息子の未来の姿は父親の過去の姿

沙弥島滞在23日目。今日は櫃石島の中学校で全校生徒4人の中学生と網づくりを行った。

 

櫃石中学校で網を編むことになった経緯はこうだ。櫃石島集会所での網づくりに参加してくれていたベテラン漁師の細谷さんが、島の子供達にも参加してもらいたいという想いから、学校の先生に相談したところ、校長先生、教頭先生も同意してくださり、2人は前回の網づくりの場に来て実際に編んでくれ、学校でもやってみようということになったのである。

 

櫃石島にある櫃石中学校の現在の生徒数は中3が2人、中2が1人、中1が1人の全部で4人(内2人は兄妹)。そして教師陣は、4人の先生と、校長、教頭の全部で6人。生徒より先生の方が多い。「ここは家庭教師や」と1人の男子生徒が言っていた。その全員が集い網を編んだので、櫃石中学校全員集合の網づくりとなった。

 

外からは我々そらあみチーム3人と、櫃石島自治会長の池田さん、そして細谷さんを合わせて5人がやってきたので、会場となった会議室には15人が集った。午前中の2限分の時間を網づくりの時間として用意してくれ、10時20分からスタートし、途中休憩を挟み、12時10分まで行った。

 

顔を会わせてみると、中学生くらいの年頃特有の恥ずかしがり方というか、少し斜に構えて、いろいろ面倒くさそうにする感じはあるのだが、心の素直さはなんとなく伝わってきた。

 

最初の説明の時に、「網を編んだことある人?」と聞くと、4人中3人の手が挙がった。そういうことである。そして初めて編むという生徒も、すぐにコツをつかんでガンガン編んでいった。皆、非常に上手い。そして集中力がある。休憩時間になっても手を止めない。時折会話をするくらいで、あとはずっと編んでいた。むしろ、手が動かずに会話が弾んだのは先生と漁師と自分たちであった。その会話を聞きながら生徒達は黙々と編んでいた。

 

櫃石島の中学生達は基本的に、網を編む行為や、ものづくりが好きなのであろう。でないとあんなに長い時間は続かない。そして一度、網を編む経験をした校長先生や教頭先生よりも断然上手で、編むのも早いのである。

 

しかし、手先が器用という言葉だけで片づけられない部分があった。なぜなら、道具の扱い、力を入れて結ぶポイントなど、説明していないことなのに、自然とそれをやっていたからである。まるで、網を編むことの道理が分かっているかのようであった。そのリズムのとり方と、編み姿は、彼らの父親や親戚である、まさに漁師そのものであった。

 

どこで、何を見て、どんな人と、どんな環境で育ったのか、といった後天的なものなのか、はたまた、島漁師のDNAがそうさせるのか………。そこから、連綿と続く島の系譜のようなものを感じ、見ていてなんだか嬉しくなるのであった。

 

編んでいる途中、船舶免許の話になった。

 

ベテラン漁師である池田自治会長や細谷さんが言う。

「昔はそんなもんなくてな。それまでは無免許や(笑)。」

「それで実技なんかは、試験監督より当然、船を動かすのは、漁師が上手いやろ」

「あとは筆記試験やけど、そんなん、昔の漁師は知らんやろ」

「でも、今まで通り漁師は仕事せないかんし、監督さんも落とすわけにもいかんわけや」

「そやから、監督さんが答案用紙を埋めて、部屋からいなくなる。そんで、あとは名前書いて出すんや」

「みんな100点やったぞ(笑)。それで2級免許をもらってな。名前が書ければOKや(笑)」

「その後、少ししてから1級免許の試験もあってな。それは1時間話を聞くだけや。」

「だから座ってられたら1級免許になったんや(笑)」

「昔は、そんなんやから女の人も免許とってな。みんなとったで」

「知っとるか?1級免許あったら機関士がおれば世界中、どこに行ってもええんやぞ」

「櫃石島の年取った連中は男も女も世界中どこにでも行けるもんばっかりや(笑)」

「ええ時代やったのぅ」

 

中学生に聞いた。

五十嵐「船舶免許って何歳からとれるんだっけ?」

男子生徒「18や。18になったらすぐとる」

 

彼のお父さんも前回の網づくりに参加してくれた。この辺りでも評判の腕の良い漁師と聞いている。自分はそのことを知っていたので、「将来の夢は?」などという、つまらん質問をすることもなかった。網を編む父親と息子、2人の姿が重なる。それは息子の未来の姿であり、父親の過去の姿でもある。

 

世界中、どこにでも行くことのできる1級船舶免許を持った、じいちゃんやばあちゃん、おじちゃんやおばちゃんだらけの櫃石島。その島の若手の意志もまた、ちゃんと海に向いている。

真ん中に石臼を置いて車座に場づくりをして編みました。ここは会議室。

目がピッシリと合っている。その手元は中学生とは思えない。

黙々と編む。「普段もこれくらい静かならええのに(笑)」と先生

説明は一度しかしていない。覚えるのも早いし、初めて編んだとは思えないほどである。

父親の過去の姿と重ねる