400人で島全体をゴミ拾い

沙弥島滞在36日目。朝9時30分。沙弥島に400人の市民が集まり島全体のゴミ拾いが行われた。坂出市役所の方から開会式で挨拶をしてもらいたいと頼まれていたので、市長挨拶の後にマイクを受け取り、“そらあみ”の作品紹介をさせてもらい、ゴミを拾って沙弥島に良い風を通しましょうと挨拶させてもらった。

 

芸術祭の開幕である3月20日の春分の日まで残り18日。何日か前に、「瀬戸内国際芸術祭2013」と書かれた大弾幕や幟が立ち、道路が整備され、街灯の数も増え、何故かヤシの木もたくさん植えられて、島に分かりやすい変化が生じている。芸術祭効果というやつだろう。いろんな人が見に来るから環境整備を行っているのだ。

 

なんだか、祭典を通してインフラが整うイメージは、まるで東京オリンピックのようである。いよいよ始まるといった感じだろうか。「楽しみにしています」という市民の方からの声もあった。「はい」と笑顔で答えるしかなかった。

 

1月27日に沙弥島入りしてから、こんなにたくさんの人がこの島に集っている状況に出会ったのは初めてだった。マイクを持って400人の市民の方々と向き合った時は、その人の数に少し圧倒された。

 

皆さんボランティアである。声がけのラインがあるのだろう。一緒に網を編んだ各島々の自治会長さんの姿や、一緒に編んでくれた漁師さんの姿、施工をお願いしている施工会社の方、もちろん坂出市役所の方々の姿もあり、再会や打合せのような状況となった。一ヶ月の滞在制作を通して、ずいぶん知り合いが増えたのだなと、実感した日にもなった。

 

五十嵐「あれ?今日来てるんですね。昨日はどうも」

櫃石島の方「交通の関係で呼ばれたんや。自治会長も来とるで」

岩黒島の方「あのな、あの時の黒板にな、わしの船名がなかったんや、書いといてもらえるか?」

五十嵐「はい。もちろんです。栄光丸でいいですね?」

施工会社の方「週明けに墨打ちするで、確認頼んますね」

五十嵐「了解です」

 

といった具合である。これだけ知り合いがいて、挨拶だけして帰るのも、なんだかおかしいし、自分の作品設置場所でもあるので、自分も一緒にゴミ拾いをさせてもらった。1時間程度だっただろうか。400人というマンパワーはすごい。ローラー作戦の要領で、人が通る道沿いのゴミがみるみる拾われていった。

 

自分は、作品設置場所である西の浜(沙弥島海水浴場)のゴミを中心に拾った。実際にゴミを拾っていると、以外に多いものである。一緒に拾っていたおばちゃんに話を聞くと、「風で海のむこうから飛んでくるものあるけど、釣りに来た人なんかが、そのまま捨てていくのよ」とのこと。

 

現代人の陸を中心とした生活は、川や海に背を向けて暮らすことにつながる。結果ゴミは、川や海の際に溜まっていくのである。「水に流す」この言葉が頭をよぎる。日本人特有の見たくないものを、そのままなかったことにしてしまう考え方である。ゴミもそうだが、水に流したものは、確かに自分から見えない所に行ってしまう。だがしかし、それはどこかに、もっと言えば、どこかの誰かに届いているのである。それを誰かが引き受けているのである。その相手が人なのか、地球環境なのかといった違いだろう。

 

誰か他人のもの(ゴミ)が届くと嫌なのに、自分が流すのはさほど気にならなかったり、気にすら止めていなかったりする。人は皆、本人にとって都合の良い生き物である。

 

夏の海水浴場がきれいなのは、行政が掃除会社に依頼して、更に、市民ボランティアがゴミを拾っているからなのである。実際のところはゴミだらけ。

 

ありのままの島の姿を見せるなら、ゴミも一緒に見せるという考え方もある。観光的な考えで言えば、きれいな町の、きれいな瀬戸内国際芸術祭でしたという印象を持って、観光客に帰ってもらいたい。というのも分かる。

 

あとは見に来る側の想像力の問題か、、、。瀬戸内国際芸術祭に限らず、普段の生活が如何にして成り立っているのか。そのことをまず想像することから、自分の日常はどんな犠牲に支えられているのか、そのことを見つめることを、もっとした方が良いように思う。

 

でも、そんなこと、いちいちしていられないというのが現状である。

 

「水に流す」この言葉もまた、状況と使い方、それぞれの立場によって、良くも悪くもある本質的な言葉である。もっと言えば、自分も含め、その言葉に救われているとも言えるのかもしれない。

 

今回のそらあみは波打ち際に立てる。日本人が水に流してきたことを、海のむこうに流してやり過ごしてきたことを、捉え直す網となる。それは自分自身が水に流してきたことから、まずは捉え直さねばならないということなのだろう。

400人が島にちらばっていく

作品設置場所となる西の浜(沙弥島海水浴場)。皆さんのおかげで、ずいぶんときれいになりました。

波打ち際にゴミが溜まります。