五つの島へ挨拶まわり

沙弥島滞在2日目。「そらあみ〈島巡り〉」の春会期は、与島諸島の5つの島の方々と一緒に漁網を編む。まずは各島の自治会長へ挨拶まわり。

 

この与島五島は元々島ではあるのだが、1978年から1988年にかけて約10年かけて作られた瀬戸大橋によって、ある意味、島でなくなった島とも言える。瀬戸大橋の袂、番の州工業地帯の埋め立てで地続きになった沙弥島と瀬居島。瀬戸大橋の橋脚を支え、結果として橋でつながった与島と岩黒島と櫃石島。

 

故に、各島への挨拶まわりは、船ではなく、車で回る。もちろん3年前の瀬戸内国際芸術祭2013でもそうだったのだが、車で海を越え、島に入っていく感じはなんとも不思議な感覚である。

 

しかし、地続き、橋続きになったとはいえ、やはり土地の持つ力なのか、濃度は違えど、やはりこの各島には島時間と言ったらよいのか、ゆっくりとした時間が流れている。軒先で日向ぼっこする、おばあちゃんたち。ゴロゴロとのどを鳴らして近づいてくる猫たち。港に2〜3人集まって、タバコをふかしながら船を眺めて何やら話しをしている漁師たち。サンゴで飾られた小さな恵比寿神社。漂流物で作られたベンチ。港に浮かぶ小舟。遠くに見える島々。行き交う船。

 

島を歩いていると、海に囲まれた日本という島国で、日本人が豊かに生きることとは、こういうことなのだとある種の普遍性にあらためて気づかされる。

 

さらに面白いのは、すぐ隣の島にも関わらず、5つの島の人の雰囲気というか、性格というか、特徴が違うのだ。挨拶まわりで、いっぺんに5島を回ると、その違いが明らかなのが分かる。

 

漁師らしく荒々しい島。家族のようなあたたかな島。お母さんのようなやさしい島。組織的でクールな島。歴史深く話しが長くなる島。どこも魅力的なのだが、お隣の島なのにこんなに雰囲気に違いが出るのは、やはり海という流動的な存在で、隔てられつつもつながっているという、島ならではの文化形成の特徴なのかもしれない。

 

各島の自治会長とは、3年ぶりの再会となったが、「はじめまして」と「ご無沙汰してます」の違いは大きい。

 

3年ぶりにもどってきた与島五島は、心の中で「ただいま」の言える島になっていました。

 

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3年前、漁師の洗礼を受けた櫃石島(笑)。「おう!何しに来たんや。もう網は編まんで〜」と歓迎される。

 

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櫃石島。漁港と瀬戸大橋。

 

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与島。静かな港。

 

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与島。ばあちゃんたちがひなたぼっこ。

 

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与島にて。今日は節分。婦人会の方々が恵方巻きを手作りして島内一人一人にお届けとのこと。なんともうらやましい!と思っていたら、「食べて行きなさい」とありがたいお言葉が!恵方巻きとっても美味しかったです!ごちそうさまでしたー!

 

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瀬戸大橋。

 

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与島。石切の島の石の上に漂流物の板で出来たベンチ。まさに与島らしいベンチである。

 

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瀬居島にて、自治会長さんたちとご挨拶。最初はやはり緊張します。土地への入り方大事です。

 

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瀬居島にて。こちらにもなんと!というか、やはり!というか恵方巻きが!しかしお腹の中は与島の恵方巻きでパンパン。ひとつだけいただきました!漁師の多い瀬居島の恵方巻きはアナゴ入り!ごちそうさまでした!