Cerrito Azul交流17日目。Cerrito Azulで「小さい糸巻き」を行い、その後、アンデス染織専門家の有紀さんのアトリエに移動し、コチニールで糸を赤く染色した。
1519年、新大陸の地に降り立ったスペインの征服者たちは、市場を埋め尽くす鮮やかな赤に目を奪われた。光り輝く色彩はまさに生命の炎であり、魂を揺さぶる情熱の色。これこそヨーロッパの人々が、そして彼らの王が権威の象徴として求めた完璧な赤だった。
この色をヨーロッパに持ち込めば巨額の利益を生む—–スペイン人たちは製法から原料・産地にいたるまでを国家機密とし、完全なる秘密主義を貫いた。そのため18世紀まで原料の正体すら明らかにならず、イギリス、オランダ、フランスなど各国は躍起になってスペインの輸送船団を襲撃させ、新大陸にスパイを放った。市民のなかには正体をめぐって全財産を賭けた大博打に出る者まで現れた。
はたしてその正体は、植物の根? 種? 花? それとも動物の糞か、虫か? 国家も民衆も翻弄し、ヨーロッパ全土を競争へと駆り立てたその染料の名はグラナ。現在ではコチニールとして知られ、身近な食品や自然派化粧品などに使われている。
<完璧な赤(エイミー・B・グリーンフィールド、佐藤桂[訳])>という本には、コチニールはこのように紹介されている。
結論から言うと、サボテンにつく虫で赤く染めるのだ。緑のサボテンにつく虫が赤い染料になるのが不思議で、染めの先生のオスカルに聞いたが、自然のものだからね、、、、と言っていた。
今日は狙っていた色よりも赤味が弱かったが、これはこれで非常に美しい色。赤味の違いが何故出るのかをオスカルに聞くと、コチニールの産地によって赤味が違うのだそうだ。天然染料ならではの理由である。
ちなみにペルーでは、今もコチニールは宝石と同じように扱われていて、原石屋と呼ばれる宝石の原石を扱うお店が「金・銀・コチニール」という看板を掲げているのだそうだ。
コチニールの赤という色はスペイン人に発見されるずっと前から変わっていないが、その価値観やモノの見方は変わっていく。いつの時代も価値に翻弄されるのは常に人。赤は赤のまま。虫は虫のまま。
今の時代の価値あるものも、過去や未来からしたら理解しがたいものばかりだろう。身の回りにある、自分の中で疑う余地のない、あたり前に価値化された存在こそ、最も疑うべき価値である。
今の時代、何も持たずに生きるということが最も自由になれる方法なのだが、それが怖くてできないという不自由さの中にいる。
コチニールの赤い色を染めながらそんなことを考えていた。
アトリエにあったコチニール染めのレシピ本。イラストのような形をした5mmくらいの虫です。
同じレシピ本にあったサボテンからコチニールを収穫するイラスト。
染めの先生オスカル。
レモンを入れたり、煮込んだりして、なんだか料理をしているみたいです。
3つのトーンに染めました。美しい色です。