糸紡ぎリサーチツアー1日目。どんな土地でアルパカと人は暮らし、糸が紡がれているのか。糸が生まれる、そのはじまりの瞬間に出会いに行くのが目的である。
アンデスでアルパカを育て、糸を紡いでいる人とネットワークを持つパターンナーのイヴァンの友人のところでアルパカの毛刈りと選別と糸紡ぎをさせてもらう。通訳及び解説としてペルー在住15年アンデス染織専門家の有紀さんにも同行してもらった。
目的地はプーノ。チチカカ湖畔の標高4000〜4800mの世界である。
Lima(リマ)→Juliaca(フリアカ)約2時間飛行機移動。Juliaca(フリアカ)→Puno(プーノ)約1時間バス移動。昼食をとり、Puno(プーノ)→Chucuito(チュクイート)約1時間車移動。
そこには都市のリマとは全くの別世界があった。リマが季節柄ずっと曇りだったせいか、久々の晴れと太陽の光が美しい。とても静かでノイズがない。空が近く感じ、標高が高いせいで、少し歩いただけで息が苦しく、階段を上ると頭がズキズキする。
プーノにあるチュクイートという町の宿に着いたのは夕方だった。
宿の窓から、深く濃い青のチチカカ湖と、金色に輝く大地、突き抜けるほど透明な青空が広がっている。湖岸の焼畑の煙がゆっくりと風に流れていく。聞こえるのは風の音と、遠くに聞こえる鳥の声、穏やかな時が流れている。ゆっくりと深呼吸してみる。自分の心も穏やかになっているのを感じる。
道中、イヴァンが教えてくれたインカ時代の挨拶を思い出していた。
《インカの挨拶》
・盗まない
・ウソつかない
・なまけない
インカの時代、挨拶をする時、人は必ずこの言葉を交わしたそうだ。現代の世界共通の挨拶にしても良いと思う。
クスコを都とし繁栄したインカ帝国の国づくり神話は、目の前にあるチチカカ湖からはじまる。ある時、チチカカ湖から男女2人が現れた。男の名はマンコカパック(教育・哲学・戦い方を伝えた)。女の名はママオクヤ(子供の育て方・家事を伝えた)。2人は国をつくる場所を探していた。その方法は金の杖を持って地面を叩きながら、金の杖が地面に入った土地から国づくりをはじめるというもの。そうして選ばれた場所がクスコである。
糸のはじまりに出会いにきた土地は、インカ帝国のはじまりの土地でもあった。
プーノの町の広場のカテドラル。
宿から望むチチカカ湖。
宿の前の道。
チチカカ湖に夕日が沈む。
インカの時代からある水路。