってます。

 

IMG_3373_s

竹馬もあります。

 

IMG_3386_s

PIPAの通路を使って25m×240本の糸を経尺。これを1つの玉に巻いて、合計8玉用意します。それで八つ組みすると15mの組紐になる計算です。

 

IMG_3387_s

ホッピング置き場がちょうど経尺に使えました。