完成日に感じた新たなはじまりの予感

そらあみ23日目。今日は8人で編んだ。仕上がった2枚の網をつなぎ、等間隔に網の目を広げ、細かいメンテナンスを終えた15時20分。「そらあみ-氷見-」は完成を迎えた。延べ参加人数にして331名の手によって高さ3m×幅30mが編み上がった。

 

最終日に集ったのは、この一ヶ月間の毎日を支え、つないできてくれた面々。一言で言うなら、頼りになる男達。しかも話も上手でユニークな人ばかり。《そらあみ》をきっかけに偶然集った仲間だが、すっかり古くからの友人同士のようになった。

 

完成を迎えた今日は、独特の雰囲気があった。ひとつの大仕事を終えた男衆がまとう、達成感や高揚感や終わりを迎えた寂しさが入り交じったような、なんとも言えない空気感が辺りを包んでいた。皆良い顔をしていた。なんとも良い時間が流れていた。“1目1目が愛おしい”“もっともっと編んでいたかった”誰もそう言葉にはしないが、最後まで網を編む仲間を囲い見守る姿からそんな心境が伝わってくるようだった。

 

五十嵐「昔は氷見の定置網も当然こうして手で編んでいたんですよね?」

 

おいちゃん「そうや。素材は藁やったり麻や綿やったりで、村のみんなで編んどった。そんで、編み上がったら樽に入れてな。柿渋につけたり、コールタールに浸けたりして、痛まんように工夫してな。」

 

別のおいちゃん「昔はここの蔵の前に流れてる川をのぼったところに、今は駐車場になっとる広い場所があるやろ。あそこは“網干場”やったんよ。こう、孟宗竹をいくつも電信柱みたいに組んでな。その上に網を広げて干すんや」

 

また別のおいちゃん「その干した網がトランポリンみたいにボヨンボヨンって跳ねるが楽しくてな、子ども連中はみんな上に登って遊んでは、よう怒られとったわ(笑)。おいらが子どもの頃やから40年〜50年昔の風景やね」

 

五十嵐「面白い風景ですね。アスレチックみたいですもんね。昔は定置網も全部手編みだったんだから、もっと大きなの編んでもいいですよね。おかあちゃんたちも、もっとこうして編んで人が集う場所があったら良いって言ってましたしね」

 

おいちゃん「そしたら“魚々座”の中でしたらいい。こん人らみんな失業せんですむよ(笑)」

 

五十嵐「“魚々座”に世界中の漁師が編みにくるってのも面白いですよね。編み方は世界共通ですしね」

 

おいちゃん「そしたら、氷見に定置網の勉強をしにきてた連中がもう一度来たらいい。インドネシアやらコスタリカやらから来て、2年間こっちで定置網の勉強していったからな。同窓会みたいになるやろ。みんな会えたら嬉しいよ。そいつの面倒見とった漁師だって喜ぶよ。2年も毎日一緒に海に出て仕事しとったんやから」

 

五十嵐「それ面白いですね。氷見の定置網は、外国へ教えに行ったり、外国から教わりに来たりで、世界とつながってますからね。もう何年ぐらいそういった研修はやってるんですか?」

 

おいちゃん「もうかれこれ20年にはなるやろ。卒業生もたくさんおるよ。」

 

なんだか面白いことになってきた。まだまだ氷見での《そらあみ》の物語は続きがありそうである。

 

明後日3月14日に比美乃江公園に、雪吊りで使用した6本の桧丸太を建て《そらあみ》を設置する。そして翌15日にいよいよお披露目である。

 

IMG_6785_s

網を均等に伸ばす姿もなんだか楽しそうです。

 

IMG_6790_s

修復ポイント発見。

 

IMG_6794_s

いよいよ完成間近。

 

IMG_6798_s

毎日の記録もほぼ埋まりました!

 

IMG_6804_s

完成!!!明後日、比美乃江公園に設置して、明々後日にお披露目です。