もうひとりの五十嵐さんと寄り添う

La Mano 3日目。朝9時La Mano到着。今日がいちおう、今回最初に設定した3日間の交流の最終日。両手の爪はすっかり藍色に染まって、まるでマニュキアをしているようだ。昨日、一昨日と同じように、着替えて、掃除をして、ラジオ体操をして、朝の会の出欠がはじまった。

 

今日の出欠確認の担当は、この2日間、一緒に藍染めしてきた井上さんだった。みんな、自分の名前が呼ばれると「はい」と返事をする。すると、最後の最後に「やすあきさん」と井上さん。驚いてとっさに「はい」と自分は答えた。井上さんとは近くで染め作業をしていたけれど、黙々と作業をする静かな人で、この2日間ほとんど言葉を交わすことはなかったので、まさか呼ばれると思っていなかった。なんだか、よく分からないのだが、熱いものがこみ上げてきて、目が潤んでしまった。

 

この3日間を通して振り返ると、「やすあきさん」と自分の名前を呼んでもらえた時が一番うれしい瞬間だったのかもしれない。

 

自分はLa Manoが、ここにいる人たちが、そしてここにいる自分が、すっかり好きになっていることに気がついた。

 

今日はLa Manoで2ヶ月に一度の恒例行事「封入」の日である。全国のLa Manoファンや関係者(その数6000だとか?)に向けて、「2015年冬の染織展DM」、「La Mano通信秋号」、「La Mano友の会事務局だより秋号」を、折って、重ねるように合体させコンパクトにし、封筒に入れる。数が半端でないので、メンバー、スタッフ、ボランティア全員総出で行う。展示販売会直前のクラフト工房ならではの一大イベントである。もちろん自分も一緒にやらせてもらった。

 

6つくらいのテーブルに、6人ずつくらいに分かれ、A4サイズの通信や友の会だよりを半分に折るチーム、半分に折られた2種類を1つに合体させるチーム、合体したものを更に半分に折るチーム、それとDMを合わせて封筒に入れるチーム、といった具合に臨機応変に流れ作業で、最後は封筒に糊を塗って封をするところまで行う。

 

どのテーブルにつくといいのか分からずウロウロしていると、ひとりのスタッフの方が「やすあきさんは、じゃあここで、合体させるのをやってください。これとこれを、こうして、重ねて、、、、」。座って作業をしていると、空いていた左隣の席に、もうひとりの五十嵐さんが座った。メンバーの方で、下の名前は朋之さん。普段はたいていアトリエで絵を描いたり刺繍をしたり主に個人作品の制作をしている。この3日の間に、お昼ご飯などでは一緒になっていたので、比較的、気持ちが不安定になりやすい印象を持っていた。折り込み作業をしていても「もう無理だょ」など、いくつか言葉を発し、下を向いて止まってしまう。

 

どうしていいものか分からず戸惑ったが、自分は手を止めず、しばらく待ってみると朋之さんが再び少しはじめたりする。小さな声で「いいね」「おっけー」と声をかけてみる。しばらくその掛け合いで続くが、再びモゴモゴして小さな声で「もうダメだ」。それに対して小さな声で「だいじょうぶ。だいじょうぶ」と声をかけてみる。こんなことを続けていたら、徐々にリズムが出てきて、折り込み出来たものをお互いに順番に重ねていくようになった。ふと気がつくと、朋之さんの右足が自分の左足に、そっと寄り添っていた。

 

後ろのテーブルのメンバーから「おー!あそこ、五十嵐が2人そろったー!」と声がかかる。笑いがおこり、全体的に盛り上がる。

 

途中、今後のことについて、施設長の高野さんとアトリエ担当の朝比奈さんと打ち合わせをすることになったので、一旦テーブルを離れた。1時間ほどしてもどると、作業内容が変わっており、そこには朋之さんの姿はなかった。どこに行ってしまったのかは分からないが、ひとまず同じ席に座って作業を続けていると、朋之さんがどこかからやってきて自分に寄り添うように、さっきと同じ左隣に座った。「やる?」と声をかけると、再びはじまった。それを見ていたスタッフの方が言う「朋之さん、やすあきさんに寄り添って、気持ちを落ち着かせてる。やっぱりアーティスト同士だから気が合うのかな(笑)」。

 

はじめての体験だった。言葉での対話とは違う方法で、“何かあたたかなもの”を交換した。一緒に作業をして過ごすあいだに交換していたのだ。

 

「封入」はここにいるほぼ全員でやる作業。それぞれに得意不得意はあるが、できることをする。それは、考えてみると、染め・織り・絞りなど、別の建物でそれぞれにできることをして、ひとつの染織品が出来上がる感じとよく似ている。作業場の距離と内容が変わっただけである。ということは、この3日間で自分は「染め」をしていたわけだが、「織り」や「絞り」の人たちとも、その“何かあたたかなもの”を共同の作業を通して交換していたのだろう。だから、対話がほとんどなくても、この3日の間にLa Manoが、好きになったのだろう。

 

このお互いができることを、その人らしく、それぞれにしながら、ゆるやかにそれらをつなぎ、何かあたたかなものを交換して、ひとつの作品が出来上がる感覚。La Manoの染織品には、それが織り込まれている。

 

その関係は、種類と、太さの違う、いろんな藍色のグラデーションに染められた個性的な糸が繋がって、織られていくイメージである。

 

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「織り」は「染め」で作られた糸で織られていく。

 

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なんだかあたたかい場所なのだ。

 

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藍染めされたグラデーションの糸が織られていく。

 

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糸巻き。

 

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ラジオ体操を終えて、朝の会。

 

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La Mano通信と友の会のお知らせを合体。冬の染織展のDMと一緒に郵送します。

 

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La Mano総出で恒例の封入作業。

 

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光が透けると更に発色が良い。

 

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なんだか、なつかしい玄関。

 

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染織させてもらった手ぬぐいが乾きできあがり。