最後の定置網漁へ出て、比美乃江公園に作品設置

そらあみ24日目。今日は11人のそらあみの仲間とヒミングスタッフなどなど総勢20名近い人が集い比美乃江公園に作品設置を行い、無事に設置を終えた。あとは明日のお披露目イベントの天候が良くなることを祈るのみ。

 

そして今日は土曜日。恒例の大漁鍋をふるまう日。“かぶすにあたる(=分け前をもらう)”ために定置網漁に参加させてもらった。いちおう今回の滞在では最後の定置網漁参加となった。

 

早朝3時半に番屋へ。車のフロントガラスは昨夜の雨が凍っており、エアコンを強にして氷が溶けるまで身を縮めてじっと待った。漁港に着くと水たまりが凍っている。暗闇から漁師さんが現れ両手を擦り合わせながら「うぅ……。冷えるな。寒がもどったな」。

 

番屋で待っていると次々に漁師さんがやってくる。

 

五十嵐「おはようございます。今日も乗らせてもらいます。よろしくお願いします」

年輩漁師「おお。来たか。あんた、土曜日専属やな(笑)」

別の漁師「千葉から来とるんやったよな?あんたいつまで氷見におる?」

五十嵐「はい。千葉から来てます。17日にもどる予定です。なので今回の滞在では今日が最後になります」別の漁師「そうか。網の起こし方もだいぶ覚えてきたやろ。また来いや」

五十嵐「ありがとうございます」

 

半月と星が輝く海へ………。鼻と耳が痛い………。エンジン音は会話を掻き消す。だまって夜空を見上げていた。どこの海へ行ってもたいていの漁師は、特に年輩の漁師は星や山をよく見ている。もともと目印にしていたというのもあるし、何より海上で他に見えるものがないのだ。都市部にいると、一晩中まわりが明るいのもあって、いつしか夜空の星を眺めることなどしなくなっている。星は確かにそこにあるのに、見えていない。見ようとしていない。現代人で星をよく見ている人は天文学者に次いで、もしかしたら漁師なのかもしれない。そんなことを考えていた。

 

定置網に到着し、腕がパンパンになりながらも網を起こす(手で網を引く)のを手伝わせてもらった。ブリのシーズンが終わって、季節の変わり目ということもあり、あまり魚は多くなかったが、人間の頭よりも大きな頭をしたミズダコや、アンコウなどが入っていた。

 

港にもどり、魚を種類と大きさごとに分けて、道具などを片づけて番屋にもどった。水たまりはまだ凍っていた。先週、目刺にしたイワシやイカや餅を焼いて、漁師さん達と一緒に囲炉裏を囲って朝食をいただいた。年輩の漁師さん達にとっては、もちろんこの朝食が仕事終わりの晩酌である。

 

若手漁師「今日も大漁鍋するんですよね。これ、かぶす(分け前)です。アンコウ入っとったんで、持っていってみんなで食べてください」

五十嵐「こんなにでかいアンコウいいんですか?」

若手漁師「今は時期が悪いで、あんまり魚おらんがです。アンコウはエラと胃袋の内容物を取ったら、あとはみんな食えるんで。特に肝(キモ)が旨いんで」

五十嵐「ありがとうございます。みんなでいただきます」

 

お世話になった漁師の皆さんにご挨拶をして、番屋を後にした。定置網漁は、早起きだし、寒いし、身体もきついのだが、網を起こす恊働作業に関わる達成感であったり、星を眺め月を見送り太陽を迎える美しい時間の流れであったり、海での真剣さと番屋でのユニークさのギャップが魅力的な漁師さん達であったり、またこの世界に身を投じさせてもらいたいと思う。

 

そして再び、自分の中に眠っているこの星に生きる野性というか、本能というか、身体の奥深くに刻まれた海のDNAのようなものを刺激したい。

 

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かぶすでアンコウにあたりました。赤いのはホウボウ。

 

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雪吊りで使う桧丸太を立てる。柱を立てると祭の準備のようです。

 

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最後のメンテナンス。

 

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準備万端。。あとは天候を祈るのみ。

 

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海風で冷えた身体をアンコウ鍋で温めます。

 

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夜空の下で漁に出て、朝まで海にいたアンコウのかぶすにあたり、それを鍋にして、一緒に仕事をした仲間と食べる。とんでもなく旨いんです。ちゃんとこの星に生きていると感じられる時間です。