そらあみツアー〈岩黒島〉。人が寄るとうれしい。

沙弥島滞在10日目。今日は岩黒島で〈そらあみツアー〉が開催された。〈そらあみツアー〉は今回初めての試み。今年の作品タイトルは「そらあみ〈島巡り〉」。副題の〈島巡り〉に込めた一つの要素に、このツアーがある。単純な話で、3年前、自分はこの〈そらあみ〉を通して、編むことをきっかけに島の人と出会い、言葉を交わし、島の魅力を知っていった。みんなにもこの体験をしてほしい。そう思ったのがはじまりだった。

 

〈そらあみツアー〉は全5回。与島五島の各島で一回ずつ開催される。一般参加の約20名がバスに乗り、島を訪れ、島の人が先生になり〈そらあみ〉をする。お昼の弁当を一緒に食べ、午後には島の散策時間もある。きっかけがないと、なかなか島に行くことはないし、やることがなければ島の人とそこまで長く時間を共にしてお互いを知ることもない。〈編む〉という行為のコミュニケーション誘発能力を存分に楽しむ機会である。

 

10時に坂出駅をバスが出発。参加者は募集定員いっぱいとなった。結果、関係スタッフを含め島外からは25名、島からは15名が集い、合計40名の盛大なワークショップとなった。島外参加者の内訳は意外にも地元の坂出市からの参加は少なく、一番多かったのは高松市内、次は丸亀市内からで、夫婦や親子での参加が比較的多かった。

 

内容は言うまでもなく、大盛況。穏やかな島時間の流れる中、糸巻きして糸玉を作ったり、編み針に糸を巻いたり、網を編んだり、島の漁師さん、じいちゃん、ばあちゃん、おじちゃん、おばちゃん、お兄さん、お姉さんが先生となり、はじめて網を編む島外の方々と共同作業。互いに質問したり、編み間違いを指摘され笑われたりで、会話も弾み、あちこちで笑いが起きた。ここに流れた時間と、あたたかな雰囲気に包まれた空間が〈そらあみ〉に編み込まれていった。

 

15時に再びバスに乗り込み、島の人に見送られながら出発した。3年前の自分もそうだったように、ツアーに参加して一緒に〈そらあみ〉して、岩黒島に暮らす人たちのことを知った彼らは、これから瀬戸大橋を渡る時、眼下に見える島を見て、今日出会った島の人たちの顔が浮かぶはず。それぞれにとっての特別な島になったに違いない。

 

網針に糸を巻きながら、島のばあちゃんが言っていた一言が印象に残っている。

 

「あたしはね。じいちゃんが死んでから、普段はひとりでおるやろ。せやから、こうしてな、人が寄るのは、やっぱりうれしいわぁ」

 

〈そらあみ〉が生まれるきっかけになった伊豆七島の三宅島。そこには、「おおおじ」と呼ばれる網の大師匠がいた。最後は寝たきりだったのでお見舞いに行くと、寝てるか、起きている時間は飯を食うか、網を編む以外はしていないとのことだった。そんな、網の大師匠である、おおおじが言っていた。

 

「網は人を寄せる…」と。

 

網が寄せた人のにぎわいの中、岩黒島のばあちゃんの話を聞きながら、三宅島のおおおじのことを思い出していた。

 

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島の人と町の人。糸でつながる。

 

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「教えるの意外と楽しいかも」と漁師さん。

 

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大盛況で公民館は人でいっぱいになりました。

 

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子供達の方がむしろ大人より覚えるのが早いかも!

 

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お昼のお弁当を食べながら、島談義。

 

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すっかり打ち解けて、会話が弾む。笑いも弾む。

 

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「人が寄るとやっぱりうれしいのう」とばあちゃんたち。網針に糸を巻いてくれました。

 

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そらあみツアー参加者と岩黒島のみなさんで記念撮影。この笑顔が全てです。いや〜初回にしては出来過ぎなくらいに良い会になりました。島のみなさんと参加者のみなさんに感謝です。