春の嵐の中、水蒸気蒸留装置試運転

太宰府8日目。くすかき1日前。まさに春の嵐といった天気で、雨、風、共に強く、まるで台風が来たような様相だった。合羽を着て9時頃境内へ行ったが、予想通り、とても《くすかき》できる状況ではなかったので、90ℓほどの袋3つに掻き山(落葉の山)から樟の落ち葉を入れて、リヤカーに積んで鬼すべ堂へ向かった。

 

鬼すべ堂で行ったのは、水蒸気蒸留装置の試運転。明日から《くすかき》は会期がはじまり、初日は松葉ほうきづくりをして、明後日は一回目の「くすのこうたき」を鬼すべ堂で行う。《くすのこうたき》では、樟の葉を水蒸気蒸留して樟脳を取り出す(一般的には、樟脳は幹から取り出す。樟脳は日本で古くから芳香や防虫剤として使われてきた)。

 

そして、その樟脳の香りが、最終日に行われる「くすのかきあげ」後の「くすかき奉告祭」にて、天神様に奉納される。また、「くすかき奉加帳」に参加しプロジェクトに寄付してくださっている全国のくすかき応援者の元へ、寄付のお礼として“今年の香り”が届けられる。

 

今年の落葉は、昨年の若葉。届けられる樟脳は、その香りの結晶なので、一年の記憶を宿した香りである。

 

樟の葉を細かく砕き、釜に水をはり、薪を焼べて沸騰させ、約180℃で融点となる樟脳成分を水蒸気の熱と圧力で葉から押し出し、冷却タンクの中で冷やされると、水蒸気は水に変わり、樟脳成分はタンクの内壁に結晶化する。それを翌朝に回収する。そして最後に昇華をして不純物を取り除き、真っ白な純度100%の樟脳ができあがる。

 

だいたいリヤカー1台分の葉っぱから、マグカップ一杯分くらいの樟脳がとれるのだが、毎回収穫量が違うという難点がある。炊く時間や、葉っぱの量など同じ条件でも収穫量が変わるのだ。天然樟脳をつくっている職人さんに聞いても、「俺らもフタを開けてみるまで分からない。」とのことだったので、あきらめるしかないのだが、これまでの6年間の経験だと、外気温が低いと翌朝の収穫量が多いような気がする。なので寒い日の方が樟脳づくりは好ましい。今年の太宰府は今のところ例年に比べ温かい印象なので心配だが、まずは明日の朝の樟脳回収が楽しみである。

 

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すごい量の落葉が!!!

 

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落葉が水に浮いています。

 

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水滴の表面に白く見えるのが樟脳の結晶です。

 

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この装置の上半分に砕いた樟の葉を詰めます。下で水を沸騰させて水蒸気で樟脳成分を押し出します。

 

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押し出された樟脳成分はこのタンクで冷やされ結晶になります。

 

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境内を川のように流れる雨水。