三編み紋

プロジェクト最終日。浅草の地に1400年の時を越えて三編み紋が出現した。

 

結論から言うとGTSの開期は今日11月11日までだが、浅草神社さんのご理解をいただき11月いっぱい展示させてもらえることになりました!

 

朝8時、浅草神社集合。天候に敏感な猿まわしの方の情報では、朝の時点で既に愛知県辺りでは雨が降っており、ここ浅草も15時頃から雨が降るそうだ。猿まわしネットワーク恐るべし。雨が降り始める前に網の設営を終えたいので前倒しで8時から作業をはじめた。

 

長く編んできた網の最後の目の数をそろえる作業からスタート。みんな慣れた手つきで網の目を合わせていった。そして最後の最後は、やはりこの人、クニさんに編み上げてもらい、12時に完全に編み上がった。

 

網の目を合わせる作業と平行して、地面にペグとロープを使って、1枚の幅9m×長さ20mの網を三編み紋の形に見えるように折り返す実寸大の平面図を描き、準備万端。昼食を手早くとって、12時30分から網を大きく広げ、地面に描いた平面図の上で通すべきラインに合わせて、網にロープを仕込む作業を行おうと、高さ8mまで上がった網を下ろそうとすると、トラブル発生。一番右の滑車にロープが上手い具合に引っかかってしまい降りて来ないのである。これは困った。ロープの引き方や強さを変えて、いろいろ試したが、上手くいかない。誰かが上まで上がるしかない。最終手段として長いハシゴをお宮から借りる。それでも引っかかっている原因があるのは高さ8mの地点なので届かない。そこで、長い垂木の先にガムテープでフックを固定し、皆にガッチリ押さえてもらってハシゴの一番上まであがり、即席フックで滑車近くのロープを引いた。

 

グイ、、、グイ、、、グイ、、、

 

はずれたー!よかったー!辺りから自然と声が出た。ほっと一安心。これだけでもちょっとしたイベントになっていた。でも網を下ろすのが目的ではない。次なる作業に移らなければ!まず、網を広げてみる。

 

今日まで編み上げた網を全体が見えるように広げるのは初めて。つり上げられた竹から網を下ろし、みんなで持って移動、まずはセンターを出すために大きく広げてみた。広げてみると本当に大きい。ほんとよくここまでこの18日という短期間で編み上げたものである。今までで最大サイズを、今までで最小期間で編み上げたことになる。まずそれだけでも個人的にはすごいと思うが、広げた網の大きさと光景に驚き、しばらく皆で眺める。「でか〜!」「すごいねこれ!」みんなが興奮しているのが分かる。

 

協力してロープを仕込み、いよいよつり上げである。滑車に通ったロープ3カ所に三角の頂点になる部分を結びつけた。小さな紙の模型でシュミレーションはしていたが、ご存知の通り、網は延びたり縮んだりする。なので、実際にやってみないことには誰も分からない。さてどなるか、この大掛かりな状況に、なんだなんだといった感じで、自然と観衆も集まってきた。

 

「では、3カ所同時に、お願いしまーす!」

 

するすると網が上がっていく、猿まわしの方も気を使ってくれ、この時は講演を打たず待っていてくれ、境内にいた人のほとんどの方の目が網に集まり、徐々に空へと上がっていく、良い感じである。このままきれいに上がって、完成!拍手!といったイメージが沸いたその時、トラブル発生!こんどは何だ?網がよじれるのである。滑車を通る時に発生するロープの撚り(強度と出すために螺旋状になっている)の影響を受け、網が上に上がる度に、ねじれていってしまうのである。左と真ん中は適度に他のロープでテンションをかけたりして上手くいったのだが、何故か、下ろす時に滑車に引っかかったのと同じ一番右だけが上手くいかない。先に反対回しで撚りを加えてから上げたり、いろいろ試したが、どうしてもねじれてしまい上手くいかない。

 

そしてここからが面白かった。集まってきた観衆の人達、特に男衆が皆、知恵を出し合い相談しはじめたのである。どこかから来たおじさんが、ああしたら?こうしたら?また別のおじさんが、それじゃだめ、こういう理屈でよじれてるんだから、、、。といった風に、なんだか場に活気が出てきた。

 

目の前の問題を解決し、皆、網を上に上げたいのである。三つ編み紋を見たいのである。

 

そして最終的に出た結論は、滑車に負荷をかけずに網を上げるというものだった。そうなると、網を下ろす時と同じ道具を使ってやるしかない。ハシゴをがっちり押さえてもらって、ハシゴの一番上まで上がり、即席フックに網を引っ掛けて、滑車に負荷がかからないように網を空に上げていった。見事に網はよじれることなく一番上まで上がったのだった。おお!上手くいった。男衆の低めの歓声があがった。

 

すんなり行かなかったので、網が上がるのを待っていられずに帰った通りがかりの人もいたが、当事者となって参加し、ああだこうだといった時間を過ごした人は、1つの達成感を得ることができたに違いない。この時、せっかく観衆もいたので、よじれていても一度上げて、仮で完成ということにして、拍手、その後スタッフで調整という選択肢もあったが、雨も迫っていたし、最後まで関わって参加してもらうという選択肢で、そっちの盛り上がりもあったし、今回はこれを正解としよう。次回やるなら網を上げる時の演出をしたいという欲が少し残った。

 

最後に足元のロープワークをして、網が三角に見えるように微調整を終える頃、雨が降り始めた。ぎりぎりセーフであった。

 

こうして、2度のトラブル(いずれも何故か一番右の滑車)を乗り越え、浅草の地に1400年の時を越えて三編み紋が出現した。

 

舞鶴→釜石→三宅島と今まで3回そらあみを行ったが、それらはいずれも四角い平面の状態の網が空に張られた。だが、今回浅草では、三角が3つで、しかも立体的に網を張った。立体になった分、網であり、網越しの風景の見え方も平面に比べ複雑になった。そして平面から立体になることで、絵画作品から彫刻作品になるような変化をし、今までに比べ、モノとしての存在感が増した。

 

初めての試みだったので、どう見えるか分からない不確定要素が多かったが、試してみて良かった。平面の場合は網が均等に広がっているが、立体になると網の目が広い部分と狭い部分が生まれ、地面から空に向かってグラデーションが生まれた。そらあみの新しいパターンである。

 

そしてなにより、浅草神社の三編み紋という社紋となり、1400年前という過去の遺産として結晶化し、止まったままになっていた浅草の網の文化を、実際に網を編むという身体行為を介して、現在進行形で文化を発信することができた。これは土地の物語が息を吹き返し、再び鼓動を打ちはじめたということである。

 

雨の中、浅草神社で酉の市でお会いした氏子さんに再会した。「正月まで飾ったらいいのに」「来年もやろうよ」「氏子として正直にうれしいよ」と、本当にうれしい言葉をいただいた。

 

来年以降も、浅草神社の年中行事として、現在進行形の文化発信として、ここ浅草神社でそらあみ-三編み紋-を展開したい。

 

全面的にバックアップしてくださった浅草神社の皆さん、編んだり差し入れをしてくれたり様々な形で関わってくださった皆さん、企画段階から事務的なサポートまでしてくれたGTS関係者の皆さん、そして現場に足を運んで見にきてくれた皆さん、おかげさまで三編み紋になりました!本当にありがとうございました!

編み終わりの目の数をそろえます

みんな手慣れた手つきでラストスパート

最後の仕上げはやっぱりクニさん

滑車に引っかかったロープをハシゴの上に登って、即席フックで下ろしてます

広げるとこんなに大きくなってました!まるで巨大な網の絨毯です

三編み紋にするために、通すべき網の目にロープを仕込みます

地面の上では平面なので上手くいっています。吊り上げて立体になるとどうなるか?

いよいよ網が上がります。観光客の方も注目してくれています。

徐々に人集りが!

なぜか、どうしてもねじれてしまう。何度上げ下げを繰り返したか

三編み紋が上がりました!

地面にロープを固定し、完成!雨が強くなってきました。ほんとぎりぎりでした

最後に残ったメンバーで記念撮影!おつかれ様でした!