サンパウロ7日目。7:30PIPAへ。7:40スタッフミーティングに参加。8:00子供たちの受け入れ。着替えたら広場に移動し8:30から一緒に30分のランニング。今日は抜けるような青空に恵まれ、朝から気温も上がったのでみんな半袖で走った。ブラジルの空は高い。気持ちの良い空気の流れる朝だったからか、子供たちはなんとなく落ち着いていたように感じた。
本日のPIPA、自分はここで早退。走って出た汗が額に滲んだまま、9:30すぎに車に乗り込み谷口木工の工場へと約1時間半の移動。どうやらPIPAと谷口木工の位置関係はサンパウロの東の端と西の端らしく、環状線を半周しなければならず、それなりの時間がかかる。
今日の目的は、6日前に発注した組台の試作品が出来上がったというので、さっそくそれを確認することがひとつ。もうひとつは、昨日PIPAにて実験で作成した玉のサンプル(25mの糸、240本を芯に巻きつけたもの)も持っていき、それを参考に木製の大きな玉を作ってもらう発注をすること。
どちらにしても、細かいところまで説明し、イメージを共有することが必要だったので、日本からハンドキャリーでブラジルに持ち込んだ本物の組台(組紐研修でお世話になった龍工房のもの)を持って行き、組紐を実際に組む様子を見てもらい、その理屈と構造を確認してもらった。
谷口さんは、その様子を興味深そうにまじまじと確認し、「このカチッ…カチッ…という組む音も出せるといいね」と言ってくれた。そう。組紐を組む時、糸を巻きつけた玉と玉が当たる時に「カチッ…カチッ…」っと小気味好い音がする。谷口さんは形や機能だけではなく、音まで意識してくれたのだ。大きな組台を作るにあたって、音まで再現できるかどうか正直わからないが、谷口さんの理解の速さと感性の良さに、こっちもテンションが上がった。
「試作品できてるので、見てみますか?」と谷口さんの一言で、別の部屋に案内してもらうと、そこには、おそらく世界初となる組紐の巨大な角台の試作品の姿が!!!しかも、もう一つ、ひと回り大きな別のサイズの鏡(組台の天板部分の呼び名)も用意してくれているではないか!!!
五十嵐「おおー!できてますねー!」
谷口さん「はい。どうですかね?」
五十嵐「いい感じです!」
谷口さん「それはよかった。色とか高さとか幅とか全部変えられますから言ってくださいね」
五十嵐「はい。ありがとうございます!では、ひとまず、組台は玉との関係が重要になるので、これを…」
昨日完成した玉のサンプル(240本の糸25mを巻きつけたもの)を、谷口さんと通訳の高塚さんに持ってもらい組台と合わせてみる。
谷口さん「どうですか?」
五十嵐「うーん…。鏡のサイズはグレーの方かな。あと、ここを少し下げてください。それに、ここはひと回り小さくなりますか?」
谷口さん「はい。できますよ。高さは?」
五十嵐「高さは良さそうです。だいたいこんなもんですかね。」
谷口さん「あと玉ですね。これ試作品の一部、円盤部分です。どうですか?」
五十嵐「そうですね。厚みを半分にして、、、あとは軽くしたいので、、、ここにこうやって穴を開けることはできますか?」
谷口さん「はい。できますよ」
と言うと、頭の回転の速そうな若手従業員を一人呼び寄せて、240本×25mの糸を巻きつけた玉のサンプルを見ながら、何やらいろいろとポルトガル語で指示を出している。若手従業員は細かい寸法などを確認していた。
この時点で13:30を回っていたので、いったん昼食を食べに近くのレストランへ…。
14:30前に谷口木工まで戻ってくると…。なんと!なんと!もうさっき指示出しをした玉が出来上がっているではないか!!!なんという仕事の速さ!!!感動すら覚える。
これまでの自分を振り返ると、良い作品が生まれる時はイメージをすぐ形にできる人(大工さんや建築家)と組むことが多かった。今回は谷口さんということか…。これは良い感じの作品になりそうな流れの匂いがする。
そのままの流れで、その場で玉のサイズやデザイン、組台のデザイン変更をすぐに形にして修正してもらい、組台と玉の試作品が完成(組台の色はグレーから自然な木の色に変更予定)した。
これをPIPAに搬入してもらい実際に使って、修正を加えるか判断し、問題がなければ、そのまま本番の組台を発注する。発注から2〜3日で作れる体制を、スケジュールの確認まで含めた交渉を済ませ、帰路についた。
谷口木工の仕事の速さ、恐るべし!
朝、レジデンスからPIPAに向かう途中にある、お肉屋さんの前にて。プロレス技のような肉の担ぎ方も凄いが、この状態で肉が届くのもすごい。
今朝は日差しがあり暖かい。みんなの調子も良さそう。
ブラジルの空は高い。
組台(角台)と谷口さん。会社スタッフに構造について伝えています。
組台の試作品と玉のサンプルを合わせてイメージ確認。
玉の両側に付ける円盤を薄くできないかスタッフに伝える。
鏡(組台の天板部分)のサイズと色の別サンプル。
玉の図面変更を細かく指示出しする。
滑車も仮で取り付けてみてイメージを詰めていきます。
お昼ご飯を食べて帰ってきたら、なんと!ついさっき指示出しした玉の試作品がもう形になっていました。玉の軽量化と横から糸が見えるようなデザインにしました。
実際に、玉に糸を巻きつけてみるとこんな感じ。
鏡の中心が分かるように穴が欲しいというと、すぐに開けてくれる。仕事が早い。