土地への挨拶

昨日は深夜遅くまで編み紐を染める作業を行った。染める作業が終わり、再び浅草神社へ移動し、染め終わったばかりの赤と黄色の2色の編み紐を干し、解散。家に着いたのは1時をまわっていた。

 

今日は、染めた編み紐の乾き待ち時間も必要だったので、午後から“そらあみ”スタート。浅草神社に着いて、まず最初にすることは参拝である。いきなり作業開始とはいかず、なんとなくそうなるのだ。「おじゃまします。これからしばらくお世話になります」、、、二礼、、、二拍手、、、一礼。

 

神様には、今まで一度もお会いしたことはない。では、なぜ挨拶をするのか。誰に向かって挨拶をしているのか。そう考えると、土地への挨拶をしているのだと思う。それは土地そのものであり、浅草神社の神主さんや巫女さん達であり、浅草に住む皆さんに対してなのだ。土地は土地であり、土地は人である。これから出会うであろう方々に挨拶しているのだ。その、今はまだ会えていないけれど「お世話になります」という気持を、受け止めてくれるのが、今日の自分にとっての浅草神社であり神様なのである。

 

その浅神社の御祭神として祀られているのが、網で観音様をみつけた漁師の兄弟と物知りな村長さんである。その、お三方への挨拶でもある。「これから自分たちは網を編みます。あなた方が観音様に出会った頃の浅草と、その出会いの感動に想いを馳せ、今を生きる自分たちなりに観音様に出会ってみたいと思います。魚を穫る網ではありませんが、色をいろいろ変えて、土地の風景をつかまえ、網越しに少しだけ違って見えるこの世界とそこに生きる自らを、もう一度見つめなおそうと思っております。よろしくお願いします」土地に入っていく自分のプロジェクトは何かと挨拶をする相手が多い。たくさんの一人一人にちゃんと向き合う必要がある。それが、この仕事をする上での外してはならない礼儀である。

 

昨夜染めた赤と黄色の編み紐は、ばっちり乾いていた。今回、浅草神社の“そらあみ”で使用する編み紐の色は赤・緑・黄・黒・白の全部で5色。そらあみでは、その土地の風景にある色を選ぶようにしている。完成したそらあみ越しに見える風景内にある色に馴染んだり、逆に現れたりする効果を狙うためである。

 

浅草神社境内から見える色としてのイメージは、本殿の赤、屋根や木の緑、金装飾の黄、日陰の黒、雲の白、といったところだ。また、この5つの色は、神道では、赤=火=南、緑(青)=木=東、黄=土=中央、黒=水=北、白=金=西と、万物を構成する5つの要素と方角を意味している。

 

竹にロープをセッティングし、さっそく編みはじめた。暗くなり手元が見えなくなった時点で今日は終了。まだまだ小さい塊でしかない色の束は、とうてい網には見えない。まだ、浅草の人には“そらあみ”の存在が伝わっていない。これから地道に1人ずつ挨拶を交わしていくのみである。

4.5㎏ずつ染めました

まだ竹しかありません

最初の5色