苔の生えたナマケモノのはなし

くすかき12日目。朝のくすかきは雨のため中止。午後からは晴れたので夕方のくすかきは行った。朝と日中の分の葉っぱがあったので、今日はたくさんくすかきした。

 

夕方のくすかきにヒュウくんが来てくれた。初年度から参加してくれており、今年で4年生になる。なので、彼は1年生の時からくすかきを知っている。

 

ヒュウくんは、今年は松葉ほうきづくりから参加してくれた。夕方のくすかきにはサッカーの練習がはじまるギリギリの時間までユニホームを着て、サッカーシューズを履いて、スネ当てもして、くすかきをしてくれている。

 

くすかきしながらの彼との会話は楽しい。最近はことわざが好きらしく、お気に入りのことわざは「豆腐に鎹(かすがい)」である。そして今日、くすかきしながら覚えたことわざは「塵も積もれば山となる」である。そしてオリジナルで「葉っぱも積もれば山となるだね」と言って2人で笑うのであった。

 

そして話は、観察についての話になった。

 

ヒュウくん「ねぇ、五十嵐くん。樟の木に生えてる苔って、木と栄養関係あるの?」

五十嵐「栄養は別だな」

ヒュウくん「じゃあ、何で生えるの?」

五十嵐「樟の木がずっと動かないからかな」

ヒュウくん「五十嵐くん。ナマケモノって知ってる?」

五十嵐「知ってるよ。動物のナマケモノでしょ?」

ヒュウくん「五十嵐くん。苔の生えたナマケモノって知ってる?」

五十嵐「え?!ナマケモノって苔が生えるの?」

ヒュウくん「そうだよ。動かないからね」

五十嵐「うそ?!そうなの?」

ヒュウくん「五十嵐くん。僕ね、動物博士になりたいんだ。それでね、動物を探して世界中を旅するの。苔の生えたナマケモノ見つけたら、五十嵐くんに教えてあげるね」

五十嵐「是非、連絡してほしい。そしたら見に行くよ。“苔の生えたナマケモノ”それだけで本になるね」

ヒュウくん「どんな風に生えるか毎日、日記に書くね」

五十嵐「それを本にしたら、世界中の人が読みたいと思うよ。観察が大事だね。世界中の博士達は観察の名人だからね。観察し続けているから発見がある」

ヒュウくん「苔の博士になるのと、動物の博士になるのとどっちがいいのかな?でも動かないから、まず、見つけるのが一番大変だね。だって木の上とかにいるでしょ。あ!五十嵐くん、今何時?」

五十嵐「ちょと待ってね。えーっと16時42分」

ヒュウくん「やばい!夢中でくすかきしすぎた。僕、サッカー行くね」

五十嵐「うん。いってらっしゃい。サッカー頑張ってね〜」

ヒュウくん「五十嵐くん。またね!」

 

苔の生えたナマケモノ。きっと、この世界のどこかにいる。ヒュウくんからの連絡が楽しみである。観察し続けること。それが発見につながる。そう説明したあとで、もう一度樟の木を見上げた。まだまだ見えていないものがある。そう実感させられた。

葉っぱも積もれば山となる