沙弥島滞在23日目。岩黒島の〈そらあみ〉は完成間近。明日も集まって完成させることになった。岩黒島はアットホームな島。この島で〈そらあみ〉をしていると大きな家族の中にいるような感覚になる。
「いくろはええとこやろ。みんな家族みたいやろ」と、おばあちゃんが言う。〈いくろ〉は岩黒のこと。
「いくろの味を忘れんでな」と、お母ちゃんが言う。〈いくろの味〉は茶粥(ちゃがゆ)のこと。茶粥は岩黒島で昔から食べられてきた。碁石茶(ごいしちゃ)で米や芋やそら豆と一緒に炊いたお粥。昔は米が貴重だったから、芋や豆で量増しした。島の人曰く、喉の上までお腹いっぱい食べられるそうだ。
その茶粥を岩黒島で3年ぶりにいただいた。そう。お昼ご飯を用意してくださったのだ!
「みんなでたべると美味しいの」と、おばあちゃんが言う。ほんとうにその通りで、みんなで食べると美味しい。茶粥はたいてい羽釜で炊く。当然一人分なんてことはない。
「あんたおかわりは?」
「はい。いただきます!」
「若いんやからまだ入るやろ?」
「じゃあ、あと一杯だけ」
こうして、茶粥を3杯、腹いっぱい、いや、喉の上までいただいた。
そらあみの向こう側にはこんな景色が広がっている。
羽釜から茶粥を茶碗いっぱいに盛る。
みんなで食べると、ほんとうに美味しい。
岩黒島の味。茶粥、タイラギ貝、ニシ貝。貝類は言うまでもなく獲れたて新鮮で絶品です。
一緒に食事をすると、当然会話も弾みます。
糸を玉に巻く。糸を網針に巻く。穏やかな美しい風景。
完成まであと少し。