漁師のアイドル金子商店

沙弥島滞在4日目。やはり色染めは明るいうちにやった方がよい。朝9時に昨日染め切れなかった赤を染めると、一発で欲しい赤色が出た。結論からすると、自然光と蛍光灯の違いで赤の色味がかなり違って見えていたようだ。これで一安心。午前中に全ての糸を染め、屋外に干し終えて、午後は多度津にある漁具店「金子商店」に、発注していたロープを受け取りに行った。

 

〈そらあみ〉の制作や展示に必要な、ロープや滑車などの漁具がなんでもそろう商店で、前回の瀬戸芸の時に、島の漁師さんからオススメの漁具店として教えてもらっていた。

 

漁具店と聞くと、強面なおじさんが出てきそうだが、なんとここを切り盛りしているのは、女性ばかり、しかも、みなさん美人でテキパキと仕事をこなし、瀬戸内海の漁師さんたちのいわゆる専門用語や漁師言葉を瞬時に判断し、正確に必要とする品物を用意する。なぜ人気が出るのか分かる気がする。

 

自分もそうだが、どうせ同じロープを買うのなら、金子商店で買おうと思うのだ。坂出市の島である与島五島からは多度津町は少し離れている。でもわざわざここまで買いに来るのだから面白い。

 

少し大げさかもしれないが、金子商店のお姉さんたちは、この辺りの海の漁師のアイドルといったところだろうか。

 

漁師がそれぞれのタイミングで漁具を買い、お金を落としていく。商売だから当然なのだが、なんだか、たくさんのファンがそれぞれのタイミングでアイドルCDを買い、お金を落としていく構造と重なった(笑)。

 

なんか、こう書くと悪いことをしているようだが、決してそんなことではなく、自分も含め、金子商店で買いたいだけなのだ。厳しい海の世界で仕事をしている漁師さんの使っている専門性の高い道具を、しかも漁師さんの話す自分の言葉で理解してもらえる。しかも美人ときたら、そりゃ人気が出る。

 

だが人気の理由はそれだけではなく、実は揺るぎない実績と信頼があったのだ。なぜかと言うと、金子商店は創業98年の老舗だったのだ。埋め立てが進み、今の店舗に移ってからは40年ほどなので、なかなか店の外見からは創業98年とは想像しづらいが、約100年もの間、この辺りの漁師の仕事を支えてきたのだから、その実績と信頼は言うまでもない。

 

漁師のアイドルがいる創業98年の老舗漁具店が金子商店なのだ。

 

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欲しい赤が出ました。太陽光の存在大きいです。そして色の仕事は日中にやること!これが教訓です。

 

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これで、染め完了!

 

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どの色も良い感じに染め上がりました!しばし天日干し。瀬戸内の潮風でよく乾きます。

 

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明日からはじまるワークショップに向けて、編みはじめのきっかけづくり。

 

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これが噂の金子商店。ここに移ってからは約40年。昔はここは海で、埋め立ててから引っ越ししました。それ以前は、もう少し内陸に店を構えていました。その頃は日本の木造建築で、土間だったそうです。

 

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ロープを取りに行く時間が遅くなったせいなのか、女性陣の姿はなく、おそらく社長さんです。ちょっとびっくりしました(笑)。