くすかき十八日目。失われない記憶。

くすかき十八日目。今日の天気は、朝は曇っていたが、午後から雨となった。朝のくすかきには大人17名、子供15名の合計32名が集った。日中は、山かげ亭(会期中の滞在先)で芳樟袋制作と樟脳の昇華作業を行った。

 

昇華をすることで、樟の葉を水蒸気蒸留してとれた樟脳から不純物を取り除き、純度を100%にする。

 

昇華作業は、今日が初日。昇華をはじめると滞在先の空間が、あっというまに樟脳の香りに包まれる。この匂いに包まれると、いよいよ今年のくすかきも終わりが近づいて来たなと思う。

 

樟脳というものは、固体か気体か、そのどちらかの状態でしかいられない。液体の状態は存在しない。

 

この性質を利用して昇華をする。器に入れた樟脳を下から熱する。その器に氷水を入れた皿で蓋をする。すると、固体から気化した樟脳が皿の底に付着し結晶化する。器には不純物が残るといったやり方。

 

この皿の底で結晶化した純度100%の樟脳を見るのが毎年の楽しみでもある。

 

なんと、その結晶一つ一つが、不思議なことに葉っぱの葉脈のような形をしているのだ。

 

葉っぱだった頃の記憶が残っているのだろうか。

 

葉っぱから抽出され、気化して形を失っても、失なわれない記憶。

 

忘れなければ、もう一度、思い出すことができる。

 

思い出せれば、その人の中にあり続けることができる。

 

最終日に描き出す、かつて存在した千年樟も、一年に一度思いを馳せることで、我々の中にあり続ける。

 

最終日のくすのかきあげまで、あと四日。

 

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今朝の落葉は少しだけ。

 

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もう終わりかと思うけれど、まだ落ちそうです。薄い緑が若葉。濃い緑が古葉(去年の若葉)。

 

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いつか自分も、、、。

 

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タグづくり完了!ひたすらのこより、本当にお疲れさまでした!

 

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失われない記憶。

 

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昇華作業風景。1段目の皿の底で熱せられた樟脳が、2段目の皿の底で結晶化し、不純物のみ1段目の皿の底に残ります。

 

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芳樟袋にタグをとりつけていきます。