沙弥島滞在39日目。今日は1日、滞在先である沙弥島の海の家で事務作業を行った。風もなく暖かで、本当に穏やかな1日だった。このまま暖かくなって春が来ると良いのだが。
あまりに気持の良い空模様だったので、休憩がてら、海の家から出て、すぐ目の前に広がるナカンダ浜へ海を見にいった。打ち寄せるさざ波は透明度が高く、岡山県へと延びる雄大な瀬戸大橋と、その下を次々と通過する大きな船を眺めていると、つい時が経つのを忘れてしまう。
散歩に出ていたプロジェクトスタッフの飯高さんが、ネギと白菜をもらって帰ってきた。島のおばあちゃんに会って、話をしていたらいただいたそうだ。
ここ沙弥島は人口88人。今から35年前に埋め立てで地続きになった島である。地続きになったとはいえ、実際に住んでいると、ここにはちゃんと島の時間が流れているのを感じる。いただいたこの野菜もまた、その1つだと思う。
今回の網づくりで回った他の島もそうだが、小さな畑をしている方が多い。今は橋や埋め立てでつながってはいるが、もともとは島だったので、新鮮な野菜を手に入れるのは難しかったはず。なので当然自分たちで育てるわけである。現在も沙弥島の民家のすぐ横のちょっとしたスペースは畑になっており、おばあちゃん達がそこでよくお話している風景に出会う。きっと島に昔からあった風景なのだろう。
白菜、大根、ネギ、タマネギ、じゃがいも、ブロッコリーなどなど、いろいろな野菜を育てている。そんな中に“万葉(まんば)”と呼ばれる野菜がある。紫色がかった緑葉で、見た目はごわごわの葉。先日、EAT&ART TAROさんが調理してくれ、いただいた時は、少し苦みのあるホウレン草のような味で美味しかった。どんどん勝手に増えるから万葉と呼ぶそうだ。
そういえば三宅島に行った時に、“明日葉(あしたば)”という名前の野菜があった。これも少し苦みがあって美味しい。明日葉も収穫しても明日になったらまた生えていると感じるほどに勝手に生えているから明日葉と呼ぶと言っていた。
三宅島に明日葉があり、沙弥島に万葉がある。そのどちらにも共通しているのは勝手に増えるという部分である。島にとって野菜の存在は貴重である。勝手に増える野菜は島の人にとって、夢のような野菜である。
沙弥島は、坂出市のホームページで万葉(まんよう)の島“沙弥島”と紹介されている。島のあちこちに、旧石器・縄文・弥生時代の遺跡や古墳、文学碑が数多く散在しており、なかでも万葉の歌人柿本人麻呂ゆかりの歌碑などがあるからだ。確かに歴史的には万葉(まんよう)の島なのだが、暮らし的には万葉(まんば)の島である。
万葉の島で万葉を食す。なかなか粋である。万葉の歌人柿本人麻呂も人間である。当然お腹は空く。やはり万葉を食べただろうか?その真実は万葉のみが知る。
ナカンダ浜からの風景
万葉の島の万葉
家の横に小さな畑。柵には役割を終えた漁網も使われております。