頭の上で日々起きていること

くすかき13日目。今日は朝から一日中曇がかかり、空が重い一日だった。落葉にはある種の安定感のようなものが出てきており、ここのところ確実に一定量落ちてきている。早めに芽吹いた若葉は少し張りが出てきたようである。この頃になると、小枝もかなり落ちるようになる。

 

夕方のくすかきに常連である“しきくん”が、友人の“だいきちくん”を連れてきてくれた。しきくんは最近成長著しい伸び盛りの掻き手。だいきちくんは初めてのくすかき。しきくんは、だいきちくんに松葉ほうきの選び方や使い方を教えてあげていた。

 

境内は細かい砂で覆われている。落葉はその上に落ちる。なので、葉を掻く時はいかに砂を動かさずに葉っぱだけを動かせるかどうかがポイントとなる。地表をさらうように松葉ほうきを動かすには、扱いに慣れるまで、大人にも難しい。だいきちくんは、そろりそろりと慎重に樟の葉を掻いていた。初めてのことに真剣に取り組む姿に思わず目を奪われる。

 

夕方で人が少なくなった境内は静かで、「ザァーッ、ザァーッ」と、松葉ほうきが葉を動かす音が聞こえている。時折、緩やかな風が吹くと、枝先の葉が擦れる音と同時にパラパラと落葉が落ちてくる。落葉が落ちて地面に着くとき、かすかに「パラ」と音がする。感じる程度の音なのだが、自分には「パラ」と聞こえる気がする。

 

落ちた落葉は、少し反り返った樟の葉の形状から、その9割がうつ伏せになる。枝先についている時は光をたくさん浴びようと表を空に向けているのに、落葉した後は「自分は役割を終えました」と言わんばかりに空に背中を向けている。

 

産まれて空に向かって成長し、やがて老い役割を終え土に戻ろうとする姿は、樟も人もよく似ている。幾千幾万の樟の葉が、毎日毎日落ちて来て、そのことを伝えてくれる。空を見上げると新芽、足元には落葉。命の受け渡しが日々、頭のすぐ上で行われている。

下を向いている赤や濃い緑がこれから落ちる葉。上を向いて黄緑色をしているのが若葉。

慎重に、そろりそろりと掻いてみる。