リニューアルしたチラシを持って、お宮へ挨拶回り

太宰府滞在3日目。くすかき12日前。今日はお宮の各部署へ「今年も“くすかき”はじまります。よろしくお願いします」と挨拶周りをしながら、ポスターチラシも各部署の目に付く所に貼ってもらえるようお願いして回った。

 

今年のチラシは今までのものとは趣向が違う。デザイナーの河村美季氏を中心に、くすかきを支えるコアメンバーで話し合いを重ねた結果出来上がったデザインで、A2縦サイズ(594㎜×420㎜)の片面である。いわゆるチラシによくあるサイズよりも大きく、一般的なポスターよりもちょっと小さい大きさにした。

 

これまでA4サイズなどでつくってきたのだが、このサイズは他のチラシと一緒にまとめられた時に埋没してしまう。しかも、これまで自分が知っているチラシというモノの存在は、いわゆるばらまきスタイルで不特定多数の人の手に渡るもので、すぐに捨てられてしまうイメージがある。この“どこかの誰か”に向けたチラシの設定はくすかきには合わない。くすかきのチラシは手渡しで“人から人へ”1枚ずつ広がっていくものであるべきだと考えている。もっと言ったら、参加者のためにあるべきチラシである。

 

そう考えると、会期中に参加者の家の壁や冷蔵庫に貼ってもらえ、行事予定も分かって、参道の各店舗の窓や柱に掲示されるような存在であってほしい。と考え、ポスターよりも小さくて、チラシよりも大きいこのA2サイズになったのだ。チラシの中央に大きく松葉ほうきがデザインされており、バックにはうっすらと樟の葉が浮かんでいる。タイトルも大きく入って、遠くからでも目立つ仕様になっている。

 

会期中、それぞれの暮らしの中にこのくすかきチラシが存在し、時間と情報を共有するツールとして機能するに違いない。掲示場所や使い方をデザインしたチラシが力を発揮するよう期待したい。

 

さて、「お宮への挨拶まわり」と簡単に言っても、ここは年間700万人が訪れる太宰府天満宮。神主さんや巫女さん以外にも様々な方がお務めしており、その人数は百数十名にのぼる。挨拶して回った箇所は、宝物殿、文化研究所、案内所、天満宮幼稚園、管理棟、企画広報課、総務課、秘書課、宮司室、祭儀部、宣揚部、食堂、財務部、西門警備室と15カ所。2時間以上かかった。いつも緊張する。

 

でも嬉しいのは、「もうそんな季節だね」「ほれ、葉っぱが落ちて来よるよ」「また来たのか。笑」「今年は落ちるの早いかしら?」「髪切ってさっぱりしたな。誰か分からんかった」「今年もはじまるなぁ」といった5年続けてきたことによる、自分とお宮の方との関係性の変化を実感できる言葉に出会うことができるからである。もちろん、関係性はそれぞれで、近い人から遠い人までいる。くすかき自体への理解や楽しみ方も人それぞれである。それでも確実に変わってきている。「この時期に来て、くすかきをする人」という認識をやっと持ってもらえている気がする。「こいつまた来年も来るんだろうな」といった諦めに近い意味合いもあるのかもしれないが、、、笑。それでも構わない。変化と成長がアートプロジェクトの最も感動する部分である。毎年の一ヶ月の会期の中での成長もあるが、一年、また、一年、という年を重ねることで感じられる成長もある。伝えることの覚悟をもって表現することはもちろんだが、その挑戦をさせていただいていることに、この太宰府天満宮というお宮に改めて感謝したい。

暖かい!会期前にこんなに落ちて来ています!

 

本殿と樟と空。これが毎年春を迎えにこの土地で5年間重ねてきた記憶の景色です。

 

今年のくすかきチラシ。

 

家の壁に貼るとこんな感じになります。ここはレジデンスの山かげ亭です。