ヤモリからの質問

太宰府滞在6日目。くすかき9日前。今日は1日良い天気に恵まれ、太宰府中の桜が一気に開花したような穏やかな日だった。お宮に書類を提出し、鬼すべ堂の下見をし、あとは再びパソコンで事務作業といった1日だった。

 

滞在先の太宰府天満宮所有レジデンス「山かげ亭」の庭には大きな桜の木がある。太宰府入りした時は幹と枝しか目につかず全くスッキリとした姿だったのだが、気が付かなかっただけで、つぼみは確実に膨らんでいたのだろう。2〜3日前にポツポツと花が咲き出し、それとほぼ同時にウグイスの鳴き声を耳にするようになった。この声に朝起こしてもらうのも毎年の楽しみの1つである。そして、今日はもう8割近く開花したのではないだろうか。明日からまた朝のアラームはさらに賑やかになるだろう。

 

たった数日で、これだけ日常の風景に誰もが気が付く変化をもたらすのだから、植物の生きる力には改めて驚かされる。自分のこの数日と比べると桜の木のドラマティックさに敗北感すら覚えてしまう。春は桜と同じように自分にも訪れているはずである。では、自分の中の何かがちゃんと力を溜めて膨らんで、ここ数日で一気に開花できているのだろうか?うーむ、、、実感はない。

 

自分は生き物である。桜やウグイスのように、もっとちゃんと春であったり季節の変化を、まわりで起きているささやかな変化を感じなければいけない気がする。そもそももっと感じられるポテンシャルはこの身体にあるはずである。というか感じたい。すっかり鈍感な現代人としての自分に悲しくなる。分かりやすい桜の開花やウグイスの声くらいからしか春を発見できていないなんて!

 

温かくなって虫も動き出したのだろう。部屋の壁に白いヤモリがじっとしている。

 

「おれはこれから腹一杯に春の虫を食って生きる。」

「お前はこの世界のこの星のこの島国で生きることをちゃんと楽しめているか?」

 

ヤモリからそんな質問をされている気分になった。

鬼すべ堂の桜もほぼ満開

 

鬼すべ堂と桜と春の空