世界中のアーティスト、科学者、思想家が船に集う

午前中にウシュアイアの町で最後の買い出しを済ませ、15:20にHotel Albatrosへ。次々に人が集まってくる。しかも見た感じも国籍も多種多様。ほぼ全員がはじめましてからのスタート。「Hi ! where are you from ?」「My name is …..」「Artist ?」などなど、そこここで挨拶が交わされている。とても全員と挨拶を交わす時間もないまま、チャーターバスに荷物を積み込み、ウシュアイアの港へ移動。桟橋までバスで乗り付けると、事務局スタッフのタチアナが指差して「That’s our ship」。目の前に我々の船「Akademik Sergey Vavilov」が現れた。青地に白く「Antarctic Biennale」と書かれた巨大な旗が船首に掲げられ、風にたなびいている。桟橋から船に架かったタラップの先にはコミッショナーでアーティストのポノマリョフさんと事務局のアンナさんが我々の到着を待っていた。「早く上がってこい」ポノマリョフさんがジェスチャーする。次々に固い握手と抱擁を重ねながら参加者が乗船していった。ポノマリョフさんは当然全員を知っている。

 

船内に入るとすぐに船のスタッフから部屋割りが伝えられ、各自の部屋へ移動。荷物を収納する。ほぼ全員が2人部屋。自分は、ドイツ在住日本人アーティストの長谷川翔くんと同じ部屋。昨日会って食事も一緒にしていろいろ話もしたので安心の部屋割り。

 

荷物の収納を終える16:30頃、船内放送が入り、ラウンジに全員が集合した(厳密には、飛行機のストライキの影響などで、この時点でまだ到着していない人も数人いた)。名札に名前を書き、立食パーティー形式で交流会がはじまった。こういった状況はあまり得意ではないのだが、目が会うと挨拶し会話がはじまる。アーティスト、科学者、思想家以外にも、ドキュメントのカメラクルー、事務局スタッフ、船のスタッフなど、とにかくいろんな人が、しかも世界中から集ってきている。名前と仕事の組み合わせが、まるで無限にあるようで、すでに頭はパンク状態。

 

機を見てポノマリョフが全体に向けてメッセージを伝えた。たくさんの彼の言葉から自分が受け取ったのは「このexpeditionは全員でひとつのことを成し遂げることにある」というものだった。アーティストも、科学者も、思想家も皆、時に誰かのプロジェクトを成立させるためのスタッフとなり、全員でこの航海でありプロジェクトを行うというものだ。

 

軽食とカクテルでほどよく満たされ、一休みかな?と思ったら、今度は部屋を移動し、ディナーがはじまった。当然、引き続き交流の時間である。立って話をしていた時より、正面や隣で座った方がより向き合った言葉が交わされる。自分がアーティストだと分かると相手の人から必ず「君の今回のプロジェクトは何?」といった質問がきて、自然とプレゼンテーションがはじまる。相手がドキュメントカメラクルーなら、それならこういった撮影方法があるなど、写真や動画記録のプランニング会議となる。相手が哲学者だと、そのプロジェクトの「時間」が意味するものはいったい何だと考えている?といったコンセプトブラッシュアップ会議となる。夕食の途中に、どこかの国からやっと船に到着した人もいた。

 

夕食が済むと船外にプロジェクションされた「Antarctic Biennale」の動画を桟橋に降りて一時眺め、再びラウンジへ移動。そしてラウンジでは、バングラデシュから来た音楽家SHAMA RAHMANのシタールとノートパソコンと歌を融合した圧巻のパフォーマンスがスタート。しばし、シタールとシャマの声が絶妙にマッチングした音幅のあるライブに皆で酔いしれた。そして、夜は続いていく、、、。

 

もうすでに、このAkademik Sergey Vavilov号の船内は、どこの国でもないどこかになっている。

 

よく喋る人、座っているのが好きな人、外でタバコが吸いたい人、お酒が好きな人、静かにしている人、何かを眺めている人、何かを考えている人、、、みんな本当に個性的だ。いろんな人が自分のいたいように、ここにいるように見える。

 

夜が更けると、風が出てきた。飲みかけの赤ワインのグラスを持ってデッキへと出ると、ウシュアイアの夜景をバックに「Antarctic Biennale」の旗が力強くたなびいていた。

 

今日は3月16日。出港は明日3月17日。

 

移動した時差の影響なのか、この船の状況のせいなのか、こうやって記していないと、なんだか時間の感覚までおかしくなってきている。

 

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ウシュアイアの港。座礁した船。

 

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ウシュアイアの中心にある教会。山を背に海に面した南米南端の街。

 

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15:20にHotel Albatros。世界中から集った人々。

 

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Akademik Sergey Vavilov号。ロシア船籍。

 

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ポノマリョフさんとアンナさんの出迎え。すでにドキュメントチームが記録をはじめている。

 

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スーツケースなどの荷物はクレーンで引き上げる。

 

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部屋のドアに貼られた名前。535号室。

 

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12日間の航海を過ごす部屋。

 

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ラウンジにて立食パーティー交流会の様子。みんな手書きの名札をつけてます。

 

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コミッショナーでアーティストのポノマリョフさんから「全員でこの探検航海、第1回南極ビエンナーレを成功させよう!」と力強いメッセージが送られた。

 

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Akademik Sergey Vavilov号の壁面にプロジェクションされた様子。

 

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バングラデシュから来た音楽家SHAMA RAHMANのシタールとノートパソコンと歌を融合した圧巻のパフォーマンス

 

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シャマを労うポノマリョフ。

 

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この部屋の中がバーラウンジ。

 

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ウシュアイアの夜景をバックに「Antarctic Biennale」の旗が力強くたなびいていた。