ニュージーランドの街中で漁網を編んでみる

カイコウラ8日目。今日から、外に向かって場を開いて〈そらあみ〉を編みはじめた。いわば、ワークショップ初日。手に入れたガジボ(日よけ)とマラエ(マオリの集会場)で染めた糸を持って、カイコウラのメインストリートにある緑の橋のたもとの広場へ。

 

天気は快晴、というか日差しが強すぎる。日陰から出ると肌がジリジリと焼けているのがわかる。ガジボで上手に日陰をつくりながら編みはじめた。編んでいると自ずと周りの環境に身体感覚の焦点が合いはじめる。すぐ横を流れる川のせせらぎが聞こえ、目をやるとカモが懸命に頭を水中に入れて何かを探している。水面上に突き出たお尻が可愛らしい。水中には体長50センチほどのシャケかマスのような魚が泳いでいる姿が見える。その川に架かった緑の橋を渡った先に広がる海から心地よいそよ風が吹いてくる。興味があるのか、海鳥が近くにやってきて〈そらあみ〉のロープを止まり木のようにしてバランスをとっている。遊んでいるのだろうか。なんとも気持ちの良い場所だ。すっかり気に入った。

 

そして、あらためて気づいたのは、ここカイコウラは豊かな海の自然を楽しみにして観光客が来る町ということ。編んでいると「何してるの〜?」といった感じで話しかけてくる。この感じの人はどうやら観光客が多い。ワークショップをしている周りは階段状になっているのだが、仕事の休憩時間といった感じで、しばらくそこに座ってこっちを眺めている人の姿もあった、あれがおそらく地元の人だろう。実はまだ何をしているか説明する看板的なものが用意できていないので、今日参加してくれた旅行中のドイツ人家族からは「私こういうの大好きだから、みんなにわかるように看板を出した方がいい」と言われた。これはすぐに対応しよう。

 

さて、そんなこんなで編み進めていると、一人の観光客女性が近づいてきて、「やってもいい?」とかなり前のめりな感で、その勢いに押されながらも、編み方を簡単に説明すると、次の瞬間すいすいと編みはじめた。え?!なにこの人?

 

話を聞くと、ベトナムから来てニュージーランドの人と結婚していて、今は旅行中。子供の頃、ベトナムで漁師のお祖父さんに教えてもらって、よく漁網を編んでいたのだそうだ。初日からこんな出会いがあるなんて!ぜひ毎日編みに来て欲しかったが、ツアー旅行とのことで、泣く泣く諦めた。

 

〈そらあみ〉をはじめるきっかけになった三宅島の漁師さんが言っていた言葉「網は人を寄せる」。その言葉を思い出した。編んでいると、手伝いに来たり、話しかけて来たり、人が寄ってくるという意味だ。

 

そして、編み方は世界中同じだということを実感できるうれしい初日となった。

 

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今日のカイコウラの朝日。

 

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朝の散歩をして土地勘をつける。

 

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メインストリートの緑橋すぐ横の広場にて場づくり。

 

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クリスティンは編み方を一度伝えると、すぐに覚えてしまった。素晴らしい。

 

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子供の頃、お祖父さんに教えてもらって編んでいたというベトナムの人。

 

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こちらはドイツ人家族で参加。

 

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娘さんもお母さんのやっているのを横でずっと観察していたので覚えよく編んでいました。

 

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カイコウラ在住のスージー。

 

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すぐ横に川が流れています。この川を渡るとすぐ海岸。