くすかき十二日目。指先から学ぶ。

くすかき十二日目。朝のくすかきには大人13名、子供11名の合計24名が集った。再び暖かい朝にもどり落葉も多かった。落葉の赤味がさらに強くなった朝だった。

今日は日中、山かげ亭(会期中の滞在先)で芳樟袋にとりつけるタグの制作を行った。

 

タグは和紙を細長く切り、こよることでひも状にして、形を維持するために糊づけする。これを300個以上制作する。

 

かなり手間と時間のかかる作業である。なんでわざわざこんなことをするのか。業者に発注すればいいのではないだろうか。

 

何事も時間を短縮し効率化を最優先する現代社会からすると、全く逆のことをしているのだが、この作業には、ここでしか得られない発見と時間を体験する豊かさがある。

 

人生の時間には限りがある。その貴重な時間をいかに豊かに過ごすかが、その実感が本人にあるかが、人生を幸せに感じるかどうかの違いとなる。

 

こよりの作業は、最初は難しい。時間もかかるし、なかなか上手く形にならない。でも落ち着いてじっくりと向き合うと、ひとつずつ、ゆっくりだが確実に成長していく。早くなくていいのである。ゆっくり確実にひとつずつ。何度も失敗し、何度も繰り返す。それが一番経験を通じて得るのもが多いやり方だ。手仕事には成果物と技術向上と内面的成長がある。

 

こういった作業をしていると、「昔の武士の内職ってこんな感じだったのだろうかね?ほら、真田家の真田紐とか」なんて話になる。武士の内職は、成果物を売って、お金を得ること以外にも、集中力や落ち着きなど、おそらく精神的な鍛錬とも結びついていたのだと思う。

 

現場サポートに入ってくれているスタッフ(20代)は、和紙をこよる指先の感覚が新鮮だという。それは、スマホやキーボードでは得られない複雑な刺激である。

 

指先から学ぶことがある。

 

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今朝はたくさんの落葉があった。

 

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松葉ほうきをにぎった時のひんやりツルッとしたあの感覚。

 

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葉っぱに触れた時のサラサラしたあの感覚。

 

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枝をにぎった時のゴツゴツしたあの感覚。

 

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縞模様が入ると掻き山はまったく別の存在感を発揮する。

 

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どっしりとそこにある。

 

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遠くてもこの存在感。

 

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落葉の道。

 

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指先から学ぶ。

 

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やればやるほど奥が深い世界。


くすかき十一日目。人も樟も同じ朝を感じている。

くすかき十一日目。朝のくすかきには大人16名、子供15名の合計31名が集った。

今日は日中、山かげ亭(会期中の滞在先)で芳樟袋制作を行った。

 

寒さもいったんおさまり、ほどよい落葉のある朝だった。樟の木は本当に微細な温度の変化を感じているのだと実感する。

 

毎朝、起きて、空気に触れた肌感覚で、どれくらい落ちているかを想像する。

 

暖かい日はたくさんの落ち葉を落とし、寒い日はぴたりと落葉は止まる。時には日が陰り一瞬肌寒くなったなと感じたと思ったら、さっきまでパラパラと落葉していたのに、パタリと落とさなくなったりする。

 

樟は人と同じくらい、いや、それ以上に敏感に気温や環境に反応している。

 

朝のくすかきに集まる人は、「やっぱり朝の天満宮が一番気持ちがいいよね。」と話す。

 

朝の光と、静寂と、ひんやりとした新鮮な空気。細胞が喜んでいるのだと思う。

 

不思議なもので、そんな朝のくすかきにやってくる人はまた、気持ちの良い人ばかり。

 

朝のあの場所がそうさせるのか…。

 

人よりも敏感に環境に反応する樟。あの木々もまた、「やっぱり朝の天満宮が一番気持ちがいいよね。」と

思っているに違いない。

 

そして、樟もきっと、くすかきにやってくる人は気持ちの良い人ばかりだなと感じていることだろう。

 

人と樟、生きる時間は違へども、同じ朝を感じている。

 

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ほどよい落葉のある朝。

 

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樟と人と。

 

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朝のくすかきを終えて、家路につくみんな。これから会社、学校へと向かいます。いってらっしゃい!もしかしたら樟の木もこんな気持ちで眺めているのかもしれない。

 

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縞模様で地面を整え、場が美しくしまり、落葉の見え方もグッと良くなり、しばしのあいだ、みんなで眺めます。

 

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朝の光を浴びた樟が気持ちよさそうにしている。

 

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日中の山かげ亭では、芳樟袋につける こよりづくりをしました。


くすかき十日目。樟脳回収三回目。

くすかき十日目。本日、月曜日はくすかきは定休日なのだが、昨日のくすのこうたきで水蒸気蒸留した樟脳を回収するために朝六時半に来られる人だけ集まった。大人(中学生以上)が7名集った。

 

樟脳は寒い日の方が、収穫量が増える。一昨日に比べ、昨日は日中暖かくなったので、少ない場合の覚悟もしつつ回収タンクの蓋を開けた。

 

「お!思ったより付いてるよ!」

「ほんとだ」

「前にまったく収穫できない時もあったからね」

「そうだね。十分とれてるやん」

 

今年三回目の樟脳回収。めちゃくちゃ寒い日に水蒸気蒸留した二回目の量に比べたら少なかったが、それでも平均的な量は収穫できた。

 

くすのこうたき(水蒸気蒸留で葉っぱから樟脳を抽出する)は、残すところ、今週末の土日の2回となった。再度週末が寒くなることを期待したい。

 

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朝の楼門前。太宰府天満宮は樟の杜の中にある。

 

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水蒸気蒸留装置の回収タンク内。白く見えるのが樟脳です。

 

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今日のようにふわっと結晶化する時もあるし、もっと水分が多い時もある。

 

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通学前の中学生たちに回収してもらいました。

 

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制服姿での樟脳回収は新鮮な風景。ちょっと理科の授業のようでもある(笑)

 

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リヤカー1台の樟葉からコップ一杯分の樟脳。平均並の収穫量です。


くすかき九日目。くすかきのはじまり。

くすかき九日目。今日は日曜日。朝のくすかきには大人18名、子供18名の合計36名。10時からのくすのこうたき(土日のみ)には大人10名、子供8名の合計18名。16時からの夕方のくすかき(土日のみ)には大人12名、子供11名の合計23名が集った。

 

昨日に引き続き、今朝も寒く、地面にはほとんど落葉がなかった。いったん落葉は止まったようだ。これまでは暖かい日が続いたため大量の落葉と向き合う くすかきだったが、今日のように落葉がない場合は、場所を整えることを意識して くすかきをする。

 

場所を整えるということは、樟の葉を掻きながら、松葉ほうきで境内の地面を平らにすることであり、最終的には松葉ほうきを使って地面に縞模様を描くことを意味している。

 

縞模様を描くことで、地面は葉っぱが落ちてくるための場所になるからだ。

 

これは、くすかきをはじめるきっかけになった12年前の話である。あるアートプロジェクトの現地スタッフとして太宰府に滞在していた春の朝、太宰府天満宮の境内へ行くと、神職や巫女の方から管理員さんまでみなさんで樟の葉を掃いていた。

 

なんだか自分もやってみたくなり参加させてもらった。桜吹雪のようにパラパラと樟葉が落ちる朝だった。松葉ほうきを手に落葉を掻くと地面に縞模様が残る。振り返ると、次の瞬間、その縞模様の上には次なる落葉が落ちていた。これでは掃除をしている意味があるのか?次から次へと落ちてくる落葉にそう思った。

 

だが直後、ん!?待てよ、もしかしたら、これは単に掃除をしているのではないのかもしれない!

 

落葉を掻いて縞模様を描くことで、次なる葉っぱが落ちてくる場所を整えているのではないだろうか?それは場をつくるという意味でも創造的な行為なのではないだろうか?

 

更には、太宰府天満宮は1100年以上の歴史があり、ここにある樟の木は樹齢千年以上。ということは1000年以上、こうして樟の葉が落ちてくる場所をつくり続けているということかと思うと、同じように松葉ほうきを持って、千年生きてきた樟の木の下で落葉を掻くと、その行為を通じて、今と昔がつながったような、まるでタイムスリップしたかのような感覚を覚えた。

 

松葉ほうきで樟の葉を掻くことで、千年の時間と空間とを旅するような、この感覚を多くの人に知ってもらいたい。更には共有することはできないだろうか。そう考えて、くすかきははじまった。

 

今朝のように、冷え込んでピリッとした、ほどよい緊張感がある空気の朝、太宰府天満宮は聖地としての存在感が色濃く現れる。日中の観光客に賑わう雰囲気とは全く違う世界がそこにある。

 

そんな千年続く朝の時間が、くすかきをはじめるきっかけだったのだと振り返る。

 

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昨日からの寒さで落葉はいったん止まりました。このあたりは二日前は一面落葉でしたが、今朝は一枚も落ちていません。

 

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普段は手のとどかない根っこの隙間まで今朝は丁寧にくすかきしました。

 

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細かい部分まで丁寧にくすかきすると、想像以上に葉っぱが集まりました。

 

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これは新芽を包んでいる皮です。若葉の芽吹きとともにたくさん落ちてくる芽吹きの証。

 

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石灯篭と鳥居の向こうから朝日が昇ります。

 

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10時〜鬼すべ堂に移動し、くすのこうたき(水蒸気蒸留)です。まずは昨日、樟の葉から抽出した樟脳を回収。春らしい寒さのおかげでたくさんとれました!

 

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樟脳回収は先週に続いて2回目になります。くすのこうたきは会期中の土日10〜15時で全ぶで5回やります。

 

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タンクの内壁についた樟脳を回収。

 

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たくさんとれました!

 

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リヤカー1台分の樟葉からマグカップ1杯分ほどの樟脳がとれます。

 

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16時〜夕方のくすかき(土日のみ)。長崎から参加しに来てくれました!

 

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はじめての参加者にもみんなでやり方を伝えます。


くすかき八日目。寒い朝。

くすかき八日目。朝はグッと冷え込み、思わず布団から出たくないくらい寒かった。暖かかった数日前とは別格の寒さ。まるで冬に戻ったかのようでダウンジャケットを着て外に出た。手袋がしたいくらい寒い。

 

今日は土曜日。朝のくすかきには大人15名、子供15名の合計30名。10時からのくすのこうたき(土日のみ)には大人10名、子供6名の合計16名。16時からの夕方のくすかき(土日のみ)は雨のため中止となった。天候は一日中不安定で、くもりのち雨のち晴れのち雨、途中あられ。といった目まぐるしく変化する一日だった。

 

確か去年もこういう日があった。ある意味、春の通過儀礼とも言える。

 

「今日は寒いねぇ」

「でもこの寒さがくすかきって感じよね」

「ほんと、くすかきらしい寒さだよね。やっぱこうでないと」

「てか、昨日の嵐で落葉の量とんでもないことになっとるね」

「赤い葉っぱが急に増えた」

「今日は寒いから、くすのこうたきで樟脳たくさんとれますね」

「さすが、分かっとるねぇ。寒い方がたくさん樟脳とれるもんね」

 

暖かい日が続いて落ちかけていた葉っぱが昨日の嵐で全部落ちたようだ。落葉の量で言うと、おそらく会期序盤のピークが今日になるだろう。

 

みんなで協力して、大量の落葉と向き合う。みんなで落葉と向き合うのがくすかきらしさ。三寒四温、暖かい日と寒い日があるのが春らしさ。暖かいのが良いけれど、春には寒い日が大事。

 

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春の寒い朝。くすかきして体を動かして温まる。

 

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昨日の春の嵐で大量の落葉。

 

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掻き山がいっきに赤くなりました。

 

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くすのこうたき(水蒸気蒸留で葉っぱから樟脳を抽出します)のため葉っぱをリヤカーに入れて、会場となる鬼すべ堂へ移動。

 

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水蒸気蒸留装置の回収タンクに厚手のビニールで蓋をします。

 

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水蒸気蒸留装置に火入れします。

 

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お昼ご飯休憩中。今日は日中も太陽の光がほとんどなくかなり寒かった。身を寄せ合うと温かい。ご飯を食べてエネルギー補給。

 

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タンクに張った厚手ビニールシートに樟脳が結晶化しはじめました。白く見えるのが樟脳です。

 

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蒸留中、時間ができたら、すぐ裏山へ行って毎年恒例のタケノコ掘り。でかい!

 

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蒸留装置の燃料になる薪割り。薪もすぐ裏山の間引きした倒木を使っています。豊かな環境。


くすかき七日目。春の嵐、雨で中止。

くすかき七日目。今日の朝のくすかきは雨で中止。会期はじまって今年初の中止となった。

 

それでも誰かが来るかもしれないので、6時半に境内へ。

 

「今日はくすかきあるかな?」

「雨だしないやろ」

「こんな朝はゆっくり寝よう」

「でも誰か来てるかな?」

 

雨の朝、いろんな思いがある。

 

ちなみに1人来ました(笑)

 

日中、どんどん風が強くなって、まるで春の嵐のような天候になった。

 

これだけ暖かい日が続いての嵐となったので、明日はきっとかなりの量の落葉があるだろう。

 

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雨だと葉っぱに泥が付いてしまうので、くすかきはできない。

 

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すでに大量の落ち葉。これからもっと落ちるはず。

 

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雨の境内。天神広場。


くすかき六日目。葉っぱのいろんな色。

くすかき六日目。朝のくすかきには大人19名、子供19名の合計38名が集った。今朝も暖かく、たくさんの落葉があった。このまま暖かい春のまま季節が過ぎていくのだろうか?

 

今日は日中、山かげ亭(会期中の滞在先)で芳樟袋制作を行った。

 

芳樟袋とは、(以下、くすかき正式発表)

 

くすかきで集めた1年間の記憶を宿す樟の葉を布で包んだ匂い袋。古くは平安時代から芳香・防虫剤として使われてきました。時間が経っても手で袋を揉むと再び香りが立ち上ります。

 

というもの。太宰府天満宮の案内所や宝物殿で販売したり、くすかき奉加帳という一口2,000円の寄付制度に参加してくださった方へのお礼の品としてお渡しすることで、プロジェクトの活動資金とし、自立した運営を目指している。

 

芳樟袋1つには20枚の樟葉が入っている。適したサイズの葉っぱを一枚一枚選んで入れる。一枚一枚に注目してみると、大きさ、形、色、模様にけっこうな違いがあり、見ていて楽しい。

 

樹齢1500年と言われる境内最年長の大樟(おおくす)の葉は大きくて丸い形をしている。本殿裏手の2本寄り添うように生える夫婦樟(めおとぐす)の葉は細長い。天満宮幼稚園の前の樟の葉は毎年、真っ赤な葉っぱを落とす。といったように、落ち葉を9年間追いかけていると違いが見えてくる。樟は一本一本に個体差があるようなのだ。日当たりの関係もあるのだろうが、落葉のタイミングも微妙に違う。まるで性格すらも違うかのようである。

 

今の時代、情報に代表されるように、何事も早いことが良いこととされる世の中だが、新幹線と徒歩で移動中に見えるものが違うように、早いということは多くのものを見落としているということでもある。

 

ゆっくりと向き合うことで見えてくるものがある。人も樟も同じである。

 

たくさんの情報や物質に溢れる時代だからこそ、それらから自由になり、ほんとうの豊かさを感じて今という時代を生きるためには、物言わぬもの、目には見えないものを感じる力、そういった想像力がこれからさらに必要となるのだろう。

 

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朝6時すぎの風景。樟葉の絨毯。

 

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境内には約100本の樟の木がある。くすかきではこの3本と主に向き合っている。

 

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しゃかしゃか(篩のこと。くすかきでの呼び名)の下に白く見えるのは新芽を包んでいた皮。

 

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協力して枝取りをしています。

 

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枝がたくさん落ち始めました。樟は、葉っぱ→枝→花→実の順でいろんなものを落とします。枝が落ち始めると季節が進んでいる証。

 

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広い天神広場もくすかきしました。

 

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芳樟袋に入れる葉っぱ集めをみんなでしました。面白い葉っぱがあると見せにきてくれます。半分緑で半分赤の葉っぱ。

 

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縁が緑で、中が赤い葉っぱ。

 

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斑模様の葉っぱ。

 

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赤地に緑斑点の葉っぱ。

 

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きれいな色と形です。

 

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葉っぱの山。搔き山も毎日色味が変わります。ここ数日で赤みを帯びてきました。

 

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樟若葉と春の青空。

 

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山かげ亭にて芳樟袋制作。葉っぱを20枚選んで並べます。

 

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20枚の葉っぱを袋に詰めていきます。

 

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芳樟袋の口を刺繍糸を巻いて閉じます。

 

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くすかきのこよりタグをつけて完成です。


くすかき五日目。歴史はつくれる。

くすかき五日目。朝のくすかきには大人21名、子供18名の合計39名が集った。今朝も暖かく、たくさんの落葉があった。それでも、たくさんの落葉に向き合うだけの人出があるので、みんなである程度余裕をもってくすかきをすることができた。

 

「去年は最後の方しか参加できなかったので、今年はもっと参加したいなって思って」そう言って、くすかきに参加してくれている方がいる。

 

旦那さんのお仕事の転勤で東京から太宰府へ、昨年引っ越してきたそうだ。くすかき参加のきっかけは「くすかきかわら版(ポスター型チラシのこと。くすかきでは、人の手から手へ受け渡されていくメディアとなるイメージを込めて、このように呼んでいる)」を見て興味が出たとのことだった。

 

最初はデザインに惹かれて、次にくすかきかわら版の中央に書かれた以下の言葉が胸に響いたそうだ。

 

“千年後の日常を一緒につくってみませんか?”

 

この言葉を見て、はっとしたとのことだった。

 

「これまで、歴史って自分の人生とはある意味関係ないところにあったというか、、、社会の授業で勉強したり、本で知るものだったんですよね。それが、歴史ってつくれるんだって思ったんです。千年以上続くお祭りがあるってことは、千年前にはじめた人がいるってことですよね。そのお祭りにも9年目はあったわけで、そういう意味で言ったら、くすかきはちょうどはじまったところというか、その歴史のはじまりに関われるんだって思ったら、絶対参加したいって思ったんです」

 

くすかきかわら版に書かれた、あの一言からここまで想像してくれたことにも驚いたのだが、やはりそういった部分に面白みを見出す人たちが、くすかきを支えているのだということを再確認した。

 

しかし、くすかきにはやはり面白い感性を持った人たちが集まる。

 

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ほんと、今年の春は暖かい。会期前半で葉っぱが全部落ちてしまいそうな勢い。

 

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地面いっぱいに落葉。

 

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この掻き山のサイズはもはや終盤。

 

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芳樟袋を縫製して持ってきてくれました!今年から地元の方たちに縫製もしてもらっています。いずれは地元のみんなでつくれるものにしていきたいと考えています。

 

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くすかきかわら版。今年の配色は「桜に樟若葉」。題字は、お正月に集まった時に実施した書き初めの中から選ばれたものです。太宰府東小学校の新三年生になる江藤草次くんの“くすかき”です。三つのくすかき紋もみんなで手押ししています。三つ押されているものは、くすかきと関係を育んでいる人の手元に届くようにしています。


くすかき四日目。梅上げからの参加者。

くすかき四日目。朝のくすかきには大人16名、子供15名の合計31名が集った。

 

今年は例年に比べ朝のくすかきの参加者が多い。きっかけは「梅上げ」に参加したことで、これまで出会えていなかった新たな太宰府在住の方たちと出会うことができたからだ。

 

「梅上げ」とは、初老を迎える男性(40歳)が、厄払いとして太宰府天満宮に梅の木を奉納する行事。午前中に太宰府天満宮でお祓いを受け、太宰府市役所裏の中央公民館へ移動。昼食会後の13時頃、そこから、梅の木を曳いた牛、お囃子、厄年の人たち(今年は85名参加)の順で行列を作って出発し、約3.3Km先の太宰府天満宮まで練り歩きます。道中は、沿道の家々や参道店舗から酒やつまみなどの振る舞いをいただき、祝ってもらい、そのお礼として紅白の餅を沿道の人たちに配りながら進みます。最後、太宰府天満宮に到着したら境内に梅を植樹します。

 

3.3Kmの道中、振る舞い酒をしてくださる家や店舗の数がとんでもなく多いので、13時に出発してお宮に到着したのは16時頃。約3時間飲み歩くので、到着する頃にはみんなかなり酔っ払っており、途中酩酊し動けなくなってリヤカーで運ばれる人もいたりする(笑)

 

しかし、不思議なことで参加者85名全員が同級生なので、どこか同窓会のような雰囲気となる。自分は太宰府出身ではないのだけれど、くすかきをきっかけに10年近く太宰府とお付き合いがあったため、同じ歳の友人から誘ってもらい参加させてもらった。お酒の効果もあり、また道中では、くすかきの仲間にもたくさん祝ってもらい、自分が太宰府で育ったような気持ちになるほどだった(笑)

 

参道には普段通りたくさんの参拝者がいる中、同じ道を梅上げ行事参加者は飲み歩き、みんなに祝われ、なんとも言えない、あたたかな高揚感に包まれる。あんな気分で参道を歩いたのはもちろん初めてだった。

 

太宰府という土地、地域から祝福される一生で一度だけの日。平たく言えば酔っ払いだらけの行事とも言えるのだが、それらを祝い、許すことができる太宰府という土地の懐の深さと豊かさをあらためて実感した。

 

ここで知り合った同級生たちや、その子供たちが今年のくすかきには新たに参加してくれている。梅上げをきっかけに同級生に出会って、新しい太宰府の扉が開いた年となった。

 

いやぁ〜、しかし、楽しい行事だった。話を聞くと100年以上続いているとのこと。続く理由は出たら分かる(笑)。

 

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梅上げは3月17日に行われました。午前中に御本殿にてお祓いを受けた後、お神酒をいただいています。

 

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全員が40歳の厄年の男性です。

 

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沿道の家々から振る舞い酒やおつまみをいただきます。歩いていると次から次へと用意して、待っていてくれています。

 

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参道の店舗も一軒ずつ寄っていくような感じなので、なかなか前に進めないのです。

 

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途中、飲み過ぎで動けなくなった人のためにリヤカーが出動しています(笑)

 

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境内に到着する頃には完全に仕上がっております。

 

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記憶が薄れる中、みんなで植樹した梅の木。

 

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こちらは今朝4月3日の朝のくすかきの風景。この中にも梅上げでの出会いをきっかけに参加してくれている方がいます。

 

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暖かい朝が続いており、落葉も多いので掻き山の大きくなるスピードが例年よりも早いです。

 

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四日目にしてすでに存在感が出てきました。

 

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いつもより早い樟若葉の黄緑と巫女さんの袴の朱色のコントラスト。例年だとこの若葉の色味は四月の中旬以降の感じです。

 

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とはいえ、まだ古い葉もあります。光って見えるのが若葉です。

 

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空の色も今年は青くなるのが早い気がします。

 

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日中、山かげ亭では芳樟袋制作中。樟葉を麻袋に詰めています。


くすかき三日目。樟脳回収一回目。

くすかき三日目。本日、月曜日はくすかきは定休日なのだが、昨日のくすのこうたきで水蒸気蒸留した樟脳を回収するために朝六時半に来られる人だけ集まった。

 

さて、今年一発目の樟脳回収。どれくらい収穫できるだろうか、、、。毎年、同じやり方で水蒸気蒸留しても毎回収穫できる樟脳の量は変化する。理由はおそらく気温に関係している。寒い日の方がよく取れるのだ。我々人間は暖かい春を好むが、樟脳づくりには寒い春が大事なのである。

 

ドキドキしながら冷却タンクの蓋をあける。思っていたよりも樟脳の量は少なかったが、まぁ平均的な量は収穫できたのでよしとしよう。

 

しかし今年の春は暖かい。

 

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蓋をあけると爽やかな香りが辺りを包む。樟脳は昔から虫除けとしてタンスなどに入れて、着物に虫が付かないようにするために使われていた。

 

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ドラム缶の内壁に白く結晶化しているのが樟脳。ちょっと少ない印象。天然樟脳は成分含有量の多い幹を水蒸気蒸留するが、くすかきは葉っぱをモチーフにしているので葉っぱから抽出している。幹に比べて葉っぱの方が樟脳の香りが柔らかい印象がある。

 

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ヘラを使って丁寧に収穫します。

 

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ちょっと独特な、いい匂い。年配の方には昔懐かしいタンスの匂いであり、彼ら若い世代には、くすかきの匂い、もしくは春の太宰府の香りとなって記憶されている。

 

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樟脳回収一回目は、まずまずの収穫でした。また来週の土日に水蒸気蒸留します。