PIPAで糸巻きワークショップをはじめる

サンパウロ8日目。7:30PIPAへ。7:40スタッフミーティング。その朝のミーティングにて、「糸巻き」を授業に取り入れられないかプレゼンを行った。この数日のあいだPIPAで子供たちと共に過ごし、毎朝広場を走ったりするように、なんとなく彼らとつながる可能性がある所作かなと判断した。「糸巻き」は、組紐の工程(以下参照)で言うと「糸繰り(いとくり)」に相当する。

 

1、糸づくり…桑の葉を育て、蚕に糸を吐かせ絹糸をつくる。綿花を育て綿糸をつくる。それらを染色する。

2、糸繰り(いとくり)…綛糸(輪っか状に束ねられた糸)を、芯などに巻きつける。

3、経尺(へじゃく)…組紐を組むにあたって必要な、糸の長さと本数をとる。

4、玉つけ…経尺した糸を玉(組紐を組む道具の1つ)に巻きつける。

5、組み…丸台や角台といった組台と玉を使って、組紐を組み上げる。

6、仕上げ…組紐の両端を糸で固定する。

※制作する組紐によって経尺と玉つけのあいだに染色が入る場合もある。

 

日本での組紐研修でお世話になった「龍工房(http://ryukobo.jp)」の師匠からは、「組紐は、仕込み八割、組み二割」と教わった。そう、組紐づくりに於いて重要で手間暇がかかるポイントは仕込み(1〜4の工程)なのである。「組み」はもちろん形になる部分なので派手だし、間違いなく腕の見せ所ではある。しかし、その仕上がりを大きく左右するのが、仕込みなのである。仕込みなくして、組紐なし。仕込みこそ組紐の本質とも言える。

 

PIPAでは、様子を見ながら、そして関係性を作りながらではあるが、その仕込みを主にワークショップとして行ってみようと思う。

 

8:00に子供たちを受け入れ、8:30から子供たちと一緒に30分のランニング。何日か一緒に走ってみると、ポルトガル語だし、自閉症ということもあって、言葉は相変わらず通じないのだが、横を一緒に走る人が現れたり、手を握られたり、子供達との関係性の変化を感じた朝となった。「あ、この人、最近よく見るなぁ」くらいだと思うが、多少存在を認識してもらいつつあるのかもしれない。共に過ごすことによる変化なのだろう。

 

ランニングから戻ると手洗い、うがい、水分補給をしてから授業がはじまる。そこに、さっそく「糸巻き」の授業が取り入れられる。9:45〜(5〜7才くらいのクラス)、10:30〜(12〜15才くらいのクラス)、11:00〜(9〜10才くらいのクラス)で実施。1クラス4名程度が協働し綛糸を糸玉にするプロセスを役割交代しながら、自分に合った役割(糸玉を巻く、綛糸から糸を引っ張る、糸を玉に送るなど)を見出していった。なんとなく、みんなそれぞれに、はまる作業があるのが興味深かったし、こうやってそれぞれに役割を見出させ、関われる幅が広いこともまた、糸の持つ可能性でもあると感じた。

 

普段集中が苦手な子供が集中して取り組む姿があったりしたようで、先生達も盛り上がって非常に良い雰囲気となった。明日以降も継続して「糸巻き」を行う予定。繰り返すことで起きる変化を追いかけてみようと思う。

 

13:00すぎ、大工の谷口さんから組台試作品と玉12個がPIPAに納品され搬入完了。

 

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朝のスタッフミーティングで、先生たちが試しに糸巻きしてみる。「糸巻きの仕方で性格が表れます」と伝えると、ミーティング終了後、この先生から「私の糸巻きどうだった?」と質問が、、、気になるようです。「短い時間だったのでなんとも言えませんが、丁寧な性格であることは分かりました」と伝えると、どこかその表情は安心していたように見えた。

 

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5〜7歳のクラス。まずは糸に触れてみるところから。

 

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彼は普段は集中力があまり続かないのに、最後まで糸を引っ張ることをしていたことに先生たちが関心を示しています。

 

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よほど嬉しかったのか、ハイタッチ。

 

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出来上がった糸玉を手渡してくれました。二人羽織状態ではありますが、、、(笑)

 

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12〜15歳のクラス。けっこういい感じです。

 

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9〜10歳のクラス。このクラスが一番それぞれの役割がはまって、いい流れが生まれていました。

 

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糸巻きに、かなりはまったフェリペくん。

 

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糸玉ができたら五十嵐にプレゼント。何故か、どのクラスも自然と最後はこの儀式になります。