沙弥島滞在8日目。今日は沙弥島での編みはじめ。沙弥島は完成した〈そらあみ〉を展示する島であり、レジデンスのある滞在先の島でもある。ワークショップはその滞在先である坂出市海の家で行われた。
10時前、海の家に人が集い徐々に賑やかな雰囲気が出てきた。3年ぶりの人、初めての人など、約10人が集った。大抵は最初に五十嵐から挨拶とプランの説明があって〈そらあみ〉ワークショップはスタートするのだが、この日は少し違った。
10時前に来た沙弥島の人たちが、編む準備がしてある様子を見て、極々自然に網針や糸などの道具を取り出し、腰を下ろして、編みはじめたのだ。初めての人には、漁師さんや経験者の方が編み方を教えてあげている。
特にこれといってはじまりの合図もなく、あまりに自然にはじまったので、まるでかつての漁村の網づくりの朝の風景を見ているようだった。
10時をまわったが、ここで良い雰囲気を壊すのもなんだか嫌だったので、そのまましばらく編み進めてもらった。
一時編んで、良さそうなタイミングだったので、挨拶をして、作品プランの説明をした。ごく自然に〈そらあみ〉ワークショップがはじまったのが嬉しかったので、プランについて、自分なりに少し熱く語ったのだが、話し終えた後も、沙弥島の方々はノーリアクションで沈黙が続く(笑)。これは、けっこう心が痛いのだが、このノーリアクションな感じが、まさに沙弥島らしさである。
五十嵐の話が終わり、沈黙が続き、再び編みはじめる。編みはじまるとそれぞれの会話が自然と出てきて、賑やかになる。こうして編んでいるとそれぞれでけっこう話をするが、かしこまって話をみんなにしたりは、ほとんどしないのが沙弥島。
とはいえ、お昼になって、そろそろ終わりにしますか?と尋ねると、自治会長が「あともう1時間ほど編んでいこか?」とみんなに呼びかけ、結局13時過ぎまで皆さん編んでくれた。中にはお弁当まで持参して、午後も編む気満々の人までいるという、リアクションは薄いが熱いハートの方々が多い沙弥島。
自治会長「あんたは、完成するまで、ここにおるんやろ?」
五十嵐「はい。ここに滞在してます」
自治会長「そしたら、こうして網を置いとってもらったら、各自で時間がある時に編みに来てもええわ。な?みんな?」
島の方々「ほうやね。それでも、ええわ」
こんな感じで沙弥島での〈そらあみ〉はスタートした。
集まったら自然と編みはじまる。
一般会話は弾む。
一本の綱を囲んで、一本の糸で編んでいく。
かつての漁村の朝の風景を見たようだった。
黙々と編み進む。
嬉しくなって熱弁する五十嵐。しかしノーリアクション(笑)。これもまたよい。