沙弥島滞在7日目。櫃石島でのそらあみワークショップ初日。全体としても5つの島(沙弥島・瀬居島・与島・岩黒島・櫃石島)で行うワークショップの初日となる。サッカー用語に例えて今日のワークショップを一言で言うと、「アウェイの洗礼を受けた」初日となった。そして非常に面白かった。櫃石島、恐るべし!である。
櫃石島は漁港にたくさんの底引き網の船が停泊してあり、島の大きさに対する船の数を見ただけで、たくさんの漁師さんがバリバリ海に出ていることが分かる。20〜30代の若い漁師さんも多いそうだ。どんな人がどれくらい集まってくれるのか分からなかったが、期待は大であった。5つの島の中でも1、2を争う船の多さである。
13時前に櫃石島集会所に到着し、準備を整えていると、次々に人が入ってきた。その都度「よろしくお願いします!」と挨拶し、引き続き準備していると、もう勝手に編みはじめているではないか!
「これでいいんか?」
「色はいつ変えるんじゃ?」
と集合時間の13時半以前に、編みがはじまってしまった。これはすごい流れである。とりあえず13時半に皆さんそろってから挨拶と説明をすることになり、そのまま一時編んでもらっていた。
すると、島内放送も流れ、時間が近づくにつれ漁師さんで集会所は一杯になり、自然に皆が編みはじめたのであった。こんなことは、今まで全国各地でそらあみワークショップを行ってきたが初体験であった。編み方の説明をする前に、というか説明の必要もなく、みんな自然と編みはじめたのだ。
これまで、そらあみの現場には、1人〜2人程度漁師さんがいることはあったが、それ以外の人は一般の方で網を編んだ経験がないので、説明しながら一緒に編める仲間を増やしていくようなやり方であった。ところが今日集まってくれた25名近くの方々はほぼ全員網を編めるのだ。
そうするとワークショップの現場のイニシアティブは当然櫃石島の漁師さんに傾く。ワークショップの現場をサッカーの試合で言うと、ほとんどボールキープをされてしまって、こっちのリズムになかなかならないまま、すごい勢いで編みが編まれていったのである。アルゼンチン代表と試合をした時の日本代表のようである。今日一日で全体の6分の1(10m×4m)くらいは編めたように思う。ただただ驚きである。
若手から年輩まで、ワークショップ参加者は全員が漁師。すごいワークショップである。現場の雰囲気はというと、会話は讃岐弁で、更に坂出市内に住む人たちより、会話のリズムも頭の回転も非常に速く、そこには漁師言葉や冗談もガンガン入ってくる。自分らはその会話について行くので必死であった。
「なんでこんなことせないかんねん。バイト代出るんか?(笑)」
「もっと女子(おなご)を呼ばんとな(笑)」
「次はコンパニオンでも連れてこんとな(笑)」
「昨日も海出とったから全然寝とらんに〜」
「自分の網直したいわ〜」
「嫁と買い物に行きたい〜」
「昼飯も食ってないんに〜」
「あんたらこれで飯くえるんか?」
「おーい。黄色」「こっちは赤くれ〜」(編み針が飛び交う)
「お前は手が遅いの〜」(隣の人の手を見て茶化す)
「けた(こま)なんか使いづらいわ」(手の感覚で目を合わせて編んでいた)
「どこまで編んだらええんや?」
などなどなどなど
と、文句や愚痴も会話も冗談も途切れないし、網を編む手も止まらない。我々、外から来た人間は、なかなかその中に入ろうとしても入れない。翻弄されたまま、あっという間に15時半になり、開始から2時間が経ったところで、1回目の櫃石島でのワークショップを終えた。次回は2月16日(土)。日取りの約束をして解散。
「次はこんなに人は来んで(笑)」
「泡(酒)がいるんちゃうか?」
最後の最後まで櫃石島ペースであった。言葉の真意は分からないことも多かった。でも雰囲気はとてもよいのであった。次回はもう少し、ましな試合(ワークショップのイニシアティブを握る)ができるようにしたい。でも本当にやりがいのある現場である。ここに全力で向かっていけば、自分は次のレベルに成長できる気がする。
ごく自然に編みはじめる
網と会話が時間の中で着実に編まれ延びていく
けた(こま)を使わず、手の感覚で目のサイズを決めて編んでいく
黙々と編む人も、もちろんいる
編むスタイルも十人十色
2時間でこれほど編めるのか