ブラジル26日目。昨日とはうって変わって快晴。トビラを開けると「YASUさん!」と大きな声で話しかけてくるフェルナンドといつもの朝の挨拶を交わす。そしてフェルナンド特製のミックスジュース(野菜やフルーツや穀物など)の朝食を2人でいただく。
フェルナンドが連れて行きたい場所があると言うのでついていった。昨日のような雨の次の日が良いとのこと。目的は森の中にある滝での水浴びだった。だが、あまりの雨量で目的の場所が壊れてしまっていて、滝での水浴びは叶わなかった。しかし道中、フェルナンドに様々なフルーツや芋などの植物の収穫及び使用方法。古い建造物や教会といった歴史。魚が沢山とれるポイント。美味しいカニの種類。友人のペインターの家。などを教えてもらいながら歩いた。人と会うたびに「ボンジーア(おはよう)」と挨拶を交わす。
そしてフェルナンドは言う。これがあるから自分はここに生きている。
フルーツや芋といった山の幸。魚やカニといった海の幸。廃屋となった海の城と素朴で美しい教会。そして友人達。
ここに生きる男は基本的に皆、漁師であり、漁師でないのかもしれない。魚に限らず自然の恵を上手に暮らしに取り込んでいるのだ。そうやって生きているのだ。
いつ、どこの海に行けば、魚がたくさん釣れるのか?ジャングルの中のどの芋が食べごろなのか?大雨の次の日はどの木の下に行くと美味しい木の実が手に入るのか?雨上がりの美しい風景がどこにあるのか?浜辺を歩くなら何時くらいが良いのか?
自分の暮らす土地のことを本当に良く知り尽くしている。そして大切に利用している。楽しんでいる。ポルトガル語で言うとアプロベイト(利用する。楽しむ)している。外貨収入とはとは違う形で、自然の恵と直接関係性を持って生きるサイクルがある。食べ物はブラジル都市部のどれよりも美味しい。食材が新鮮なので当然である。
「ここは楽園だ」フェルナンドが言う意味が少しずつ分かってきた。豊かさは暮らしの中にある。もっと言えばそれを選ぶ自分自身の中にある。どんな暮らしがしたいのかが重要なのである。自分はこの星と直接触れ合えるこんな暮らしが好きであるし、豊かだと思う。
アートはそんな暮らしの中から生まれるもの、もしくはそんな暮らしの中にあるものだと、ここにいると思える。
昼ご飯を食べ終え、良い日差しが家に入ってきた。
そうだ。ちょうど良い。糸を染めよう。自然とそれははじまった。自分がはじめるとそこにいる人が手伝ってくれた。
そうだ。糸を巻いて玉にしよう。綛の輪っかを両手に通して糸の端を渡すと、カニを届けに来てくれたペインターのジュリオ(ペインターだがカニを獲るのも上手)が自然と糸玉づくりを一緒にはじめてくれた。1つ巻き終わると「次、持ってこいよ」といった感じで、いくつか糸玉を作ってくれた。こうして自然と暮らしの中から「そらあみ」がスタートした。
「これから“そらあみ”はじめます」のかけ声もない。みんなが集まって説明会もない。もちろんチラシもない。土地に入って、自分を知ってもらいながら、ごく自然に風が吹いて、雨が降って、また晴れるように、それをはじめてみた。それがここでのやり方の気がする。
海の城。海と川の出会う河口は、海がクリアーな時に行くと300㎏の魚も獲れるとのこと。
リーシャという植物の葉。表面が硬くザラザラしていて、昔は木造船を完璧に仕上げる時の紙ヤスリとして使用していたとのこと。
ジャングルの中の自然の芋。どれも美味しいとのこと。
マサランドゥバという木の実。食物繊維が胃に良いとのこと。甘酸っぱいです。
丘の上にある素朴な教会。
シンプルなつくりですが、様々な物語がありました。
光の綺麗な穏やかな空間。とても静かです。
併設されているブラジルのお墓。おじいちゃんが1人墓参りに来ていました。人が生まれ、やがて死に、遠く想いを馳せる。日本と変わりません。
中は古いままの煉瓦の広場になっていました。大きなトカゲが塀の上を走っていきます。
ふつうに、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして子ども達が通って来ていました。
カニを獲るのも上手なペインターのジュリオ。このカニが一番美味しいカニだそうです。
フェルナンドが染色のサポートをしてくれています。お湯が沸くまではハンモックで寝ています。
隣りのなべは昼ご飯の残り。
窓から見える色が色見本。
西日が当たって光って見えますが、どの色も綺麗に染まりました。
ジュリオと糸巻き。
ジュリオが巻くとヤシの実みたいな形になります。