TURNフェス1日目。東京都美術館の展示空間で寝る。

東京都美術館4日目。TURNフェス初日。9:30に開館すると、すぐにプレスツアーが行われた。驚くほど大勢の取材関係者がいっぺんにやってきて、若干後ろに仰け反りながら作品解説をする。

 

「この作品タイトルは『New Horizon』。クラフト工房La Manoという施設のみなさんとの交流を通して藍染した糸で、水平線をつくりだしました。来場者の方々が新しい価値観の地平へ飛び込むイメージです。

 

自分自身、就労支援が必要な方や障害を持った方のいる施設と交流するのは初めての経験だったので、最初に施設に飛び込む時は緊張しました。しかし、La Manoには、ずっと喋っている人、ずっと黙っている人、歌を歌っている人などなど、本当にいろんな人がいて、この藍染のグラデーションの色幅ように、人の色幅があり、自分もそのままの自分でいていいんだ。と思えるような、自分にとっては安心感のある居心地の良い場所でした。

 

La Manoでは、自分は最初に名前(呼び名)を与えられました。次にそれぞれに、できることできないこと、得意なこと不得意なことをわかった上で、工房での仕事であり、役割が任せられます。そうして自分の居場所ができていきました。

 

工房では、絞り、染め、織りなど、それぞれのセクションに分かれて仕事をしているのですが、それぞれが緩やかにつながり連動し、質の高い美しい商品が生まれる工房空間には、それぞれの存在が一本の糸でつながっているようなイメージがありました。

 

今回の展示は、人の色幅のような藍のグラデーションと、緩やかにそれぞれの存在をつなぐ糸。La Manoの工房空間の魅力や空気感を、ここに持ってくる試みです。

 

そして、TURNという新しい価値観の地平(水平線)であり、海にみんなが飛び込んでいく。というものです。」

 

、、、、、というプラン説明としての作品解説をしているが、オープンしたてということもあり、自分も含めて、空間が硬い。なんというか、ぎこちないというか、やりたい感じと違う、、、。午前中、サポートスタッフさんと一緒に糸巻きをしてみたりしたが、場があまりイメージ通りには機能していない、、、。

 

12:30すぎ、La Manoのみんなが見に来てくれた。宇佐美くんは迷わず、糸巻き器の机に座って糸巻きをはじめた。この瞬間、展示空間の何かが動きはじめた。

 

他のみんなは、それぞれに楽しんでくれていたようだった。踏み台から海面を眺めて、毎日詩を書く枝松さんは「波のようにねじれてるオーロラのカーテンみたい」。記憶に障害のある杉尾さんは、一緒に染めた糸であることは覚えていないが、この藍の糸でできた海の風景にとても感動してくれていた。平野くんは「潜水気分だよぅ」と最高の感想をくれた。玉置くんはいつもどおりに静かにじっとそこにいた。

 

詳細はLa Manoブログをどうぞ→http://la-mano.seesaa.net/article/434663197.html

 

そして、宇佐美くんが糸を巻き終える頃になると、みんなビーズクッションを使って、一休み。というか、お昼寝。お昼過ぎという、いつもLa Manoが昼食後にそれぞれ昼寝する時間帯と重なったということもあってか、その光景はまさにLa Mano。藍染し、糸を干し、糸を巻き、お昼には昼寝。自分が今回作り出したかった空間である。

 

いつもとはちょっと違うけれど、いつもどおりにふるまってくれる彼らに憧れて、自分も一緒に眠らせてもらった。いつものLa Manoのお昼休憩のように。美術館の展示空間で、ゴロリと横になって眠るのは初めての経験だった。La Manoのみんなから、この空間はこうして使うんだよ(笑)と体現説明してもらっているようだった。ここで作品は完成し、この空気感を3日間つないでいくのが今回の自分の役割となった。

 

施設長の高野さんが言っていた。「メンバーさんにとっては藍糸や糸巻き器など普段見慣れたものがあって、この空間がLa Manoっぽかったから、みんな安心したというのもあると思いますし、やすあきさんとの関係もこれまでの交流でちゃんとできていたから、はじめての場所だったけど、やすあきさんがいて、La Manoの道具があって、お昼というタイミングもあって、あんな風に寝たりできて、安心して過ごせたのだと思います。みんなも、楽しんでいたみたいですし。とても良い機会になりました。ありがとうございます。しかし、藍の糸をこんな風に展示して見せるなんて驚きました。」

 

とてもありがたい言葉だった。

 

14時すぎ、La Manoのみんなを見送る。それぞれに、「さよなら、見に来てくれて、ありがとう」と伝えた。いつも通り、ひと言も言葉を交わさなかった玉置くんが、別れ際、手のひらをこっちに向けて上げた。自然に自分の手のひらを合わせた。

 

やすあきさん「玉置くん。今日は見に来てくれてありがとう。またね。さようなら」

玉置くん「やすあきさん、、、すき、、、」

やすあきさん「ありがとう、、、。」

 

La Manoのみんなが来てくれなかったら、硬いままの空間だっただろう。いつも通りにふるまってくれたLa Manoのみんなに憧れを覚えた。最後に作品空間を完成させてくれたことに、心から感謝している。

 

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オープン当初。空間はまだ硬く、ぎこちない。

 

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La Manoの宇佐美くん登場!迷わず席について、糸巻きをはじめてくれた。

 

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宇佐美くんがいつも通りに糸を巻くと、空間が徐々に動きだす。

 

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徐々に東京都美術館の展示室にLa Manoの空気感が流れ出す。

 

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いつもと違う場所だけど、La Manoにある見慣れた道具と、一緒に染めた藍の糸。

 

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いつもどおりのふるまいをするLa Manoのみんなに憧れを覚えた。

 

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この空間ではこうやって過ごすんだよ〜(笑)と言っているかのようだった。

 

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平野くん「潜水気分だよぅ」

 

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ひと仕事終えた宇佐美くん。くつろぐ。

 

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いつも静かな玉置くん。玉置くんがいると自分は安心する。

 

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La Manoのみんなと一緒に記念写真!!!