くすかき二十二日目「くすのかきあげ」

くすかき二十二日目。くすかき最終日。早朝6時半、境内に51名の掻き手が集い、朝の美しい光と静寂の中、平成二十九年「くすのかきあげ」を無事に奉納することができました。

 

朝5時、天神広場集合。空に三日月。まだ暗い中、月明かりをたよりに皆で落ち葉を移動させる。6時半に掻き手全員が集合し、各当番長と流れを発表し、組み分け。7時〈くすのかきあげ〉開始。9時〈くすかき奉告祭〉催行。天神広場で記念撮影をして、女性陣は山かげ亭にて直会準備。男性陣は落葉と柵の撤去。12時半〈直会〉開始。15時半各賞の発表。17時半平成二十九年記録映像鑑賞。18時中締め。その後、深夜まで直会は大盛況。一次会は大人28名、子供20名。二次会は大人25名。述べ人数にして73名が集いました。

 

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今年の〈くすかき〉を一言で振り返るのなら「参加者から当事者へ」。地元から参加してくださっている方々の意識の変化を強く実感した節目の年となった。これは、千年続くアートプロジェクトを目指し、今年1,000分の8年目を迎えた住民参画型プロジェクトにとって、とても大きな出来事である。

 

きっかけは2つある。ひとつは、五十嵐が南極ビエンナーレ参加のため事前準備段階で太宰府入りできなかったこと。もうひとつは、これまで八年間くすかきを支えてきてくれたスタッフが現場から離れたこと。

 

南極ビエンナーレからの招待が届いた時には、すでにくすかきの会期は決まっていた。事前準備も含め、実施に不備が発生するのなら南極行きも潔く諦めるつもりでいた。その後、会期を一週間ほど後ろへずらすことができないか、これまで一緒にくすかきをつくってきたお宮の方々や地元太宰府の方々に相談した。

 

ひとりの神職の方の話が印象に残っている。

 

「太宰府のみんなは南極へ行って成長してこいって言ってくれるよ。でも、樟の木は五十嵐を待ってくれないよ。落葉は待ってくれない。くすかきが大事にしていることはそういうことだろう?五十嵐の都合で会期をずらすんじゃなくて、樟のタイミングに合わせるべきなんじゃないか?事前準備の内容を伝えておけば、くすかきのみんながちゃんとやってくれるよ。これまで一緒にやってきたんだから」

 

ひとりの地元太宰府の方の話が印象に残っている。

 

「千年続けるのだから、メインの人が入れ替わる年もあるし、五十嵐くんが来られない年も、この先あるよね。それでも続くかどうか、、、。そういった意味では、今年はいい機会なんじゃないの?」

 

言葉は違えど、他のみんなも同じ方向性の意見だった。くすかきの本質である、“樟と向き合う千年の時間”を共有できていることに感動すると共に、深い感謝の気持ちでいっぱいになった。

 

こうして、これまでに育まれた関係性があったからこそ、南極行きを決断することができた。そして、南極から成田経由で太宰府に直行し、頼もしい仲間の元にもどってきたのが開催前夜の3月31日。事前準備は地元を中心としたくすかきの仲間が集い無事行われていた。また、会期中、これまで現場スタッフが担ってくれていた様々な仕事も、みんなの力が結集し、なんとか成し遂げることができた。

 

「樟の木は待ってくれない」の言葉は本当にその通りで、会期を変えずに実施した結果、今年の落葉のタイミングは、くすかき会期とどんぴしゃり。会期のはじまりに合わせて樟の葉は落ちはじめた。故に例年に比べ今年は特に落葉と向き合った印象が強い年となった。

 

今年のくすかきは樟の落葉としっかりと向き合い、準備から細かな制作まで、みんなでつくりあげた印象が強く、これまでとはまた違った達成感と、これからより一層互いの意見を交わしながら、くすかきを共につくりあげていく可能性を感じた。ひとつ段階レベルが変わった感じがした。

 

また、南極からの直接の太宰府入りで感じたことがある。

 

世界中のアーティスト・科学者・哲学者、約百人が一つの船に集った南極航海は、青い氷と、うねる海と、冷たい風に閉ざされた、美しくも厳しい、人を寄せ付けない世界だった。ネットも電話もつながらず、人が自然と向き合い、人が人と向き合う時間には、身体に秘められた可能性と、この星で豊かに生きる普遍性があった。

 

そして、子午線、すなわち世界の時間が一点に集まる南極で、自身のプロジェクトを通じて時間について考えていた。そこで見出したものは、時間とは誰かが定めた約束事ではなく、ひとりひとりが刻む生命そのものなのだということだった。

 

それと同じものがくすかきにはある。

 

早朝顔を合わせ、松葉ほうきを手に、千年の時をつなぐ樟の杜が迎えた、たった一度の今年の春と向き合い。大人も子供も関係なく一年ぶりに再会し、お互いの成長に向き合う。毎春、向き合うことで重ねてきた関係性があるから、自分の今を確認することができる。それは自分の生命の刻を実感することでもある。

 

人が自然と向き合い、人が人と向き合い、それらのあいだに確実に存在する何か目に見えない大切なものを感じ、それらを表現し伝えることにより、はじめて生まれるものがある。

 

くすのかきあげは、落葉風景をつくり出し、そこからかつて存在した千年樟を想像する。目には見えないものを感じるための一連した所作である。それは、太宰府天満宮という神社で、目には見えない神様を感じることとよく似ている。一年に一度だけおとずれる或る朝に、それぞれに感じる千年樟とは、自身の生命を感じることなのかもしれない。

 

今年という年も、今日という日も、生きているあいだに最初で最期。今年の樟の杜に集った人と、そこに想いを馳せた人によって、平成二十九年、今年も見事な千年樟が描き出されました。今年も良いくすかきでした!また来年、樟の葉が落ち若葉が芽吹く頃、太宰府天満宮の樟の杜で会いましょう!!!お疲れ様でした!!!

 

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第八回「くすかき-太宰府天満宮-」

[会期]平成二十九年 四月一日[土]〜二十二日[土]

[会場]太宰府天満宮 境内

[行事]くすかき成功祈願祭・松葉ほうきつくり:会期初日 四月一日 開催

日々のくすかき:期間中 早朝六時半より 土日のみ夕方四時からも 開催

くすのこうたき:期間中 毎週土日 開催

くすのかきあげ・くすかき奉告祭:会期最終日 四月二十二日 開催

[参加人数]六百五十七 名

[奉加帳賛同者]百二 名

 

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くすのかきあげ各当番長

[掻き出し]五十嵐靖晃

[水当番]陽山英樹 天賀來星

[新芽当番]子供達(当番長)江藤幹太

[当番長]佐藤信二 江藤応樹 大里武史 上村隆一郎 井原功介

[副当番長]陽山英樹 米湊五郎 犬塚和洋 天賀來星 米湊咲希

[舟当番]杉本八海

[ほうき当番]宮本市郎 陽山英樹

[太鼓当番]五十嵐靖晃

 

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[特別協力]太宰府天満宮

[協力]中川政七商店/福田屋染物店/株式会社ムーンスター/油機エンジニアリング株式会社/ありがとう農園

[制作]飯高左智江

[写真]前田景

[映像]仲信達也

[デジタルアーカイブ]須之内元洋

[デザイン]河村美季

[マネージメント]米津いつか

[SpecialThanks]猪股春香/百花堂

[松葉ほうきつくり]原口葵

 

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最後に、静岡から毎年参加してくれている、友人からのメールを一部紹介します。

 

 

こんにちは。くすかきでお世話になりました◯◯です。昨日の夜、無事に静岡に帰りました。

 

改めまして、19日からの5日間、大変お世話になりました。

太宰府でもお話ししましたが、この時期に太宰府に行ってくすかきをすること・五十嵐さんや太宰府のみなさんとお会いして話すこと は、わたしにとってとても意味のある大切なことになっているなぁと改めて実感しています。気持ちのリセットができました。

 

また、今年のくすかきは、自分にとっては「成長した自分を見てもらう年」だったような気がします。

去年 太宰府にいたときにはできなかったこと・太宰府で初めて覚えたことをこの1年できちんとできるようになったよ、と みなさんに報告できる!と自信を持って行き、みなさんからも「がんばったね」と言っていただけたからです。

それでもまだまだできないことはたくさんあるし、今年学んだこともたくさんあります。

それらは、また次の4月までの1年できちんと身につけて、再び太宰府で報告できるようにしたいです。

 

それから、今年はとりわけ子供たちの成長を実感しました。

身長や喋り方やくすかき中の動き方など、人によって様々でしたが、どの子たちもみんな「成長したなあ」と感じました。当たり前なのかもしれませんが、みんな大きくなっているんですね。

 

来年も必ず くすかきに参加するために太宰府に行きます。

そのときには、どうぞよろしくお願いいたします。

本当にありがとうございました。

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年齢や性別に関係なく、くすかきが関わる人にとって成長の舞台となっていると実感できるメールでした。樟の木の落葉は待ってくれない。自身が刻む生命の時間も待ってくれない。来年また成長した自分を見てもらいに、そして、これまでの自分と今の自分、そして、これから自分を確認するために、みんなに会いに、樟の葉が落ち若葉が芽吹く頃に、太宰府天満宮の樟の杜に向かいます。

 

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早朝5時。まだ暗い中、3週間集めた樟の落ち葉を移動させます。

 

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天神広場のこの場所に平成6年(1994年)まで、千年樟が実在しました。

 

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千年樟跡を掻き出した後、新芽当番のこどもたちが、昨日までの落ち葉の上に、今朝採れた葉っぱを落とし、本日4月22日の朝の落葉風景をつくり出します。

 

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水当番が場を清めます。

 

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集った掻き手51名で、松葉ほうきを使って根っこを掻き出します。

 

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柵内へ入る時、出る時は千年樟跡に一礼します。一礼は存在を示す大切な所作。

 

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芳樟袋(今年の樟葉の入った匂い袋)と樟香舟(今年の樟葉から採れた樟脳)を小さな松葉ほうきに乗せて、こどもたちが今年の樟の香をみなさんにお届けします。

 

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舟当番の持つ大樟香舟にすべての香りを集めます。

 

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落葉→根っこ→幹(掻き山)と生命の流れを辿って姿を変えた千年樟。最後は天に向かって香りを届けます。

 

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舟当番の手によって大樟香舟が無事に掻き山に乗り、香りが天に届けられました。舟当番はその年のくすかき期間で、まるで樟若葉のように大きく芽吹いた人に委ねられます。今年は満場一致で杉本八海が選ばれました。棒の扱いと所作がまるで剣道のようで美しかった。

 

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直会開始。前日から料理の仕込みをしてくださった女性陣をはじめ、協力してこの場をつくりあげたみなさんに感謝!!!恒例となった餃子、豚汁、おにぎり。最高に美味しかったです!!!

 

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奉加帳(一口2000円の寄付)をしてくれた方に芳樟袋と樟香舟とお礼の手紙をお渡しします。香をじっくり堪能中。床の間の上の包み紙は、くすかき賞の賞品です!

 

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くすかき賞はこの参加カードの集計で決まります。今年は全員の参加回数をランキング形式で発表。一等賞は全26回中、なんと25回の参加でした!

 

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朝5時から動いてますので、、、。毎年恒例となった直会風景のひとつです。

 

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春の青空と燃えるような樟若葉。

 

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境内の空気が変わりました。

 

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毎年、くすのかきあげが終わると、空の色、陽の光、樟若葉、半袖になった腕から、季節が変わったことを実感します。ダウンを着て白い息を吐いて会期がはじまり、半袖で終わる3週間。

 

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直会翌日の山かげ亭にて。くすかき奉加帳に参加してくださった全国のみなさまにお礼のセット(芳樟袋と樟香舟とお手紙)を発送する作業をしています。

 

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これが今年のくすかき参加カード。デザイン(米湊咲希):松葉ほうきに樟の葉が参加した分、一枚ずつ増えていきます。首から下げられるように紐もついています。大人気で50枚作っても足りず増作してくれました。

 

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熱があるうちに言葉にして、来年につなげようと、くすのかきあげの三日後に行われた反省会。このタイミングで開かれたのは初めてです。参加者から当事者への意識の変化を感じる一幕でした。

 

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太宰府を離れる朝。偶然にも登校する掻き手と遭遇。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

「いってらっしゃい」

「いってきます」


くすかき二十一日目「くすのかきあげ前夜」

くすかき二十一日目。6:30〜朝のくすかきは大人15名、子供8名、合計23名の参加。昨日に引き続き今朝も空気がひんやりとして凛とした朝だった。まずまずの落葉。今年の朝のくすかきは今日が最後。最後はみんなで天神広場の場を整えて終了を迎えた。

 

直会の食材買い出しと仕込み。柵の設置。くすかき賞の準備などなど、最終日のくすのかきあげに向けて、モノ、コト、ヒトを整える。

 

愛知や東京や福岡各地から、明日のくすのかきあげに向けて人が太宰府に集ってきている。

 

明日いよいよ一年に一度、かつて存在した千年樟を、落葉風景から想い描く朝がくる。

 

今年はどんな「くすのかきあげ」になるのか、一生涯で明日しか見れない光景に胸が高鳴る。

 

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去年の自分と今年の自分。昨日の自分と今日の自分。同じようで違う自分。

 

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掻き山周辺に良い緊張感が漂っています。

 

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天神広場の場を整える。

 

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柵設置も無事に完了。この中心にかつて千年樟が実在した。

 

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直会に向けて食材の仕込み中。すでに美味しそうです!楽しみ!

 

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くすかき参加カードの賞品準備中。刺繍糸のリボンが可愛らしい。中身は最高に素敵な何かが詰まってます。


くすかき二十日目「人が集う力。人が想う力」

くすかき二十日目。6:30〜朝のくすかきは大人16名、子供9名、合計25名の参加。空気がひんやりとして凛とした朝。落葉は落ち着いていた。

 

誰かが言う「掻き山はもうこれ以上は高くはならんちゃないと?」

 

最初、掻き山は標高30センチもなかったが、三週間かけて毎朝落ち葉を足して、ここまで大きくなった。標高130センチくらいになっただろうか。ここ数日は、上へ上へと葉を乗せるがサラサラと斜面を流れていく。横へは広がるが高さを出そうとすると、重力と葉っぱの摩擦の関係で、もしかしたら樟の落葉で山をつくったら、これくらいが限界なのかもしれない。とても一人ではここまで大きな葉っぱの山はつくれない。

 

9:00〜12:00は、鬼すべ堂で水蒸気蒸留装置の解体と磨きを行った。今年は安定して樟脳を収穫することができた。蒸留装置の管を外し、窯を解体し、装置を磨く。ドラム缶を磨く。窯の穴を埋める。煙突のススをとる。道具も磨く。元あった鬼すべ堂の姿に戻るには、すべてのものを磨く。最後は地面も磨くように整えて完了。とても一人の力ではここまで短時間で成し得ない。

 

14:00〜17:00は、山かげ亭で、くすかき奉加帳(一口2000円の寄付制度)のお礼の品である芳樟袋と樟香舟の制作を行った。芳樟袋は、麻袋に樟葉を入れて、刺繍糸で口を閉じ、タグを結びつける。樟香舟は樟脳の粉を薬包紙に包んで、箱型に折った紙にパッケージする。たくさんの方の寄付で成立している くすかきは、たくさんの人へと感謝の気持ちを、太宰府の春の香りに乗せて届けるお礼の品が必要となる。たくさんの人が一緒に作ってくれ、本日やっと目標としていた制作数の完了を迎えた。今日は多くの人が集ってくれたおかげでいっきに完成を迎えることができた。

 

19:30〜23:00は、山かげ亭で、くす鍋会を行った。明後日くすかき最終日に行われる「くすのかきあげ」の当番長を決めと、当日の流れを決める会議をして、その後鍋を囲むのが目的。くすかきは中学生以上は大人として扱う。今年の会議には3人の中学生の姿があり、彼らの意見ももちろん反映され、くすのかきあげの骨組みが出来あがった。みんなが集うから出てくるアイデアがある。

 

掻き山、蒸留装置解体、芳樟袋と樟香舟制作、くす鍋会。少しずつ人が入れ替わりながら、それぞれに完成を迎えていった。多くの人の手と想いで、このくすかきが成立しているということを感じた日となった。

 

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樟の葉の色が三週間前とまったく違う。

 

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これが最大サイズ?

 

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水蒸気蒸留装置を磨きます。

 

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羽釜に溜まった樟の葉エキス。

 

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芳樟袋と樟香舟をみんなで制作中です。

 

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タグを結びつけます。

 

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薬包紙に包んだ樟脳を、折り紙して作った紙のパッケージに封入します。

 

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完成!!!

 

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くす鍋会の様子。


くすかき十九日目「枝の知らせ」

くすかき十九日目。6:30〜朝のくすかきは大人15名、子供5名、合計20名の参加。今朝は落ち葉よりも枝が目立った。樟の木は、葉→枝→花→実の順番で落とす。ゆえに枝が落ちはじめると、落葉が終わることを意味する。それは、くすかきの会期の終わりを告げることでもある。

 

いよいよ明後日4月22日(土)は、くすかき会期最終日にして、最大の催し「くすのかきあげ」が行われる。それは、約一ヶ月かけて集めた樟の葉を使って、かつて天神広場に実在した樟の木が落ち葉を落とした風景を想像しながらつくり、その「落葉風景はあるけれど、木がない」状況から、毎年一本の樟の木を想像してみようというもの。

 

去年のくすのかきあげでは、ある父親は息子に対して「今しか見られんけん、よう見とき」といった言葉をかけたり、実際にかつて存在した千年樟を知っているおばあちゃんが、孫に向かって「この木はね…」といった感じで、今はそこにない、その木を語り継いでいる光景に出会った。8年続けてきたことで、見えないものを感じ、かつての姿を思い起こす人が出てきている。

 

一年に一度だけ訪れる、ある朝に、一本の樟の木の存在を思い出し感じてみる。それは見えない神様という存在を感じることとよく似ている。

 

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枝がたくさん落ちはじめました。

 

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7:00すぎ境内に朝日が差し込みます。

 

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日中は山かげ亭にて芳樟袋と樟香舟を制作中。子供たちの成長や未来のくすかきについて話は盛り上がる。

 

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頼もしい仲間たち


くすかき十八日目「白樟の杜」

くすかき十八日目。6:30〜朝のくすかきは大人14名、子供8名、合計22名の参加。昨日の月曜日が大雨だったため、大量の落葉が広がっていた。誰かが言う「今年はほんとに落葉が多い。落葉に向き合う年やね」。

 

日中は、山かげ亭にて、くすかき奉加帳(一口、2000円の寄付制度)のお礼の品である、芳樟袋と樟香舟の制作を行っている。

 

先日の日曜日で、全てのくすのこうたき(樟の落葉から樟脳を水蒸気蒸留して抽出する)を終えたので、今日から昇華(樟脳から不純物を取り除く)を行っている。昇華ではくすのこうたきで採れた樟脳に熱を加えて、不純物を取り残すように樟脳を再結晶化させる。

 

その時、白樟の杜が現れる。

 

とても不思議なことなのだが、再結晶化した樟脳はまるで、木々や葉っぱの葉脈のような形をしている。そこにはまるで樟の杜の一枚の葉っぱであった頃の記憶が確実にあるように見える。

 

山かげ亭は、樟脳の爽やかな春の香りに包まれている。この樟脳の結晶は樟香舟となって、くすかき奉加帳の寄付に参加してくれた方々の手元に届けられる。

 

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日曜日のくすのこうたきで採れた樟脳を月曜日に回収した様子。

 

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コップ一杯分になりました。今年一番の収穫量。

 

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本日6:30〜朝のくすかきにて。砂が混じらないようにくすかきできたら本物です。

 

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雨の翌日は葉がほんのり濡れていて、砂が付かないように掻くため、集中力が必要なくすかきになります。

 

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掻き山も雨で沈んだようです。

 

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枝取りしています。枝が落ちはじめました。

 

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朝のくすかきを終えた時の掻き山。再び大きくなりました。

 

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白樟の杜。一つ一つは樟葉の葉脈に見え、林立する風景は杜のようです。

 

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昇華の風景。純度100%になった真っ白な樟脳。白樟の杜はこの平皿の上の小さな結晶の世界です。


くすかき十六日目「樟の杜の色が変わる」

くすかき十六日目。6:30〜朝のくすかきは大人13名、子供7名、合計20名の参加。10:00〜15:00のくすのこうたきは大人10名、子供5名、合計15名の参加。16:00〜の夕方のくすかきは大人9名、子供6名、合計15名の参加。天気は曇りのち晴れ。朝の落ち葉は、昨日の突然の豪雨と風で天神広場に広がっていた。

 

今日が、くすのこうたき(会期週末に行う樟脳の水蒸気蒸留)最終日。昨日に水蒸気蒸留したものも無事に回収された。今年は安定した量の樟脳が採れた印象。多い時で、だいたいリアカー1台の落葉から、コップ1杯の樟脳が採れるイメージ。同じことをしても収穫量が違うのは、気温や葉っぱの違いなのか?今の所開けてみるまでわからない。ちなみに去年はまったく採れない日もあった。

 

くすのこうたきが行われる鬼すべ堂は境内から少し登った山の方にある。毎年、この時期にくすのこうたきをしていると、最初の頃は桜、次はツツジ、最後に藤、といった感じで、週替わりで花が咲く。それを見るのも、みんなの楽しみになっているが、今年は全体的に遅く、桜が散ってツツジが咲き始めたところまでしか、今年のくすのこうたきでは楽しめなさそうである。

 

そして、この山にはたくさんの樟が生えている。ここ数日で、一気に山の色が変わった。黄緑のモザイクのように見えるのが樟である。完全に春の山の到来である。境内の樟も同様に若葉が色を発し、すっかり風景が変わった。

 

早朝、境内の様子を確認するように歩かれていた宮司様と目が合った。

 

「樟、ここ数日で変わったね」

「はい。ほんとに、昨日、今日で変わりましたね」

 

笑顔で言葉を交わした。

 

千年以上受け継がれる眼差しである。

 

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6:30楼門前をくすかきする。

 

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今年は落ち葉とがっつり向き合う年になっている。会期と落葉のタイミングがドンピシャだからだろう。

 

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10:00〜くすのこうたきにて。樟脳が無事に結晶化してました。

 

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樟脳回収。内壁の結晶を収穫。

 

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樟脳回収。水に浮いた結晶も収穫。

 

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16:00〜夕方のくすかきにて。大きくなった掻き山の形を整える。

 

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くすかき奉加帳。一口2000円の寄付制度。お礼に会期中に制作した芳樟袋と樟香舟の樟の香りが届きます。

 

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すっかり樟の色が変わって、境内の印象も変わりました。樟の木は明るい色の若葉が盛り上がるように見え立体的に感じます。


くすかき十五日目「葉っぱが届く」

くすかき十五日目。6:30〜朝のくすかきは大人11名、子供8名、合計19名の参加。10:00〜15:00のくすのこうたきは大人8名、子供5名、合計13名の参加。16:00〜の夕方のくすかきは大人9名、子供3名、合計12名の参加。天気は曇り。落葉は多い。

 

朝のくすかきに行くと、掻き山の柵の角に小さな葉っぱの山があった。誰かが持ってきてくれた葉っぱだろう。誰かはわからない。夜勤の警備員さんだろうか?当直の神職さんだろうか?地元の方だろうか?

 

夕方のくすかきをしていると、参道の梅ヶ枝餅屋さんの甘木屋さんが葉っぱを持ってきてくれた。ありがとうございます。と言って葉っぱを受け取り、掻き山に足す。

 

できれば顔が分かるとよいが、いずれにせよ、持ってきてくれた樟の葉は、掻き山に足される。

 

葉っぱを届けるという形で、くすかきに参加してくれている人もいる。

 

どこかの樟の木の下で、くすかきをしている人がいる。

 

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6:30の風景。けっこう多いです。

 

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朝のくすかきに落葉が届けられていました。

 

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10:00〜15:00のくすのこうたきにて。樟脳が抽出されはじめました。

 

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芳樟袋への葉っぱ詰め。

 

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若葉が葉を広げ木の色味が明るい黄緑へと変化しています。

 

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16:00〜夕方のくすかきにて。甘木屋さんから樟の葉を受け取ります。


くすかき十四日目「人の手を航海する舟」

くすかき十四日目。6:30〜朝のくすかきは大人18名、子供8名、合計26名の参加。天気は晴れ。今朝も冷え込んだ。落葉は少ない。朝のくすかき終了時間は7:00時ごろだが、今朝は落葉も落ち着いていたので、少しだけ早めに終えて、芳樟袋に入れる葉っぱ選びをした。

 

【芳樟袋(ほうしょう-ぶくろ)】

くすかきで集めた一年間の記憶を宿す樟の葉を布で包んだ匂い袋。古くは平安時代から芳香・防虫剤として使われてきました。時間が経っても手で袋を揉むと再び香りが立ち上がります。

 

芳樟袋はプロジェクト運営資金を得るために、太宰府天満宮の案内所と宝物殿で春限定商品として販売させていただいております。また、くすかき奉加帳(http://igayasu.com/kusukaki/houga/)という一口2000円の寄付制度(銀行振込可能)のお礼として、樟香舟(週末のくすのこうたきで樟葉を水蒸気蒸留し抽出した樟脳という香の結晶)と共に、全国のくすかきサポーターへ、毎春お礼として届く太宰府からの春を告げる香りとして愛されています。

 

そんな芳樟袋の葉っぱ詰めは、地元のみんなでやっています。朝のくすかきで葉っぱを選び、その葉っぱを山かげ亭(天満宮が管理するレジデンス)に持ち帰る。日中、くすかきをするにはまだ少し早い2歳以下くらいのこどもとお母さんたちが、その葉っぱを芳樟袋に詰める。授乳しながら葉っぱ詰めをしたり、子育てや、数年後くすかきデビューする話をしたり、すでに参加しているお兄ちゃんやお姉ちゃんの成長について話をしたり。朝のくすかきとはまた違った穏やかな時間が流れているが、これもまたくすかき参加の一つのかたち。

 

手から手へ、朝のくすかきのみんなから、葉っぱ詰めのみんなへ、そして、全国のみんなへ。樟の葉っぱは人の手から手へと航海する小さな舟のようである。

 

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「でかくない?」「もう去年のくすのかきあげ最終日と同じくらいの大きさやないと?」「そうよね、今年の掻き山この時期にして、かなりでかいよね?」

 

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芳樟袋に入れる葉っぱ選び中。

 

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光って見えるのが若葉です。

 

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手から手へ航海する小さな舟のようだ。

 

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この空気感も袋に一緒に入って全国へ届く。

 

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お昼ご飯。山かげ亭のお庭にて、桜吹雪の中。

 

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瞳を閉じた、こどもを抱いて、芳樟袋の袋も閉じて。


くすかき十三日目「落葉が止まる朝」

くすかき十三日目。6:30〜朝のくすかきは大人17名、子供9名、合計26名の参加。天気は晴れ。朝の第一声は「冷えるね〜」からはじまった。今朝は、ぐぐっと冷え込んだ。思わず手袋をしたくなる寒さ。三寒四温とはよく言ったもので、ここ数日続いた、寝覚めの布団が暑く感じる温かな日から打って変わって、布団から出づらい朝だった。しかし、この繰り返しが春の訪れそのものを意味するのだろう。

 

日中は20度近くまで上がってあたたかくなるのだが、朝晩がぐっと冷え込む。すると樟の落葉も寒さで止まるようで、昨日は地面を埋め尽くすほどあった落葉が、今朝はパラパラ数枚のみ。みんな口々に「あれ?今日は少ないね」「全然落ちとらんね。寒いからやろね」と、ちょっと拍子抜けしつつも、ほっと一息。余裕をもってくすかきできるので、6:30からの30分の時間の流れは気持ちが良い朝となる。

 

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6:00過ぎ。朝の最初の仕事は落葉日めくり更新とネコのウンチ取り。

 

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ほとんど落葉はない。そんな日は場を整える。

 

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掻き山の存在感が出てきた。


くすかき十二日目「みんなで樟の葉を掻く」

くすかき十二日目。6:30〜朝のくすかきは大人15名、子供6名、合計21名の参加。久々の快晴。一昨日は定休で昨日は雨で中止となっていたので、丸々二日分の落葉で地面は埋まっていた。朝のくすかきは通学や通勤のタイミングもあり、なんとなく6:30〜7:00で安定してきた。だが、その30分間では、枝や砂を分別して、すべての落葉を掻き山に乗せるには、あまりにも量が多く、残れた人で7:30まで行ったが最終的には、明日に持ち越すこととなった。溜まった落葉の量としてはおそらく今期最多になるだろう。

 

場がまだ整っていなかったので一人残って8:00過ぎまでやっていると、天満宮幼稚園の先生たち、神苑管理の管理員さんたち、袴をはいた神職さんや巫女さんたちも、みんなで境内の樟の落葉を掻きはじめた。

 

「昨日の風でだいぶちらかっとうもんね」と誰かが言う。そんな日の翌朝は、みんなで樟の葉を掻く。

 

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地面いっぱいの落葉。この数日でかなり落葉した。

 

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掻いて集めて、ふるいにかけて分別して、掻き山に足して、、、まるで終わりが来ないかのようでした。

 

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昨夜の風で広場の遠くまで葉が移動してきていました。

 

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掻き山がかなり大きくなりました。

 

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日中は山かげ亭にて芳樟袋の制作です。