そらあみツアー〈瀬居島〉。瀬居島の重鎮、漁師レジェンド集合。

沙弥島滞在13日目。今日は瀬居島で〈そらあみツアー〉が開催された。島外からは12名(遠くは山梨県からの参加もありました!)、瀬居島からは21名(本人たちは後期高齢者ばっかりや!と自虐的冗談で笑いをとっていまいしたが、瀬居島の漁師レジェンズとも言える島の重鎮たちが集い、最高のメンバーでした)、合計33名が、瀬居島の本浦公民館に集った。今日の〈そらあみ〉ワークショップは、「場づくり」としてのワークショップを重要視する作家として、自分の中で理想とするイメージにほど近い、会心の出来となった。

 

ワークショップ主催者である自分がしたことは、道具の配置と糸くずのゴミ拾いくらいだった。あとは勝手に行われ、そらあみが編まれていった。はじまりの挨拶をすることもなく、誰かが自然と道具を出して、誰かが勝手に編み出す。それに反応して、また誰かが網針に糸を巻く。綛糸を糸玉にする。初めて編むツアー参加者が来ると、島の人が「あんた、教えてやって」と自然と教えはじめる。

 

それは、お祭りの準備をするような、日常の延長にある非日常への自然なプロセスを見ているような美しい時間と空間だった。

 

「昔は〈おう〉言う植物(麻のこと)で、網を編んどってな」と誰かが、昔に網を編んだ話をはじめる。

「そうや。こない網をすくんは(編むんは)、じいさんたちの仕事でな」とまた誰かが答える。

「こないして、みなで寄って網すくんは、70年ぶりや」

「これくらいの目合いはな、鰆(さわら)で、これくらいは鯛(たい)を獲る網やな」なんて会話になる。

「この網針は、昔はみんなそれぞれ漁師が手作りでこさえてな」

「やっぱり網針は竹がええやろ?あれは孟宗竹がええんか?」

「いや、孟宗は肉の厚うていかん。真竹がええ」

「竹を切るんは、9月15日が一番ええ。旧暦の8月15日や。虫が入らんでな」

「そうや、他の時に切ると、竹の中に虫が入って中を食うでな。網針が弱なるんや」

「そんで竹は切って置いとくんや。そんで、葉から枯らしてな。葉から枯さんで幹から枯らすと、また虫が入るでな」

「おう!この網針、ちょっと糸巻きすぎや!これじゃ編みづらくてかなわん。先輩やけど言うとかな(笑)」

「そうや、言うてええぞ(笑)」

 

会話は尽きることなく、網はどんどん編まれていった。

 

この瀬戸内海の島で、海や風といった厳しくも恵み多き自然と向き合い、人と助け合い、命をつないできた、美しい人間の暮らしの背景を垣間見た。

 

かつてブータン王国に行った時に、村人総出で大きな建築物を手作りしていた現場に出会ったのだが、その時の雰囲気と、今日の瀬居島は、とても良く似ていた。村人は自然にそれぞれが自分のできることや役割を見出し、会話をしながら、石を運んだり、土を練ったり、のんびりとつくっていた。中には寝ている人もいた。寝ている人も、ある意味その場をつくっていた。自分は、この時ブータンで見た現場を、ある種の〈場づくり〉であり、〈場の機能のさせかた〉の理想としている。

 

今日の瀬居島にはさすがに寝ている人はいなかったが、それぞれが自分で考え判断し、自分で行動し、その場を楽しむことで、絶妙な塩梅で楽しくも、ほどよく緊張感があり、ゆったりとした空気が流れる場が成立していた。

 

瀬居島で〈そらあみ〉がアートとして機能していた。

 

別れ際、ツアー参加者から島のみなさんにお礼の挨拶。感想を聞くと、一人のツアー参加者の方が「ほんとうにやさしく教えてくれて…」と涙ぐむ瞬間もあった。今日がどんな時間だったのか、これ以上に説明は必要ないだろう。

 

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何もしないで、自然とこの状態になりました。

 

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漁師から町の人へ。

 

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瀬居島のばあちゃんから、愛媛の若者へ。

 

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マンツーマンで教えます。

 

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自ら糸巻き担当組。

 

 

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ほれ。こうしたらええんじゃ。

 

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ここを結ばんと、網にならんやろ(笑)。

 

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レジェンドはコマだとやりづらいそうです。そして足で網を広げて編みます。

 

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本浦公民館。玄関に靴がいっぱいになりました。

 

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〈そらあみツアー〉も島ごとに雰囲気が違う。瀬居島はレジェンドたちの昔話が面白すぎました。

 

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編むのに便利な輪っか状の道具と、オリジナルの網針とコマを寄付してくれました。もはやアンティークです。

 

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最後に記念撮影。なかなか笑顔にならないところがまた漁師さんらしいのかも(笑)

 

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ツアー参加者「ほんとにやさしく教えてくれて…(うるうる)」

漁師「わしがもう少し若かったら嫁にもろうとるで(笑)」

 

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島内散策をしていると、漁師さんがワカメを収穫してきてくれました。〈そらあみツアー〉瀬居島は、お土産に新鮮なワカメ付きとなりました。感謝!