氷見の嫁入りにはブリが要る

11日目。今日は10人で編んだ。小雨がぱらつき寒さが戻り、静かな1日だった。明日は雪だという。

 

「三寒四温ちゅうてな、、、こん時期はな、温こうなったり寒うなったりをくり返して春になる」そんな言葉が、おじちゃんから聞こえてきた。

 

数日前、富山県にも春一番が吹き、ここ数日すっかり温かくなり、「もう春だね」「このまま温かくなるのかね?」なんて会話を若い世代はしていたのだが、どうやらそうはいかないようだ。

 

網を編みながら、氷見の嫁入りの話になった。

 

氷見では結婚する時に、お嫁さんの家から、お婿さんの家へとブリを持っていくそうだ。ブリである理由は高価であることはもちろんだが、出世魚であるということが重要で、お婿さんの出世を願い、めでたい出世魚としてブリを送るそうだ。

 

ブリの出世の順番は、富山県では、モジャコから、当歳魚のツバイソ ・ コズクラ ・ フクラギ、そしてガンド(1歳魚)、ニマイヅル(2歳魚)、 ブリ(3歳魚)へと成長。それからサンカブリ(4歳魚)、オオブリ(5歳魚)と呼ぶとのこと。

 

3〜5月に九州付近で産卵。富山湾では8月頃から全長20㎝たらずのツバイソ、冬にかけてフクラギ、ガンドがとれ、12月〜2月にブリ漁の最盛期となる。

 

関東ではワカシ(15㎝) → イナダ(40㎝) → ワラサ(60㎝) → ブリ(90㎝以上)と呼ぶそうだ。富山に比べ呼び名はずいぶん少ない。

 

富山にブリの呼び名が成長段階に分けて細かくたくさんあるのは、やはり、違いを感じる観察力が必要となるほどに、生活に密着した魚であったという証だろう。

 

ちなみにこの話をしてくれた女性は、石川県の能登半島から氷見に嫁入りして40年という方で、ご本人は氷見出身ではないので、当時はブリの話を知らず、お米を持って嫁入りしたとのことでした。なので、お婿さんの出世具合は分かりません。

 

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40目の長さまで編み終わったものは上にぶら下げました。

 

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現役の船頭から網針への糸の仕込み方を学ぶ風景。