沙弥島滞在36日目。瀬戸内国際芸術祭2016が開幕した。
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【そらあみ〈島巡り〉】
《春会期(3月20日〜4月17日):沙弥島》
瀬戸大橋でつながる沙弥島、瀬居島、与島、岩黒島、櫃石島の5つの島で漁網を編むワークショップを開催し、島に暮らす漁師や、集った人々192名で協働した。そして空に向かって垂直に、波打ち際に設置。風や雲や日光といった天候の移り変わりと潮の満ち引きによって見えかたが刻一刻と変化していく様子を鑑賞者は網越しに眺める。
漁網を編むことで、人と人をつなぎ、海や島の記憶をつなぎ、完成した網の目を通して土地の風景をとらえ直すという目論み。今回、新たに加わった潮の干満という要素によって、海から陸へと移行した我々の中に眠る海の記憶がより刺激されることを期待する。
秋会期には本島に渡り、新たに本島でつくられた漁網を連結。行政区分を超え、島から島へ海のつながりを編み広げていく。
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今回の作品は海上に設置するため、作品の見え方として、潮の満ち引きが重要なポイントとなる。今日の満潮は9時54分と21時55分。干潮は3時22分と16時9分。
潮は1日に2回満ち引きがある。約6時間かけて潮は満ち、約6時間かけて潮が引く、これが1日に2回。それで24時間というわけだ。潮の満ち引きは月の満ち欠けと連動している。古代から人間は、月の満ち欠けの周期から暦をつくり生活に役立てるとともに、鑑賞の対象にしてきた。
潮の満ち引きは月の引力によって起こる。月の引力は、月に面した地球表面で最大となり、海水は月の引力に引きつけられ、盛り上がる。こうして海水が集まった場所が満潮となる。新月や満月になると、太陽と月と地球は一直線上に並ぶため、月と太陽の引力が合わさり潮の満ち引きが大きくなる。これが「大潮」。逆に半月の時は「小潮」となる。
以前に珊瑚の産卵を見に行った時、産卵は新月の夜だった。同行していた珊瑚の研究者の話では産卵は満月か新月の時で、大潮に乗せて卵をより遠くまで運ぶことが目的だと考えられているそうだ。人間も満月の時に出産しやすいという話も聞いたことがある。
この星の生物のはじまりが海からだとするならば、我々のDNAの奥深くには、潮のリズムが刻まれているに違いない。この星に生きる者として、自らのリズムを確認しに、そらあみをきっかけに海や空と向き合いに来てもらえたらうれしい。
実際に沙弥島の波打ち際で〈そらあみ〉に向かって立つと、網を吹き抜ける海風と潮の満ち引きを感じる。
今回のそらあみは瀬戸内海の風景と共に、地球の息吹を捉える。
それは、島民や漁師さんが日々向き合っている世界。
日本という島国で命をつなぐ豊かさが島には残っている。
都市に集中し我々が見失っている美しい日本人の暮らしであり、DNAに眠る記憶を、いい感じに不揃いな網の目の向こう側から感じてもらえたらと思う。
潮が満ちてくる。海風が吹き抜けていく。
記念写真の撮影場所になっています。
干潮時は、そらあみの下を歩けます。
海を背にして見るとこんな感じ。
満潮時。波打ち際に佇んで、海と空に向き合ってみる。
3年前の瀬戸芸よりも見にくる人が多い感じがします。
水面の光の模様も網の形に見えます。
波の音が聞こえる。
海風が作る網の形。海潮に映る網の影。
干潮時。
下から見上げてみる。
網を少しだけ触って、風の力を感じてみる。