くすかき二日目。第三十九代太宰府天満宮宮司退任奉告祭

くすかき二日目。今朝の気温は6度。昨日までに比べて寒くなったが、凛と空気の澄んだ朝。寒い朝もまた春らしい。今日は、6:30から天神広場で〈日々のくすかき〉、10:00から鬼すべ堂で〈くすのこうたき〉、16:00から天神広場にて土日のみ夕方も開催する〈日々のくすかき〉といった1日だった。

 

今朝の6:30が今年の〈くすかき〉の掻きはじめ、いよいよ本格始動となる。この日の朝は毎年緊張する。誰が来てるかな?新しい人は来てるかな?どれくらいの人が今年は集まるのだろう?最悪自分1人でもきっちりやろう。そんな覚悟をして天神広場へ向かう。

 

結果、集まったのは大人11名、子ども8名の合計19名。ここ例年のイメージだとちょっと少ないような感じもするが、内半数は初めての人だったというのがこれまでになかったはじまりとなった。経験者が一年前の記憶を頼りに初参加の人にやり方を伝える。

 

今朝は冷え込んだせいで落葉が少ないこと、去年と今年の落葉の色や大きさの違い、毎日少しずつ葉を広げ白から緑へと色を変えていく若葉のこと、松葉ほうきの使い方、ふるいのかけ方や枝とりのコツ、縞模様の描き方や地面の整え方、朝の境内の清々しさなどなど、それぞれが、それぞれの言葉で〈くすかき〉を伝えている風景があった。

 

〈くすかき〉はその年に集う人と、その年の樟との関係によって、その年だけの〈くすかき〉が形づくられていく。それぞれがそれぞれに影響を与えながら会期最終日までの流れができる。いわば三週間のライブセッションのようなもの。今年は今年、また新しい〈くすかき〉になりそうな兆しを感じた朝だった。

 

そして今日、朝9時から御本殿にて第三十九代太宰府天満宮宮司退任奉告祭が行われた。西高辻信良宮司、この方との出会いがなければ〈くすかき〉の挑戦ははじまらなかった。宮司として最後の祝詞をあげる姿、その所作と声を心身に焼きつけながら、昨年末に直接会った際にお話してくれた2つの話を思い出していた。

 

1つは、春、代替わりすることに触れ、30歳の時に宮司になられ、35年。そのあいだにやった仕事で一番の仕事は、樟の杜の再生だったというお話。

 

もう1つは、この地は、永く変わらずにある場所。今は何かと速いことが良しとされる時代だが、100年、1000年という時間軸を感じられる。それらに気付いて長い時間の視点から物事を考えられる場所であってほしいというお話。

 

〈くすかき〉が西高辻信良宮司の“眼差し”を未来に伝える、ひとつのきっかけになれればと、胸に刻んだ日となった。

 

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枝などを取り除き、葉っぱだけを掻き山に足していきます。

 

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初日は思い出しながらなので、少しちぐはぐしてしまう。

 

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掻き山はまだ小さい。これが三週間後の最終日には今年はどこまで大きくなるのだろう。

 

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西高辻信良宮司、最後の朝拝。

 

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宮司退任奉告祭。御本殿には神主の方がずらりと並ぶのかと思っていたら、半分はご家族の方が並んでいた。家族を大切にしている、もっと言えば、天満宮職員の皆さんを家族のように思っている宮司さんらしい退任式の印象でした。

 

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くすのこうたき。水蒸気蒸留で葉っぱから取り出された樟脳が水滴の表面に白く見えています。

 

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くすのこうたきの昼食風景。外でみんなで食べると美味しい。

 

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下の羽釜を沸かして、銀の筒に砕いて入れた樟葉に水蒸気を送ります。約200度の融点に達すると水蒸気と共に樟脳成分が右側の冷却タンクに移動し、水蒸気は水に、樟脳成分は結晶化し冷却タンクの内壁にくっつきます。

 

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このまま一晩置いておいて明日の朝回収します。寒い一日でしたが、この10年の経験だと、寒い方が樟脳はよくとれます。でも天然樟脳をつくっているプロの方も言っていたのですが「開けてみないとわからない」のです。