〈そらあみ〉1枚目インストール完了

カイコウラ15日目。Shared Lines: Kaikōura Arts Festival開幕の2月16日まで、残すところあと4日となった。いよいよそれぞれのアーティスト作品のインストールも一気に動きはじめた。

 

そんな中、〈そらあみ〉も今日無事に設置された。もちろん、今編んでいるものではなく、過去に日本の宮城県多賀城市で制作されたものだ。Shared Lines(共有する断層)は、その名の通り、ニュージーランドの地震と日本の東日本大震災がきっかけとなってはじまったプロジェクト。

 

なので、今回は震災後に東北で制作した多賀城の〈そらあみ〉をカイコウラのメインストリートの緑色の橋に設置し、今編んでいる新作のカイコウラの〈そらあみ〉は、アートフェスティバル会期中もワークショップを開催し編み進め、最終日の23日に海辺の空に掲げるというプランになっている。

 

自分は今日も引き続き緑の橋のたもとの広場で編み進めつつ、途中途中で〈そらあみ〉のインストールを確認しに行った。

 

インストーラーのシェインとディーンは、以前にニュージーランドのウエリントンで展示した際に〈そらあみ〉のインストールを経験しているというのもあって安心して任せられる。実際に会うのは今回が初めてだったが、会った瞬間に気があうのが分かった。

 

〈そらあみ〉のような、大きな作品はインストーラーなくしては成立しない。日本でいう大工さんや工務店さん、建設会社といったイメージだろうか。でも彼らインストーラーの特徴はアート作品の設置に特化しているというところ(日本にも徐々にインストーラーは増えつつある)。

 

アーティストのイメージを実社会の中で具現化するのに、現実との歪みを埋めなくてはならない。イメージした場所に、どのようにどんな道具を使って設置するのか。最終的な作品の見え方を大きく左右する。故に感覚的ではあるが、気が合う、信頼できるというのが、一緒に仕事をする上でそれぞれの役割は違えども大事なこと。

 

シェインとディーンは炎天下の中でも丁寧な仕事をしてくれた。無事に設置を終えて握手を交わすと「今日はアイスクリーム2個も食べちゃったよ」と笑っていた。

 

もちろん、公共の場所での設置許可をとってくれたリンダや、自分とニュージーランドを繋いでくれた日本の方々、そして一緒に編んだ仲間などなど、本当にたくさんの人の協働によって〈そらあみ〉の風景が成立しているのだとあらためて実感する。

 

国や人種や文化を超え、皆でたどり着きたい風景に〈そらあみ〉があることに心から感謝している。

 

さあ今回現地制作している〈そらあみ-カイコウラ-〉はどんな風景を捉えるのか。共に編んでいる仲間と、これから会う仲間とどんなつながりを生み出すのか、気合いを入れ直して編み進めていこう。

 

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今朝1番目の参加者。

 

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編む気満々なのか、白糸の次は緑糸を選んで、、、笑

 

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コーヒー休憩中のディーン

 

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学校帰りの参加者たち

 

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支柱となる竹を設置中のシェインとディーン

 

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竹を橋に固定するシェイン

 

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そらあみを広げて設置中。

 

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無事に上がりました!背景に見えるのはカイコウラを象徴する鉄橋。

 

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ディーンがロープを丁寧に巻いて仕上げてくれました。

 

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この橋は、海とメインストリートをつなぐ橋。毎日たくさんの人がここを通ります。設置中も通行者と会話が弾みました。


「伝わらない」からはじまる

カイコウラ14日目。今日も引き続き、緑色の橋のたもとの広場で編み進めた。月曜日ということもあって、ちらほらと参加者がいるといった1日だった。これまではアシスタントのような形で関係者や地元の方が一緒に編んでくれていたので、なんだかんだ彼らが参加者と対話してくれていたのだが、今日は自分1人だったので、ちょっと心細かった。英語でのコミュニケーション能力が問われることになったが、網を編んでいるということもあり、まぁ、どうにかなった。

 

そういえば、ここしばらくずっと英語での会話の中にいる。レジデンスにもShared Linesチームですでに8人(ディレクターのリンダ、アシスタントのアンバー、アーティストのオードリーとジェイソン、カメラマンのジョン、インストーラーのシェインとディーン、そして自分)と共同生活をしており、これから会期のはじまりに向けてさらに人は増えていく。名前を覚えるのにもひと苦労だが、しばらくその環境にいると、さすがに耳が慣れてくるようで、対話の中から聞き拾える言葉が増えてくる。元々知らない英単語はどうにもならないが、何を伝えたいのかは、おおよそ分かるようになってきた。(というか、分かるように言ってくれているというのもあるのだが、、、笑)

 

やり方としては、聞き拾えた言葉をヒントにその前後の会話の流れや、話し手の表情や、その時の状況から、想像力をフルに使って、話している内容に近づいていく。

 

そういえば、自分はどこに行っても同じスタイルだ。英語、ロシア語、スペイン語、ポルトガル語などなど。そこには、ちゃんと理解できない申し訳なさと、伝えきれないもどかしさといった、言語コミュニケーションでのストレスはあるのだが、自分は意外とこういったアウェイの状況が嫌いではない。

 

言葉を乗り越えるために、たくさん観察し、可能な限りのやり方で表現し伝えよう理解しようと試みる。この全感覚を使っているような感じが好きなのだ。

 

普段から慣れたコミュニケーション環境にいると、聞こえていたり、見えていても認識していなかったりといったことがよくある。要は、網膜に映っていても鼓膜が響いていても、意識していなかったら、何1つとして届いていないのと同じなのだ。

 

そこには表現の本質がある。伝える側と受取る側、互いの歩み寄りで表現が成立する。ここでの歩み寄りとは想像力のことだ。豊かな表現とは、伝える側と受取る側の豊かな想像力のことであり、私が考える豊かな未来というのは、想像力を持って丁寧に他者や自然と向き合う世界だ。

 

その根っこになるのが、分からない、伝わらないという不自由さである。不自由さがあるから分かりたい、伝えたいという気持ちが生まれ、丁寧に他者と世界と向き合うようになる。慣れてしまうと、いつしか伝わることが当たり前のようになっている。だが、「伝わらない」ことが表現の核であることを忘れてはならない。

 

不自由なコミュニケーション環境が表現を鍛え発達させる。

 

今、2階のリビングでこの日記を書いている。時間は23時。みんなは軽く飲み始めている。パソコンに向かって難しい顔をしていたのか、「Yasu, Still working」と言って、オードリーが白ワインをグラスに注いで持ってきてくれた。何かが伝わった(笑)

 

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親子で糸巻き

 

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イギリスから

 

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言葉を超えて

 

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丁寧に


カイコウラ最古の建物で編む

カイコウラ13日目。今日は日曜日なのでメインストリートでサンデーマーケットが開かれた。それに合わせて、すぐ近くで〈そらあみ〉のワークショップを開催。サンデーマーケットは午前のみだったので、午後は移動して、漁港の近くにあるファイフ・ハウスというところでワークショップを行った。

 

ファイフ・ハウスは、クジラの骨が土台に使われている、カイコウラで最も古い建物。1842年、ロバート・ファイフによってこの場所に捕鯨基地が設置された時に、鯨油を入れる桶職人のために建てられたものなのだそうだ。

 

現在の外観は、かわいらしいピンク色をしていて、鯨油や桶といったイメージにはつながりづらいが、芝生に囲まれ、海が見えて、単純にロケーションとして気持ちがいい場所。ただメインストリートに比べて、人が少ないのが難点か。

 

波音を聞き、ほどよい潮風を浴びながら、編み進めた1日となった。編み進み具合としては今日で編みはじめから1週間経ち、全体の半分まで編めたくらい。まずまず順調といったところ。参加者の傾向としては旅行者が多い感じなので、もう少し地元からの参加者が増えるとよいかな。

 

夕方、はるばるウエリントンから、〈そらあみ〉の設置に使用する7mの竹が8本、ワゴン車の屋根に積まれ到着した。

 

連日の日焼けで鼻の頭の皮がむけはじめた。

 

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今朝、最初にやってきたのはカモメでした。

 

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太陽の動きを確認し、影の方向を考えながらガジボ(テント)を設置します。

 

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スイスからの旅行者やサンデーマーケットに来た地元の方など、順次入れ替わりながらの参加で賑わいました。

 

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網もだいぶ伸びてきました。芝生に写った影がヒラヒラと揺れて美しい。

 

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カイコウラのサンデーマーケットは小さめ。ジャムやビールやハムなどのお店が並んでいる。

 

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ガジボ(テント)の四角い影がくっきり。

 

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ファイフ・ハウスの前で編みました。

 

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ファイフ・ハウスを背に海を見ながら編む。

 

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ウエリントンから竹が到着!

 

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竹の積み下ろし作業


マオリ語の自己紹介「私の山は〇〇山です」

カイコウラ10日目。今日、午前中は老人ホーム内にある教会で、ディレクターのリンダがShared Lines: Kaikōura Arts Festivalのプレゼンをする横で〈そらあみ〉を実施。午後は、昨日のワイタンギ・デーのマオリイベントのオーガナイザーのセリストの職場(マオリコミュニティが集まる町中にある事務局)の店先を借りて〈そらあみ〉を編んだ。

 

そして夕方に1時間ほど、そこでセリストが先生となってマオリ語講座を開いてもらった。もともとこの事務局ではこういった講座が開かれているようで、ちゃんと教材が用意してあった。歌と自己紹介のしかたを習ったのだが、もちろんすぐには覚えられそうにない。

 

しかし、セリストも言っていたのだが、面白いことにマオリ語と日本語は発音が似ている。練習で母音を発音するシーンがあったのだが、そこでは「ア、エ、イ、オ、ウ」。発音のしかたは英語よりもよっぽど日本人には口がすんなりと動く。一緒に授業を受けていたリンダやクリスティンの方が、我々日本人には簡単な「ア、エ、イ、オ、ウ」がなかなか上手いこと言えないのだ。(ちなみにセリストは埼玉県の西川口に2001年から1年ちょっと英語教師として住んでいたことがある)

 

日本語の「はい」がマオリ語の「アイ」だったり、ほかにも似ている言葉があるそうだ。

 

そして面白かったのが自己紹介の内容である。

 

Tena koutou katoaというマオリ語の挨拶をした後、直訳すると以下になる。

 

私の山は〇〇山です。

私の川は〇〇川です。

私の舟は〇〇です。

私の海は〇〇海です。

私のコミュニティは〇〇です。

私の父は〇〇です。

私の母は〇〇です。

私の名前は〇〇です。

 

といった具合の自己紹介の内容なのだ。思わず考えた。自分の山はどの山だろう?自分の川は?舟は?海は?どこのコミュニティに自分は属しているのだろう?日本の今の自分の暮らしでは、すっかりこれらのものから切り離されてしまっていることに気づいた。

 

自分には、自分の山や川や海と言える、親しみのある自分のベースを作った自然環境はあるだろうか?すぐに思い浮かばない自分は、この地球から切り離されているような、浮いている存在のようなイメージが浮かんだ。セリストが心配そうに気遣ってくれたので、自分と縁のある思いつく山や川や海を答えたのだが、それらが富士山だったり、江戸川だったり、太平洋だったり、あちこちバラバラに離れていることにちょっと違和感を感じた。

 

続けて自分のコミュニティ(いわゆる部族名)は、育ててもらった環境やそこにいた人のことを思い返した。そして、父の名前、母の名前を言って、最後に自分の名前を言うと、地域や家族や両親の先(未来)に自分がいることを自然と意識する。

 

日本で言ったら、〇〇県出身で、地元は〇〇です。と言ったところか、さすがに両親の名前まで言うことは、日本ではほぼないが、自己紹介としては、名刺を交換して互いの肩書きを確認するよりも、こっちの方がよっぽど、どこから来た何者なのかがよく分かる。

 

そして自分でそれらを言葉にして伝えることで、自分が永く連なる時と、土地や地域や人とのつながり中で今ここに生きているということを、自分のルーツをあらためて実感することができる。

 

マオリの自己紹介をすると、自分はどこから来て、そしてどこに行こうとしているのか、さらには何を未来につなごうとしているのか、そんなことを意識する。

 

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今日のカイコウラの朝日。

 

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老人ホーム内にある教会で編みました。

 

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ホームのみなさんにリンダがShared Lines: Kaikōura Arts Festivalについてプレゼンしています。

 

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1人のおじいさんと糸巻きをしました。

 

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セリストの職場、マオリコミュニテイ事務局へ移動。この子は〈そらあみ〉のことがすごく気に入ったようでずっと近くで遊んでいました。

 

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ラビットハンターのペーター。編み方を伝えずとも編めた理由は、ウサギを捕まえるのに網を使うからだそうです。

 

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マオリ語講座の様子。

 

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左は歌の歌詞。右は自己紹介。

 

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クライストチャーチから観光に来ていたおばあちゃん。楽しそうに編んでいってくれました。

 

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マオリコミュニティ事務局外観。カッコいい建物です。

 

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セリストが看板を作ってくれました!


ワイタンギ・デーにマラエ(マオリの集会場)で編む

カイコウラ9日目。今日2月6日はワイタンギ・デーというニュージーランドの祝日。いったい何の日かというと、1840年2月6日に北島のワイタンギという地でマオリとイギリスの間で条約が結ばれたのを記念した祝日。いわばニュージーランド建国の日というわけだ。

 

しかしこの条約に問題があって、当時マオリの人たちは英語がわからず、マオリ語に条約は翻訳されたのだが、何とそこに誤訳があって、マオリ側は「すべての土地は自分たちのもの」と捉え、イギリス側は「ニュージーランドはイギリスの植民地」と認識していた。それがきっかけとなって12年にも及ぶイギリスとマオリの戦争となる。

 

そもそも1700年代後半からヨーロッパ人の入植者が増え、マオリの人たちと土地を巡る諍いが起こるようになり、それを沈静化するためイギリス政府がニュージーランド統治に乗り出し、このワイタンギ条約が結ばれたというのに、そこに誤訳があって12年続く戦争のきっかけになるなんて。

 

しかもマオリは敗北し、問題は未解決のまま、何と100年も放置された。その後1975年に条約の再審議がはじまり、一部の土地がマオリに変換され、マオリ語が公用語として認められた。しかし今もくすぶっている問題はあるのだそうだ。

 

話だけ聞くと、当時のおそらくイギリス側から提示されたであろう翻訳にどうしても意図的なものを想像してしまう。マオリの酋長を納得させ条約にサインさせるにはこの方法しかなかったのだろう。しかし今から1000年前にマオリの人たちはポリネシアからカヌーで渡ってきて、ヨーロッパ人が入ってくる前の約700年もの間ずっとこの地で暮らしてきたのだから、何とも理不尽な話に思えてしまう。

 

とはいえ、現代のニュージーランド国民のほとんどは、夏の国民の祝日を楽しみにしている。ここカイコウラでは、先日〈そらあみ〉の糸の染色を行ったマラエ(マオリの集会場)が開かれ、マオリの人々がイギリスの人たちを受け入れるのを模したような式典が開かれた。おそらく歴史的なものを振り返りつつ、外来者をマラエに招き皆で過ごす日としているのだろう。

 

その会をオーガナイズしているのが、何とカイコウラ初日から4日間宿泊させてもらったセリスト(西川口に英語教師として1年住んでいた経験がある)だったからビックリ!ということで、今日は午前中セリストの手伝いをして、午後からマラエの式典に参加させてもらい、その流れでそのままマラエで〈そらあみ〉をさせてもらえることになった。

 

式典では、マラエの中でも最も重要なファレヌイ(内側に部族の歴史や伝説の彫刻が施された集会所で内部撮影禁止)で来訪者を正式に迎え入れる儀式「ポウフィリ」に深い感動を覚えた。

 

まずは建物の外の敷地への入口で、マオリの最年長女性が来訪者へ呼びかけ(入場を許可する合図)。これに来訪者の女性が応答する。次に来訪者は女性グループ、男性グループの順にゆっくりと静かに敷地内を歩き、途中、足を止め亡くなった先祖へ黙祷を捧げファレヌイの中に入る。

 

マオリの人たち50人ほどと来訪者50人ほどが向き合って座り、それぞれの年長者がスピーチをし、スピーチの後に互いに歌が送られる。この歌の合唱が、その送り合いがとんでもなく感動する。歌を送り、歌を受け取る。そしてまたお返しで歌を送り、受け取ってもらう。しかも自分も含め、皆の声が重なっている。ファレヌイの空間内に何とも言葉にできない一体感が生まれた。緊張の出会いから、互いを受け入れ混ざっていく感覚。歌を受け、自分も歌を歌うことで、どこか魂が裸になってマオリの皆さんに、先祖も含めたその歴史に自分の魂を晒しているような感覚になった。力強く、でもどこか悲しく優しい歌声に心が震え、目頭が思わず熱くなった。歌にはこんな力と役割があるのか。そう思った。

 

儀式の最後にはホンギという、鼻と鼻を合わせる挨拶を交わす。近すぎてちょっと恥ずかしいが、ここまでできたら仲間の証といった感じで、受け入れてもらった感覚が強くなる。そして、その後はマオリの人たちが用意してくれた食べ物を全員で食べて、音楽やカラオケといった時間を過ごす。その時間の中で一部スペースを借りて〈そらあみ〉をやらせてもらった。大人から若者、子供まで、みんな興味を持って参加してくれ、良い雰囲気で編むことができた。そこには肌の白い人、褐色の人、黄色の人が混ざって編んでいる風景があった。

 

ワイタンギ条約が結ばれた1840年2月6日から179年後の今日2019年2月6日は、〈そらあみ〉がマオリデビューをした記念日となった。ニュージーランドの人は祝日で祝ってくれるし、忘れなそうだし、〈そらあみ〉的には最高のマオリデビューを飾った(笑)

 

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今日のカイコウラの朝日。南極からの冷たい南風が吹き、日本で着て来たダウンを着るほどに、かなり寒い1日となった。

 

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ワイタンギ条約の当時の様子を描いた絵。

 

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ファレヌイに初めて入ってマオリからの歓迎を受けました。写真撮影禁止のため、中の様子はお見せできませんが、とにかくポウフィリの歌に感動しました。

 

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みんなで編んでいます。奥の旗は左がマオリの旗。右がワイタンギ条約が結ばれた当初のニュージーランドの旗。

 

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子供たちは網に絡まって遊んでいました。笑。

 

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マオリの女性たち。編んでいる姿がなんとも様になります。

 

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集中して、赤い一段を編みました!

 

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最後まで編んでいってくれました。

 

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今日でまた〈そらあみ〉がのびました。

 

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赤いひげ、なのだそうです。笑

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〈そらあみ〉がマオリコミュニティにデビューした記念日になりました。


ニュージーランドの街中で漁網を編んでみる

カイコウラ8日目。今日から、外に向かって場を開いて〈そらあみ〉を編みはじめた。いわば、ワークショップ初日。手に入れたガジボ(日よけ)とマラエ(マオリの集会場)で染めた糸を持って、カイコウラのメインストリートにある緑の橋のたもとの広場へ。

 

天気は快晴、というか日差しが強すぎる。日陰から出ると肌がジリジリと焼けているのがわかる。ガジボで上手に日陰をつくりながら編みはじめた。編んでいると自ずと周りの環境に身体感覚の焦点が合いはじめる。すぐ横を流れる川のせせらぎが聞こえ、目をやるとカモが懸命に頭を水中に入れて何かを探している。水面上に突き出たお尻が可愛らしい。水中には体長50センチほどのシャケかマスのような魚が泳いでいる姿が見える。その川に架かった緑の橋を渡った先に広がる海から心地よいそよ風が吹いてくる。興味があるのか、海鳥が近くにやってきて〈そらあみ〉のロープを止まり木のようにしてバランスをとっている。遊んでいるのだろうか。なんとも気持ちの良い場所だ。すっかり気に入った。

 

そして、あらためて気づいたのは、ここカイコウラは豊かな海の自然を楽しみにして観光客が来る町ということ。編んでいると「何してるの〜?」といった感じで話しかけてくる。この感じの人はどうやら観光客が多い。ワークショップをしている周りは階段状になっているのだが、仕事の休憩時間といった感じで、しばらくそこに座ってこっちを眺めている人の姿もあった、あれがおそらく地元の人だろう。実はまだ何をしているか説明する看板的なものが用意できていないので、今日参加してくれた旅行中のドイツ人家族からは「私こういうの大好きだから、みんなにわかるように看板を出した方がいい」と言われた。これはすぐに対応しよう。

 

さて、そんなこんなで編み進めていると、一人の観光客女性が近づいてきて、「やってもいい?」とかなり前のめりな感で、その勢いに押されながらも、編み方を簡単に説明すると、次の瞬間すいすいと編みはじめた。え?!なにこの人?

 

話を聞くと、ベトナムから来てニュージーランドの人と結婚していて、今は旅行中。子供の頃、ベトナムで漁師のお祖父さんに教えてもらって、よく漁網を編んでいたのだそうだ。初日からこんな出会いがあるなんて!ぜひ毎日編みに来て欲しかったが、ツアー旅行とのことで、泣く泣く諦めた。

 

〈そらあみ〉をはじめるきっかけになった三宅島の漁師さんが言っていた言葉「網は人を寄せる」。その言葉を思い出した。編んでいると、手伝いに来たり、話しかけて来たり、人が寄ってくるという意味だ。

 

そして、編み方は世界中同じだということを実感できるうれしい初日となった。

 

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今日のカイコウラの朝日。

 

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朝の散歩をして土地勘をつける。

 

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メインストリートの緑橋すぐ横の広場にて場づくり。

 

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クリスティンは編み方を一度伝えると、すぐに覚えてしまった。素晴らしい。

 

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子供の頃、お祖父さんに教えてもらって編んでいたというベトナムの人。

 

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こちらはドイツ人家族で参加。

 

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娘さんもお母さんのやっているのを横でずっと観察していたので覚えよく編んでいました。

 

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カイコウラ在住のスージー。

 

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すぐ横に川が流れています。この川を渡るとすぐ海岸。


Gazeboの足

カイコウラ6日目。今日はインストーラーのシェインと作品設置の現場へ移動し詳細を詰め、その後、リサイクルセンターへ行き、何か使えそうなものがないか物色。15時頃に家に戻って、ロープに編みはじめのきっかけづくりを日没の21時頃まで行い、無事に準備が完了した。

 

〈そらあみ〉の漁網を編むワークショップをどこでやろうか?とディレクターのリンダといろいろとロケハンする中、コミュニティに入っていってやってみるのもよいし、海が見える場所でやってみてもいいね。でもメインストリートはいろんな人が行き交うし、1つの拠点にしようということになった。

 

すると、場所もちょうど良い所が見つかった。メインストリート沿いに流れる川に架かった橋のたもとが、芝生を中心に階段状の広場になっていて、公衆トイレも近い。よし、ここでやろう。

 

だが、この強烈な日差しを避けるものが必要だ。リンダにテントかタープのようなものが欲しいと伝えると、

「Gazebo」と言う。ガジボ?何それ?聞くと、どうやら東屋みたいなものをそう呼ぶらしい。伝えたいことは伝わっていたということで一安心。用意してもらえるということになった。

 

そんな中、リサイクルセンターでインストーラーのシェインが叫ぶ、指差した先には、なぜかその「Gazebo」の足が!屋根の布部分は無いにせよ、〈そらあみ〉の何かしらの役には立つだろうということで、激安で購入し持ち帰った。渡りに船というか、なんというか、すごいタイミングで必要なものが見つかるものだなと、思わず皆で笑ってしまった。まずは想像して思うところから全てははじまる!「Gazebo!(笑)」

 

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昨日引っ越して来た新しい家から見える、今日のカイコウラの朝日。

 

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インストーラーのシェインに作業スペースを紹介しつつ、作るものの打合せ中。

 

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ここも〈そらあみ〉設置候補地。

 

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リサイクルセンター。ここは大型の家具などで、別棟には小物から服まで色々あった。時間があればゆっくり楽しめそうな場所。

 

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材木は色々と役に立ちそうなものがたくさんあった。

 

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シェインが見つけたGazeboの足!まさに渡に船。すごいタイミングで見つかるものである。笑。

 

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記念すべき最初の編みはじめ1つ。

 

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これでひとまず準備完了


海の見える丘の上の家に引越し

カイコウラ5日目。今日は、朝一番で荷物をパッキングして、4日間お世話になったリンダの友人の家を出発。Shared Lines: Kaikōura Arts Festivalに参加するアーティストの一人でカイコウラ在住のクリスティンと、その旦那さんで大工のエイドリアンが車で迎えに来てくれ、荷物を積み込み移動。

 

午前中は家を建てるビルダーのフセインと、その奥さんの日本人のノリコさんの家を訪ねて打合せ。昼はエイドリアン、クリスティン夫妻のお家でご馳走になり、少し時間ができたので染色した糸を玉にする作業を行った。

 

15時すぎに我々の新しい家へ移動。この家でアートフェスティバル開催日の2月16日まで約2週間滞在する。海の見える丘の上にある家で、街中までは離れているが、とても気に入った。

 

17時頃、インストーラーのシェインと、今回のアートフェスティバルのドキュメントカメラマンのジョンがウエリントンから作品や道具などギッシリ積み込んだワゴン車での長旅を終え合流。彼らに作品設置場所やワークショップ開催予定の場所含め町を案内して周った。

 

20時頃、インストーラのシェインの友人のサーファーのデイヴの家に移動中に買い込んだ食材を持ち込み夕食→帰宅。といった今日も長い1日だった。日没が21時頃なので、明るい時間が長いからだと思うが、日中(日没までの時間)をフルで使うといろいろできるが、その分体力がいる。ちなみに朝は6時頃には明るい。

 

帰宅後はベッドに沈むように眠る。

 

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ビルダーのフセインが自分で建てた家。海が見えてとても素敵な家だった。

 

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フセインの奥さんのノリコさんがやっているコーヒー豆のロースト屋さん。カイコウラ1軒のみのコーヒーロースト屋さんです。

 

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エイドリアンとクリスティンの家は山の方にあって果実や野菜が豊富。

 

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ここもまた本当に素敵な家で、自分が知る幸せな暮らしのイメージにほど近い家がカイコウラには多い。

 

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エイドリアンとクリスティンが毎年収穫した果実のビン詰め。

 

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クリスティンが作ってくれた昼ごはん。ニュージーランドに来て今のところ一番美味しかったです。

 

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クリスティンと糸巻き。クリスティンは羊の糸紡ぎもしていたのだとか。やってみたい。

 

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綛糸から糸玉へ。

 

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エイドリアンと糸巻き。エイドリアンは大工さんです。

 

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エイドリアンも糸巻きは小さい頃にお母さんの手伝いでもしたし、懐かしいとのことでした。この所作も世界共通。

 

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海の見える丘の上の家に引越し。これから2/15までここで暮らします。

 

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ウエリントンから車で作品や道具を積んで到着!

 

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頼んでおいたロープも到着!

 

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網針に糸を仕込みます。

 

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ディレクターのリンダと、インストーラーのシェイと、カメラマンのジョン。到着して一息ついたらすぐに打合せがはじまります。

 

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新しい家は、2階のリビングから海が見えます!そして双眼鏡を覗くとオットセイが観察できます!

 

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ワークショップ会場下見中にモゾモゾと動くものを発見!なんだこれ?!

 

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人生初のHedgehog!そうハリネズミです!シェインの話では幸運の兆しなのだとか!調子に乗ってイジっていたら当然ハリが刺さりました。はい、もちろんイタイです。

 

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夜、シェイン の友人のサーファーのデイブの家。海のすぐ側で、この家はまたクールな今っぽい感じというか。今日は偶然にも結果的に4軒の家めぐりをした日になった。どの家もいい家だったなぁ。


ニュージーランドの風

カイコウラ4日目。今日は昨日染色した糸が乾くのを待ちつつ、打合せとパソコン作業を行なった。夕方に天気が急変し、空に雲がかかり辺りが薄暗くなり、冷たい強い風が吹いてきたと思ったら、今度は雨が降ってきた。

 

異変に気付いたのが早かったのもあり、急いで干していた糸を取り込むことができ、事なきを得たのだが、いったいこれは?

 

リンダに聞いてみると、この風はニュージーランドの南島(ニュージーランドは北島と南島の2つの島からなる)の常識なのだという。

 

南島に吹く風は基本的に2種類で、北西から吹く風か、南から吹く風かどちらか。北西風は2,000㎞離れたオーストラリアから吹く風で、この風が吹くと暑くなる。南風は2,600㎞離れた南極からの風で、この風は冷たい。

 

この2つの風が基本的には交互に吹いているのだそうだが、それが突然変わる。今日の夕方がそのタイミングだったということのようだ。それまで半袖短パンで過ごしていたのだが、思わず長袖を纏った。

 

オーストラリアの暑さと南極の寒さ、どちらもイメージしやすい風である。しかしながら、届く風からオーストラリアと南極の方角を感じ、自分が今どこにいるかを実感できるのは面白い感覚である。そして、南極までの距離が意外と近いのにも少し驚いた。日本の長さが北海道から沖縄までで約3,000㎞なのだから、それくらいの距離感で南極があるということだ。

 

しかし現地の人はそれでも半袖が多いように見える。いくら夏とはいえ南極の風は自分には冷たい。こっちのみんなは寒くないのだろうか?皮膚が厚いのか、基礎体温が高いのか、何か根本的な体の作りに差があるような気がする。もしくは単純に慣れ?環境への適応なのか、、、。

 

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昨日、マラエ(マオリの集会場)で染色した糸を宿泊先の庭で干しています。ニュージーランドの洗濯物干しはみんなこの形。

 

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近くのカフェのレジ風景。飲み物を買うとスタンプを貯められるのだが、日本みたいに客がカードを持ち歩くのではなくレジに保管してもらえる。こっちの方が自分には合っている。

 

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ニュージーランド人のソウルフードだというので食べて見ましたフィッシュ&チップス。全然美味しく食べたのですが、ちょっと胃もたれする感じ。


マオリの集会所「マラエ」で染色

カイコウラ3日目。朝、カイコウラにあるマオリコミュニティに挨拶に行った。マラエはマオリの集会場のことで、ニュージーランド各地にあるマオリのコミュニティはマラエを中心に形成されている。

 

マラエは特定の部族、あるいは家族や親戚に属する施設で、フェンスに囲まれた敷地内に彫刻の施された建物が立っている。マオリの人々はマラエをトゥランガワエワエ(自分たちが立つ場所、属する場所)として認識している。マラエでは集会、祝い事、葬儀、教育、その他の重要な部族の行事が行われる。

 

マラエには彫刻を施された集会所(テ・ファレヌイ)、ダイニングホールとキッチン、トイレ・シャワー棟があり、集会所の前には開けたスペース(マラエ・アテア)がある。

 

マラエの中で最も重要な建物は彫刻を施された場所、テ・ファレヌイ。その構造は人間の体を模しており、通常はその部族の祖先の一人を表している。多くのテ・ファレヌイにはその部族のファカババ(家系)や歴史、伝説を表す複雑な彫刻が施されている。亡くなった人々の遺影が飾られていることもよくあるそうだ。

 

テ・ファレヌイの中に入る時は、入る前に靴を脱ぐこと、中で飲食をしないこと、写真を撮るときは必ず許可を取ることといったルールがある。彼らが普段からそこで暮らしているわけではないが、大切な行事の時には寝泊まりする。

 

カイコウラのマラエは海の見える緑に囲まれた丘の上にあり、眺めは最高に美しく、吹き上げてくる海風がエネルギーをくれるようで、なんとも気持ちの良い場所である。

 

ここがアートフェスティバル開催中(2/16-23)に関係者の宿泊場所になるということもあり、ディレクターのリンダと挨拶に行った。シンプルな家の形をした建物に彫刻の施された集会所のイメージは以前から持っていたのだが、キッチンがあったり宿泊施設の機能が併設され、子供たちが遊んでいたりコミュニティスペースとして普段から機能しているのが意外だった。日本の公民館に寺や神社や墓が合体したようなイメージともいおうか。でもよく考えると、日本の寺や神社はもともとそういった場所で今は色々と専門の分野ごとに細分化されてしまっただけなのかもしれない。

 

〈そらあみ〉の糸を染色するのに広いキッチンがあると便利で、このマラエのキッチンを借りることができるかどうか、リンダが交渉してくれ、マラエの事務所にいた担当者は快諾してくれた。あとはキッチンが空いている日程を聞くだけだったのだが、なんとこの後2月中はずっと埋まっていて今日しか空いてないというではないか!ということで急ではあったが、他にあてもないので、今日の午後から染色作業をすることになった。

準備等があったので、15時からスタートして19時まで約4時間作業して染色を無事に終えることができた。

 

急な展開ではあったが、マラエというマオリコミュニティの中心地で染色ができたのは、糸を編むことでコミュニケーションしながら人と人のつながりを広げていく〈そらあみ〉にとって意義深く、良い兆しである。

 

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マラエ(マオリの集会場)の敷地に入るためのゲート。

 

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大きな木彫の像が立っていた。

 

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マラエの中で最も重要な集会所テ・ファレヌイ。人間の体をイメージしていて両手を広げた中に人が入っていくような格好になっている。

 

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気持ちの良い海風が届く丘の上にある。場所に良い空気が流れていてエネルギーを感じる地。

 

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マラエのキッチンは意外にも超最新といった設備。〈そらあみ〉で使う糸のノリを煮て落としています。

 

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広くて使いやすいキッチンでした。

 

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エイドリアンとリンダが染色を手伝ってくれています。

 

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染色完了!

 

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カイコウラでのリサーチを通じて見つけた土地の色。良い感じに染まりました。

 

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この5色で編みます。